決着
総合ポイント50突破ありがとうございます。
「取り敢えずそこを接合だ。頼んだ。少し休む。子供の身体だからな。はなから無理があったんだよ。まぁその無理を通さないといけなかったんだが」
「今はゆっくり休め。なんなら、私の膝枕でも使うかな?」
「遠慮しとく」
そう軽く告げて寝転がる。石の痛みを多少感じるが、このまま寝てしまわないようにするのには丁度いい痛みだ。
結界の外では今でも怪獣大決戦を元気に繰り広げている。今度録画機でも作るか。ならまずは普通のカメラからだな。
なんて思いながらこの光景を眼に焼き付ける。きっと中々見られるものではないだろう。そう考えたらレアな体験かもしれないな。
何故かは分からないが、不思議と神獣が負ける事を考えなかった。可能性としては幼い頃から絵本やら何やらで神獣の強さを植え付けられている可能性だな。あれ?洗脳と変わらなくないか?
忘れよう。
雷光と漆黒のブレスが邪神の欠片を圧倒する。更に、魔法だけでなく、身体能力的にも神獣は強い。白虎の爪や、暗黒竜の尻尾。地面に谷やクレーターをどんどん作っている。
「生物って、なんなんだろうな」
あんな規格外すぎる生物を見てしまうと、なんとも言い難い虚無感に襲われる。俺は弱者でしかないということを突きつけられている気分だ。いやまぁ、実際そうなのだが。
決戦は呆気なく終わった。というか封印せずに最初から殺しておけばよかったのでは?とまぁ突っ込みたいんだが。
バサッ、バサッ、ドサッ
暗黒竜が羽音を立てながら降り立ち、白虎が音を立てずに近寄ってくる。近くで見たらデカイ。というか白虎、これだけデカイのに何で音たてねぇんだか。恐るべし肉球の力と言ったところかな。
『人の子よ。今回は我々の失態だ。詫びよう』
「邪神の欠片、か。どうも人間とかの立ち入りを禁止してたらしいな」
これはヒュドラや親父からも聞いた話だ。危険故に近づくな。近づいた者のは殺すと。
『すまなかったな。彼奴はもう歳だと言うのに後任に相応しい者を見つけられずに頼りきった。本来はとうに隠居しているはずなのにな。有能が故についつい頼って・・・これも言い訳か』
「あー、謝罪とかはクソほどどうでもいいんだよ。問題はこれをどうしてくれるか、責任はとってくれるのかって言う話だ。見ろ、街は滅茶苦茶、夥しい数の死体。どうしてくれんだ。なぁ!!!!!!」
大声を張り上げる。そうでもしないと怒りが治らないのだ。アイリスが死にかけてティアが眼球一個失った事の理由がただの職務怠慢?失態だ?そんな陳腐で簡単な言葉で片付けられてたまるか。
「俺や、俺の他にも家族を、親戚を大切な友人を亡くして、自分は生き残って、それで悲しんで、辛い思いをしている人が何人いるっているんだ!!!!!!それを『詫びよう』?『すまなかったな』?そんな謝ってるかどうかすら分からない言葉で済まされてたまるか!!!武力を背景に近づくなと言っておきながら自分たちでも管理できませんでしたテヘペロか。人間が管理してたならまだ分かる。だが管理すると自分たちから名乗り出ておきながらよくそんな事が言えるな!そこんとこどうなんだよ、無能どもがッ!!!!!」
『貴様、言わしておけばつけ上がりおって』
『落ち着け白虎よ。確かに此奴の言う通りだ。全面的に我々が悪い。責任もとって然るべきの事だ。だが済まない、死者、もしくはこれから確実に死にゆくものを蘇させるのは禁忌、我らとて不可能だ。ここは壊れたもの、先に言ったもの以外の者を全てなおす事で勘弁してくれないか』
暗黒竜がそう言った瞬間、時間が巻き戻る様に建造物が、地面が、元に戻る。まるで何もなかった様だ。
だが、ティアの眼球とアイリスは治らなかった。ティアの眼球は治る事は無いと本人が言っていたから覚悟していたが、アイリスまで治らないとは思っていなかった。
「何でアイリスは治らないんだ」
『その者は、確実に死ぬ運命だからだ。どんな治療を施してももって一週間だ。確実に死ぬ者を治療するのは自然の摂理に反する禁則事項だ』
身体に重圧がのしかかった。世界が灰色に染まって、何もかもどうでも良くなった。一言、
「何でだよ」
そう漏らして、地に倒れ伏せた。




