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剣と魔法と科学の世界  作者: インドア猫
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グレア

起きたらもう見慣れた天井。横に何か温もりを感じるというか暑い。暑苦しい。見てみると扇角、ティア、牛頭だった。


「お目覚めになられましたか。私は神獣様方の使いでございます。まず謝礼を。今回は大変ご迷惑をお掛けしました。お詫びとして金銀財宝の数々。そして何か願いを一つ。なお、死者、もしくは死の運命が定まった者の蘇生は出来かねます。予めご了承を」


どうやら最悪の状況は全く変わっていないらしい。クソッ。嫌味が口から溢れる。


「こないだも思ったが、天下の神獣様も存外無能なんだな。大して俺たち人間と変わらねぇじゃねぇか」


「できればこれ以上主を侮辱する言葉はやめて頂きたい」


「取り敢えず人工呼吸機を。と言えたらどれだけいいことか。どうせ無理だよな。もうなんでもいいや」


本当、なんでもいい。できれば延命措置に科学アイテム総当たりで対処したかったが、今だと作れても点滴か?余命あと二週間はもつか?現状がわからないからな。もったとしてもそれまでだ。


「人工呼吸機が何かは存じ上げませんが、語感的に呼吸を無理矢理させる道具なら恐らく神獣様の中でも物作りが得意な方々でしたら何とかなるかもしれません。急ぎのようですので今日中に。ではまた」


さてとこれからどうしたらいいのだろう。まぁ取り敢えず、


「おきやがれ!」


寝てる奴らを叩き起こす。牛頭は座ったままベッドにもたれかかって寝てるからまだ納得できるが、他の二人。完全にベッドに入り込んでやがる。


最近自分でもどうでも良くなってるけど俺今年で31だからな。いやこいつらはそんな事知らないから仕方ないか?


「フンガッ」(牛頭)

「グワッ」(ティア)

「あべしっ」(扇角)


おい扇角、何でそのネタ知ってんだ。某格闘漫画か!お前まだ死んでないぞ。そういや前世で親父がよく集めてたわ。賭博も酒もタバコもしなかったけどその格闘漫画と某スーパー野菜人な漫画は集めてたな。


「おぉ、やっとおきた。ヒグ、丸一日寝てたから心配したぞ」


「それよりアイリスは」


全員が苦々しい顔をする。一応生きてはいるが寝たきりでどんどん弱って行ってる状況らしい。このままでは後一週間ももたないと。


「神獣には人工呼吸器を頼んだ。取り敢えず点滴作るぞ」


点滴は水にブドウ糖を5〜10%入れてあとナトリウムとかの電解質を入れる。ブドウ糖に関しては上記以上に入れると血管炎や血管痛が起こる可能性がある。


まぁその常識がエルフにも通じたら、だがな。食べ物とかもそんなに変わらないから大丈夫だと思いたい。

正確な事は言えない。今は一縷の望みに託すしかないのだ。


だがこれも脱水とマシ程度のカロリー摂取に過ぎないしやり過ぎると無用な延命になって患者を苦しめるかも知れない。これに対してティアからは楽にしてやるのも一つの手段ではと言われた。


このまま苦しませて死なすくらいなら其方の方がマシかも知れないのも事実だ。この延命もアイリスを失いたくないという超個人的事情だ。


「アイリスは俺の部下だ。部下の命は上司の物。なら上司が責任持って助けてやるべきだと思う。完全なる自論、しかも単純に失いたくないとか個人的な話だがな。それでも、協力してほしい。頼む」


「はぁ…仕方ないのう。アイリスよ、お前がいなくなれば主へのツッコミ要員が減るからの。早く元気になるんだぞ」

「オレはどこまででもついていく所存です」


「・・・あぁ、全く。仕方ない主だ。分かった。一人では何もできないな」

「だからこそ群れて文明を作るのが人族のやり方だ」


針自体はもう完成に近い段階まで行っている。点滴を組み立てて中心静脈に留置する。針は細工屋に無理を言わせて作らせる。


幸い、商業施設の密集する東通りと今回襲撃された西通りには距離に差があり、そこまで被害を被っていなかった。


『それに関しては申し訳ないなヒグよ。そこで一つ、提案なのだが、我と契約せぬか?』


そもそもできるのか?という疑問が湧く。身体は死んでるわけだしな。


『身体の一部を互いに喰らうという点なら我は満たしておる。腕を喰おうとして口の中に銃弾を叩き込まれたことがあっただろう。その時にな』


じゃあ俺があとお前のなんか喰えばいいのか。なるほどなるほど。


『ただし、爪には毒があるからな。喰えばあの妖精の毒耐性があろうと死ぬぞ』


怖っ、毒耐性持ってても即死かよ。どんだけ強い毒持ってんだ。あんだけ物理的に強かったら充分だろ。


『一応戦いの際には何が何でも爪による攻撃は抑えていたからな。あれは本当にまずい』


取り敢えず鱗の欠片を飲み込む。これであとは契約を結ぶだけだが、魂だけでもできるのか?肉体がないとダメ的な奴はないのか?


『何、ゴーストの類とでも契約できるのだ。問題あるまい』


そういう訳で契約した。


「ううっ!あぁ、背中がッッ!」

「あああああ!!!!!!!」


「ティア、扇角!牛頭、今すぐこいつらをベッドに運べ!」

「はっ」


おい、どういう事だこれは。何で契約した途端苦しんでるんだ。何か知ってるなら説明しろ、聞いてんのかヒュドラ!


『恐らく進化による反動だろうな。元々我を打倒した時点で種としての進化の条件を九割九分近く満たしていたのだろう。そこに我とヒグの契約により、あやつらとも繋がりができ、我の加護が間接的に働き、こうなったようだ』


害は無いんだな?


『あぁ、扇角は単純上位種たるアークユニコーンに、ティアに関しては種として進化し、上位種妖精の仲間入りを果たしている。分類としてはスプリガンだな。それによって引き裂かれた羽も元に、いや、それ以上のものになろうとしている。背中の痛みはその為だろうな』


他には何かあるか?どんな些細な情報でもいい。あるなら教えろ。


『これは面白い。我の干渉によって多少の火属性適性が出ておる。あと、これは我のことだが、今回の契約でヒュドラゴーストへとなったようだ。タイプとしては憑依系だな。恐らくヒグの異質な魂の影響であろうな。お主はアンデットとの相性が異常に良い』


何か死体との相性がいいと言われても褒められるのかそうじゃないのか、どっちかわからないような微妙な評価だな。


『申し遅れたが、我が名はグレアだ。我が与える加護は火属性上昇、火力調節だ。火属性上昇に関してはそのものが起こした普通の火も強くなったりつきやすかったりするな。宜しく頼む。先の失態はこの先、我が叡智を持って取り返そう』


まぁこっちこそ、よろしくな。

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