そして決意した。
一斉入部の日。
香乃の決断は?
体験入部期間が終わって今日は金曜日。
今日はもう仮入部がなくて、代わりにあるのは一斉入部だった。
昼休みに外をのぞくとすでに準備が始まっていて、部活ごとにブースが作られている。入部したい人は紙に記入、という次第みたいだ。香乃はいまだに、何部に入ろうか―――具体的に言うと軽音部に入ろうか悩んでいた。
放課後、A組から順番にぞろぞろと中庭へと歩いていく。ふと、窓の下を見下ろすと、体験入部の時にいた小雪ちゃんが友達と歩いていた。演劇部、はいるのかな、やっぱり中学からやってたし本命なのかな…?。明るい子でとっつきやすそうな子だったから、一緒に活動したら楽しそう、と少しだけ思った。
「それじゃ、G組の皆さん、移動します。」
担任の声に腰を上げる。どうやらこれが終わったらすぐ帰るらしく荷物を持ってみんなで移動した。目の前を、クラスのはっちゃけ系女子が通り過ぎる。
「部活決めた~?」「一応~。」「どこ~?」「軽音かダンス。」「えっじゃあ一緒に軽音入ろうよ!」「いいよ~」………
楽しそうにキャラキャラ話す彼女らの笑顔はキラキラしていた。ああいう風に生きれるのが将来出世するんだろうな、と思う。周りと一緒に行動できて、お互いアウェーにならないように保険を張り合える。
それが頭では賢い生き方だと知っていても、マネをする技量が香乃にはなかった。
「やっぱり好きなことをやりたいなぁ…。」
人づきあい部活に入るより、その部活自体が部活に入る目的になれたら一番だ。その子と気まずくなったりしたらその部にもいにくくなってしまうし。そもそもそんな友達いないし。
軽いリュックを背負いなおして、前を向いた。昇降口をでるとこれが最後、と言わんばかりに運動部系の勧誘が始まる。どうやら手前が運動部で奥が文化部という並びになっているらしい。
「演劇部はここで~す!」
耳が痛くなるような喧騒のなかでもはっきり声が聞こえるのはさすが、というべきなのだろうか。多分きっと声からして安楽先輩だ。その声に吸い込まれるように、演劇部のブースへと近づいて行った。
「こんにちは。」
と二年生の三人の先輩方になんとなくあいさつする。
「演劇部…入部してくれる感じ…?」
秋元先輩がうかがうように聞いてきた。
「はいっ!」
即答していた。喧騒にかき消されそうだったけど確かに届いたようで、先輩方はほっとしたように笑った。
「あっ、じゃあ名前書いてもらえる?」
ほっとしていた剣持先輩が気づいて、ペンを差し出しながら机に貼られた紙を指さした。すでに数名の名前が書かれている。
「こゆきちゃんだ……。」
一番上には佐藤小雪、と丁寧な字で書かれた名前があった、四番目には岡本のりこ、という知った名前もある。あとの二人は全然知らない子だった。のりこちゃんの下の欄に自分の名前を書き込む。
「ケータイ持ってる?」
「持ってますよ~。」
「じゃあえっと、このメールアドレス登録して、クラスと名前送ってもらえるかな。部会の連絡とか送るから。」
「了解です!」
スマホで写真を撮ろうと紙を見るとたくさん落書きがしてあった。とてもかわいらしくて思わず口の端がほころぶ。
「月曜日も部活やってるから時間あったら来てね~。」手を振って演劇部のブースから離れた。たちまちほかのクラスの人の流れに押し流されて演劇部のブースから離されていく。
「あとは。」
軽音部にはいるかどうか、演劇部に入部できた香乃にとってそれが最大の問題だった。はいりたくない、といえばうそになる。そもそもこの学校に決めた理由が八割軽音学部があるからだったし。
軽音学部のブースは一番奥の奥だった。二十人くらい名前を書くためにずらっと並んでいた。その様子が放つ異色な雰囲気に思わず慄く。誰もが俗にいうパリピみたいな人ばっかで、社交力が高そうだった。あの中に入って部活できる度胸があるだろうか、バンドを組めるだろうか…?たくさんの不安が浮かんできて、列に並ぶことができなかった。
いいや、とくるりと軽音のうブースから離れた。
代わりに文芸部とパソコン部のブースによって名前を書いてきた。どっちも気になってたし、活動日の穴埋めのためでもある。
月曜日、演劇部に顔を出してみよう。
そう思いながら香乃はまだ肌寒い青空の下を自転車で漕ぎ出した。
はい、今回はやけに短いです気にしないでください。
これから素敵な学園ライフが始まり、メロドラマチックな学園ライフが始まる!!!というわけではないですが、これからがゲキ部!本編なので(?)ぜひ次話もよろしくお願いいたします!




