行き遅れの悩み……
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ーーーーー決めた!私、今年中に結婚する!
もう4月だというのに季節外れの雪が降ったこの日、琴美は決断した。
川上琴美、29歳、独身。彼氏無し。
職業は美容部員という事もあり、見た目には昔から気を使っているので容姿はそれほど悪くなく、若い頃はモテた方だと自負している。
今は出会いがない事を言い訳にして、最後に恋人と別れて3年はゆうに経つ。
美容学校を卒業してからすぐに百貨店の美容部員に就職して、あれよあれよという間にこの歳になってしまった。
まわりは結婚ラッシュに出産ラッシュ、御祝儀だけが出ていくばかり。
もちろん仕事は好きだ。自分が綺麗でいられる努力も出来るし、人を綺麗にするのも好きだ。
ただ、こう朝から晩まで女性に囲まれて、女性を相手にしていると…こう、ねぇ…
丸一日を振り返って、男性と話したのなんかコンビニの店員さんの気の抜けた「ありがとうごさいました〜。」
だけなんてのもざらにある。
潤いが足りないのだ。
もう30歳も手前。子供の頃から将来の夢はお嫁さん♡なんて能天気で言ってたあの頃の私はもういない。
本気で婚活しなくちゃ!
しかしどうやって出会えばいいのか、合コン?街コン?相席居酒屋?
興味無くはないが、今の職場は結婚している人も多いし、昔よく遊んだ友達も今は子育てに忙しく、年々独身の友達は減っていくばかり…
おひとり様は得意だけど、流石に1人でそういう場に行けるほどのメンタルは持ってない。
はぁ〜っ、みんな一体どこで出会ってるわけ〜?
琴美は務めている百貨店の食堂スペースで午後の休憩をとりながら大きな溜息をついた。
午前中はかなり忙しく、食後に食べるケーキがちょっとしたご褒美だ。
「川上さん、どうしたんですか?溜息なんてついちゃって!」
後輩の金森沙耶が声をかけてきた。
「あ、沙耶ちゃんも休憩?お疲れ様。」
こんな話、21歳くらいの若い子に相談する内容でもないが、ネタついでに話してみる事にした。
「なるほどですね。川上さん、バリバリのキャリアウーマンって感じだから、そういうのに興味無いんだって思ってました!」
バリバリのキャリアウーマンって…それもう死語じゃないの?最近の若い子も使うの…?
仕事は好きだけど、しなくていいならしたくないのよ本当はね〜。こう見えて専業主婦に憧れてるのよ〜。
なんて事をぼーっと沙耶のくすみひとつないキメの細かい肌を眺めながら考えていた。
「ーーさんっ?川上さん、聞いてます?」
沙耶に声をかけられふと我に返った。
「ごめんごめん、沙耶ちゃんの肌があまりにも艶々で見とれてたのよ。」
「本当ですかぁ?川上さんに教えて貰ったスキンケア、実践してるからかな?ほら、新商品の美容液、化粧水の前に使うだけじゃなくて、最後にクリームと混ぜて使うといいってアドバイスしてくれたじゃないですか?次の日の潤いがやっぱり違いますね!…ってそうじゃなくて…
今夜、私と合コン行きませんか?って聞いてたんですよ!」
え?えぇ?合コン?
21歳の子達と?29歳の私が?
「えっと…気持ちはありがたいけど…ちなみに相手の男性はいくつくらいなの?」
「えーっと、確か22歳〜24歳って聞きましたけど…大丈夫ですよ!川上さん見た目も若いし、モテますよ絶対!私はサポートにまわりますし!」
いやいや…歳はそれほど気にするタイプではないけど、結婚を考えると年下はあまり現実的ではないのよね。うーん。
やんわりと断ると沙耶はぶーっと口を膨らました。
21歳がやると可愛いけど、私がやるとぶりっこになるこの顔…私だってぶーっ、よ。
と心の中でぶーっをして少し笑った。
「残念ですぅ。一緒に行く友達が急に彼氏が出来ちゃったらしくて、急遽人数が足りなかったのになぁ。」
「急に彼氏が出来る友達が羨ましいわぁ。」
あ!そうだ!っと沙耶が目を輝かせた。
「川上さんもやってみればいいんですよ!マッチングアプリ!」
マッチングアプリ…ってあれでしょう…
出会い系サイトでしょう…昔流行ったス〇ビみたいなもんでしょう…
出会い系はちょっとなぁ…
と渋っていると、更に目を輝かせながら沙耶がマッチングアプリのプロモーションをしてくる。
「もちろん出会い系とかナンパ目的の人もいたりしますけど、サイトによってはしっかり婚活してる人も多いですよ!さっき言った私の友達もこのサイトで彼氏出来たんですよ!」
「へ〜、そうなの?変な人ばかりじゃない?」
「オススメなのは有料サイトですね!
お金のかかるサイトは本気で出会いを求めてる人多いと思いますよ。」
ふむふむ。マッチングアプリか…昔の出会い系のイメージが強くて考えたこともなかったけど、本気で出会い求めてる人がいるなら、試してもいいかな?
「川上さんがやるなら、オススメのサイト送っておきますね!」
「うん、ありがとう…じゃあ登録だけでもしてみようかな…ってこんな時間!そろそろ休憩終わっちゃう!また後でね!」
こうして川上琴美29歳のマッチングアプリ生活が始まるのであった。