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愛しい君へ

作者: たまたまご

愛しい君へ


君に手紙を書くのは随分久しぶりだね。

一度も返事が来たことはないし、この手紙も君に届くかわからないけれどまた筆をとったよ。


今日手紙を書いたのは久しぶりに、本当に久しぶりに、君の姿を見れたからなんだ。


・・・ああ、本当に明日の夜なんだね。

この日が来ないことをどれほど願っただろう。

それでも3年ぶりに君の姿を見れたことをとても喜んでしまっている自分もいたんだ。

君の瞳には僕の姿は写っただろうか?

僕は君の姿が見れてとてもうれしかったよ。


・・・君と別れてからもう3年が経ったんだ。

あの頃は、今思い出しても毎日が輝いていたよ。

僕の隣にはいつも君がいてくれたから。

本当に、本当に輝いていた、とても幸せな日々だった。

あれはいつだったかな、君が料理を作ろうとしてくれたのは。

卵を上手く割れずに半べそをかいていたっけ。

できた料理も真っ黒だったね。

あの時は笑いながら二人で食べたよね。

それ以来料理は僕の仕事になったんだよね。

最初は僕も下手だったけど、君が美味しいといって笑ってくれた。

洗濯も掃除も君はてんで不器用で結局全て僕がやることになったっけ。

でもね、僕は全然嫌ではなかったんだ。

なぜなら君がいたからね。

君が横にいて笑っていてくれていたから。


幼い頃、ものご心ついた頃から僕たちはずっと一緒だったね。

僕は君とはずっと一緒なんだと思ってた。

ずっと一緒にいられると。

君がいればどんなことだって耐えられる。

君がいればそれだけで幸せだったんだ。

君と僕はずっとずっと一緒だとそう信じていたんだ。


3年前のあの日まで。


君が聖女に選ばれ、世界を救うためにその身を捧げるって決まるまで。

君は逃げようって、一緒に世界の果てまで逃げようと言う僕の手をそっと離し、あの家を出て行ったね。

あの時の、僕の手を離した時の、君の嬉しそうな、悲しそうな、なにより少し困ったような表情を今でも忘れることができないんだ。

僕はあの時、君のその顔を見て、追いかけることも、無理やり連れて逃げることもでなかったんだ。

あの時僕は君に何も言えず、ただその背中を見送るだけだった。

今ならば少しだけあの時の君の気持がわかる気がするよ。


明日の夜、君はその身を捧げる。


僕は今日ここを発つよ。

明日の夜をこの場所で迎えるわけにはいかないから。


・・・3年前、僕には夢があったんだ。

他の人からしたら小さな事だと笑われるかもしれないけれど、僕にとってはとても大切な夢だったんだ。

それはね、故郷で、君とずっと一緒に暮らしていくんだって。

そんな、小さな夢さ。


その夢はもうかなうことはないけれど、僕には今もっと大きな夢があるんだ。

そしてその夢をかなえるための術を手に入れたんだ。

3年もかかってしまったけど、今夜僕は夢をかなえに行くよ。





僕の夢は君にずっと生きていてほしい。

君にずっと笑っていてほしい。

隣に僕はいられないけれど、君に生きていてほしいんだ。

笑っていてほしいんだ。



・・・・・だから・・・僕は・・・今夜・・・神を殺す。





ネタとして考えながらもストーリーとしてまとめきれずにいたものを、中心部分として考えていたものをこういう形でまとめてみました。

神を殺すと決心し、力を得るまでの心身の変遷とかいろいろ考えていたんですが、煮詰まりましてw

読まれた方が少しでもお楽しみになれれば幸いです。

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