迷宮の日々
今回はネタ回。
現在地はアンデットの蔓延る死の迷宮が97層の階段広間。そんな危険地帯で俺たちは、
普通にシャワー浴びてる。というか浴槽も作った。
「どうだ、気持ちいいか?」
「気持ちいいのは認めるが、こんなことしていてもいいのか?アイリスの命も刻一刻と危うくなっているし、そもそもどれだけ攻略に時間がかかるかもわからないぞ」
「こんなクソブラック攻略してんだ。福利厚生くらいはする。それに銃弾とかの消耗が激しくてな。どちらにしろ時間はいる。だからそのついでだ、ついで」
「しかし、このあいえーちとやらは本当に火が出てなくて電熱線も見えないのに暖まるんだな」
そう、今いるのは迷宮の階段の広間。アンデットが近づいていないタイミングを狙って定期的に窓開けしているが火など焚こうものなら酸欠必至。
そこで紹介このIHクッキングコンロ。プラスチック板の下にコイルを入れ、そこに電流を流す。そしたら中学校で習ったように電流による力が発生。それに底の厚い金属鍋を置けば電流の力を受けて金属鍋が発熱し、火などなくても湯沸かしできる。
ゆくゆくはティ○ァールの電気ケトル作りたい。
「それで、アイリスの治療はどうするのかのう?80層は過ぎたのだが・・・・・・」
「90層以降の魔草なんてデータゼロだったが、これはなかなか使えそうだ」
80層にあるという薬草の群生地帯、通称「楽園」。本来ならここで薬草を手に入れ、加工する予定だったのだが、とっくに過ぎてしまった。
「そもそも薬草で治せるのか?」
「可能性はある。今のポーションの作り方は煎じて水に溶かすだけだ。だけどアルコールに溶かした方が吸収しやすい。その点で俺の作る薬は性能がいい。他にも油とか、・・・・・」
「待て待て待て、もうその辺りでいい。いいから」
なんか強制的に止められた。ちゃんと説明しようとしたのに。まぁ本人たちがいいって言ってるならいいか。科学は誰かに強制させられる物ではない。
「風呂、上がったぞ」
「おうおう、いいから取り敢えず服着ろ服。裸で出んな。ここに男がいるんだぞ。福利厚生してるのに風邪引くとか洒落になんねぇよ」
ティアが普通に裸で出てくる。今更だがよく見たら腹筋が六つに割れている。女って筋肉付き難いはず。すげぇ。と言うかこの世界の女って強いからな。前世の経験はアテにならない。
「子供だろう。そこまで気にするか?」
「てめぇ、俺が中身おっさんだったらどうする気だ?」
「そう言えば、所々、所作が人間の30歳に近い物を感じるのう」
「えー、ちょっと待って止めて。オジサン傷付くよ。え、は?ホントに?マジで?気にしてるからホントに止めてくださいお願いします」
そうか、三十代に見えるのかと多大なる絶望とショックを受けながら流れるような洗練された綺麗な動作で土下座する。それも無意識に。
まだ24歳なのに小学生にオジサンと呼ばれたとき以来のショックだ。その点、受験シーズンの中学生はよかった。京都の日本でも一二を争うレベルの大学行ってると言えば無条件で尊敬どころか崇拝された。
「取り敢えず、俺も風呂入ってくるわ」
「主も主で、女性の前で普通に脱いでいるがのう?」
「あー、最近は牛頭と入ってたけど、昔はアイリスに世話されてたからな。忘れてた」
今更だけど女の体に別になんも感じないわ。いや、男が好きな訳ではないが。普通に恋するぞ。俺も。一人だけ、前世で好きになった人がいた。