はちがね村の三人と二本
今日ははちがね村のまつりの日。村で一ばんたかいかぶと山のふもとに、村の人があつまって、おどりをおどったりみこしをかついだりしてたのしみます。
はちがね村にすむげんきくんは、お母さんとおまつりにきていました。
「おかあさん、りんごあめかって!りんごあめ!」
「だーめ。もう、さっきのカステラもまだ食べてないのに、つぎつぎほしいっていうんだから。」
お母さんはりんごあめを買ってくれそうにありません。げんきくんは口をとがらせて言いました。
「えー、いいじゃーん。買ってよ、買ってよお」
それでもお母さんはなっとくしません。そこに、友だちのひろしくんがとおりかかりました。
「あ、ひろしくん。」
「よお、げんき。なあなあ、明日あさひも川に行くんだけど、いっしょに行かない?」
あさひも川はかぶと山にある小さな川です。きれいなわき水がでていて、近くの人はよく水くみにきています。そして、子どもたちが近くにひみつきちを作るところでもあります。
「行く行く!」
「それじゃ、おばけの木の下でまち合わせな!」
かぶと山にはおばけみたいにえだがたれさがった木があります。子どもたちはこの木をめじるしにして、あさひも川に行くしゅうごうばしょにしています。
「ひろしくん、さなえちゃんもくるの?」
「ああ、さなえも来れるってさ」
ひろしくん、げんきくん、さなえちゃんの3人はいつもいっしょにあそんでいます。明日はひみつきちであそぶようです。ひみつきちにはみんなでもちよったおもちゃや本がおいてあって、三人はひみつきちで話をしたり、きちのそばであそんだりしています。
よくあさ、げんきくんははやおきしてひみつきちに行くじゅんびをしています。
「おべんとうに、おやつも入れて、すいとう入れてっと。よし、じゅんびできた。それじゃ、行ってきまーす」
「くらくなるまえにかえるのよ。いってらっしゃい」
げんきくんははずんだ足どりでひみつきちにむかいました。
「今日は何をするかな、何しようかな」
気がつけばもうお化けの木の下まで来ていました。さなえちゃんが先についてまっていました。
「おはよう、げんきくん。おやつ、なにもってきたの?」
「こんぺいとうとおかき、それとポテトチップスにいもけんぴだよ」
「やった、こんぺいとう大すき!わたしはホットケーキとメロンパンと、ドーナツ!」
さなえちゃんのお母さんが作るドーナツはあまくておいしいので、3人はさなえちゃんのもってくるドーナツが大すきです。
そうこうはなしているうちに、ひろしくんがやってきました。
「お、みんなもう来てたんだ。それじゃ、いこうぜ。」
三人はひみつきちにむかいました。
ひみつきちに入ってみると、きちのなかがちらかっていました。
「あ!あらされてる!」
ひろしくんはあせったようすで言いました。中をよく見ると、なにやら毛の玉がごそごそうごいています。
「はん人はおまえだな!つかまえてやる!」
三人はねこをとりかこみました。すると、その毛玉が立ち上がって言いました。
「これはこれは、えらいすんまへん。ここを通りかかったらここが見えましてな。のぞいてみたらたのしてたのして。かってに入ってもて、 かんにんな。」
三人はとび上がっておどろきました。ねこがしゃべるのをはじめて見たからです。それでも、自分たちのひみつきちがほめられて、まんざらでもないようなかおをしました。
「おわびに、そうや。うちにあそびに来んか?ちょうどいいおかしをもろたんや」
三人はおかしにつられて、いいました。
「そんなにいうならいってやろうじゃねえか」
「どんなおかしなんだろ、たのしみ!」
げんきくんはすこしこわがっていましたが、「げんき、びびってんのか?」
とひろしくんに言われてムッとして、
「いけばいいんでしょ!分かったよ。」
「ほな、さっそくいきまひょか。ついてくてくんさい。」
三人はしゃべるねこにつれられて、ねこのいえにむかいました。
