夢
「しかし、こうなるまで寝ないとは、主の体が心配だ。もう少し自分で体調管理出来ぬものかのう?」
「無理でしょうね。昨日も狂戦士かと思うくらいの勢いで設計図に文字を書いたり、図を描いたりしては捨ててを繰り返していましたから。完成への執念はどこから来ているのでしょうか」
「これはまた、難儀な主をもったものだな、私達は。まぁそれだけ支えがいがあると言うものだ。精一杯忠誠を尽くせばよい。牛頭はどう思う?」
「俺は、命を拾っていただき、十二分な生活をさせていただいている恩が有りますので、どこまででもついていこうかと思っています」
「私の場合、主はヒグ様ではなくてレオン様なのですから、いつか離れる時が来るはずです。だから早く真人間になって欲しいのですがね。今のままではハラハラして見ていられません」
「主は最悪アイリスがいなくなるとなると金を使ってアイリスを自分で雇いそうだがのう。主はあれでなかなかアイリスを信用しておるぞ」
「確かに、それくらいのことなら無茶ではなく平然としてやってのけそうだ。段々とヒグ色に染められているのがこわいな」
アイリス、扇角、牛頭の三人は口を揃えた。
「「「確かに」」」
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夢を見た。疲れているから深く眠ると思っていたが、夢を見た。レム睡眠は眠りが浅く、脳が動いている証拠だ。
前世の夢だった。小学四年の何気ない日常。全ては過去の話だ。今は家族も、アイツもいない。
アイツは一年後に死ぬのに。どうして気付いてやれなかった。このときにはもう、始まっていたのに。どうして最後まで気付かなかった。早く気付いていれば、アイツは死ななくてすんだのに。
全ては後の祭りだった。後悔だけが残った。自分を責めて責めて責めて責めて責めて責めて責めて責めて責めて責めて責めて責めて責めて責めて責めて責めて責めて責めて責めて責めて責めた。
お前も生まれ変わっていたら、もう一度、もう一度だけ、会えますか?エミリー。
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「あっ、起きたのう。凄いうなされておったが大丈夫かの?何か悪い夢でも見たのかの?」
「どうだろうな。昔の夢だ。悲しいが、あの日常を見れて良かった気もするな」
扇角は雰囲気からあまり話を掘り起こさない方がいいと察した。きっと、辛い過去の話だと思った。悲しい夢を見たときの母親が、同じような顔をしていたからだ。
「悲しいけど、夢の中であの子に会えてよかった」扇角の母親がそう語っていたことがあった。
「夕御飯通り越して翌朝になっておる。腹も減っているだろうて。アイリスを呼んで直ぐに食事をつくらせるとするかのう」
扇角が去ってくれてよかった。涙を見せたら、きっと心配させるだろう。それに、扇角は俺を慕ってくれている。そんな奴に、みっともない姿を晒したくなかった。
「I teach japanese. You teach English. We are ・・・」
「入りますよー」ガチャ
「何か呟いていたようだが、どうしたんだ?」
「いや、何でもない。ちょっと次に作るものを考えてただけだ。気にすんな」
「ふむ、そうか。だがほどほどにしておいた方がよいぞ。じゃないと過労死で若くして死ぬかも知れぬからな」
「気を付けとく」
今は今で充実している。ふと冷静になってさめることはあるけど、でも、皆大事な仲間だ。