「このあたりは気むずかしい人も多いから、気いつけなはれや。」
ねこにあんないされてやってきたところには、ふしぎな人がいっぱいいました。目がたくさんあったり、顔がなかったり、首がながかったり、毛むくじゃらだったり。せなかにたいこをかついでいる人もいました。たまにねこが、知りあいらしきほかのねことあいさつしていました。
「おお、またごろうはん。もうかりまっか」
「ボチボチでんな。今日もしんせんな魚が入ったよってな。こうてくか?」
「んにゃ、今日はやめときますわ。おきゃくさんをあんないせにゃならんからの。」
ふしぎなせかいの人たちは、いろいろなおしごとをしていました。ねこのまたごろうさんは魚や、口が二つある人はまんざいし、手足がいっぱいある人は大工さん。せなかにたいこをもってる人は、てんきよほうをしたりじかんをしらせたりしていました。
「つきました、ここがわいの家です。」
キョロキョロ歩いていたら、ねこの家についた。
「おじゃましまーす。」
三人はあいさつして、ねこの家に入りました。その家は、外から見るより広くて、みんなびっくりしてしまいました。
「ええと、どこにおいたかな。あったあった。」
ねこはゴソゴソと、たなをさがして、お茶を入れてくれました。
「さめんうちにどうぞ。」
お茶をのんで一いきついたら、ねこが言いました。
「もうしおくれましたな、わいはまたきち言うもんで、ねこまたです。みなさんのいいおうちを見せてもろてありがとう。そして、あそびに来てくれてありがとうな。みんないそがしくしてるから、あんまり人よばれへんねんや。」
ねこまたときいて、げんきくんはこうふんして言いました。
「すげー!ほんとにしっぽ二本なの?」
またきちははずかしそうに
「そないひとにみせびらかすようなもんでもないねんけどな。」
と、りっぱな二本のしっぽを見せてくれました。
「うわー!すごい!きれーなしっぽ!」
さなえちゃんはしっぽをなでました。
「やめてな、こそばゆいわ。」
またきちのしっぽは、センサーのようになっていて、ほかの生きもののけはいをかんじられるのだそうです。
「おかげでおちつかないこともあったけどな。」
またきちと三人は楽しくあそびました。しりとりをしたり、おはじきやビー玉あそび、めんこあそびもしました。そして、みんながもってきたおやつを食べ、三人と一ぴきはとてもなかよくなりました。
たのしいじかんはあっというまにすぎました。お火さまがかたむいてきたので、またきちは言いました。
「みなさん、そろそろおかえんなさい。わいのうらないでは、早くかえればかみなりがさけられると出てます。」
「えー、かみなり?今日はお天気ってお母さん言ってたよ。」
三人がぶーたれると、
「当たるもはっけ、当たらぬもはっけ。でも、わいのうらないは外れたことありませんねん。ようじんにこしたことはない、またこればええから、きょうのところはおかえりやす。」
三人はまたきちの家を出ました。でも、またきちのいうようにまっすぐ帰りはせず、ふしぎなまちをウロウロしながら帰りました。
「あなたはかみなりさまね!おしごとおつかれさま!」
「あ、ぬりかべさんだ!あくしゅしてください!」
あんまりゆっくりしていたので、いえにつくときにはすっかり日がおちていました。
「ただいまー。今日はね!ふしぎなねこさんに会ったよ!それでね!」
家に入ってげんきくんは今日のできごとをお母さんに教えてあげようとしました。でも・・・
「こんなおそくまでどこに行ってたの!はやくごはん食べなさい!」
かみなりさまがお母さんのあたまの上におりてきて、げんきくんのうえにかみなりがおちましたとさ。
「ごめんなさい。」
ねこまたのうらないは、当たったようでした。
ぼくは小学生のころ、妖怪とかオバケとか、こわがりながらもたのしんでしらべたり、見たりしていました。なまえをかいていない妖怪もいますが、ぜひよみかえして、なんという妖怪か、当ててみてください。