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銀色のローゼンシア  作者: 鎮黒斎
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インテリゲンチア

第二章 激戦の最中で


インテリゲンチア


 ここは現実世界、インテリゲンチアの高層ビル。天を貫かんとばかりの高層ビルで一万階以上はあるらしい。シェルターの透明な天井を突き破る勢いで、シェルター外にもそれは伸びている。成層圏内にも食い込んでいるようにも思える高さだ。ここらへんは天才達の技術力なんかでどうかなっているのだろう。あの時、救援に来た仮面の少年からアポをとり、アスカ達はそんな事を思いながら、天を貫かんとする高層ビルを眺めていた。


 アスカ達は高層ビルの頂上に呼ばれていた。

 室内は広く、窓の前に立派な執務机と椅子。奥には長い机を挟んでいる立派な長いソファーがあった。

「ここって一番偉い人が、本来仕事をする場所だよねぇ?」

 ローゼンシアがアスカに尋ねる。

「知るかよ、なんだってんだ全く!」

 アスカは全然状況が把握できないのに苛々して、ローゼンシアに当たっていた。

 仮面をした者は窓を見ていた。下には雲が広がっている。

 クルリと踵を返し、仮面を取る。容貌はかなり若い顔立ちで、ローゼンシアやアブソリュートと同い年あたりに見えた。

 アスカは我慢しきれず、すぐさま言葉を言い放つ。

「なぁ、アンタ。俺達をどうする気なんだ?」

「君達を保護する」

「保護?」

 ローゼンシアは疑問が入り混じったの声で言った。

「僕の名はミラード=フェルスター、よろしく」

 シャナガは驚いたようだった。

「ミラードって…このインテリゲンチアの全責任者で“アークブレイン”の……あのミラードか!」

「なんだって!」

 アスカは驚いていた。

「全責任者って何? “アークブレイン”って何? 社長とかそう言う感じ? それとも会長?」

「この社会音痴が! まぁ……でも、お前風に言ったら、そんな感じだ」

 アスカは無知なローゼンシアに理解しやすいように言葉を選んだ。


 “アークブレイン”。インテリゲンチアの最高峰の天才を指す。知能・発想力も然る事ながら“人格”に優れた者がその席に着ける。その席は三席あるが、現在はこのミラード一人だけだ。

 すなわち、公認された世界最高の天才がこの世に一人と言う事になる。


 一堂は驚く。こんな少年がこの高層ビルの全責任者?

 シャナガは言う。

「いや、あれでもかなり高齢で年齢は謎らしいぞ。……あ、失礼!」

「いや、いいよ。過去、前インテリゲンチアの独断により、次々と最先端の医療を僕に組み込まれた…今の僕には特殊なナノマシンが組み込まれてしまってね。なかなか死ねない体になってしまった」

「“組み込まれてしまった”?」

「この話は長くなるんだ。簡便してほしいな。」

 ローゼンシアは聞き返そうと思ったが、ミラードによって話を変えられてしまった。どうやら相当聞かれたくない内容もあるのだろう。ローゼンシアは聞き返すのを止めた。

「どうして俺達の位置座標がわかったんだ?」

 アスカは疑問に思っていた。

「キースの報告後、君達をずっと着けさせてもらった……君達が信用に値する人間かどうかと言う事でね」

「どうしてそんな事する必要があったの?」

 ローゼンシアは聞き返す。

「キースは元エレメンタルレイド……色々突っかかる事があってね、議会が難航してたんだ。そうこうしている内に敵が現れた」

「敵ってなんだ!」

 アスカはハッキリしない状況に苛々し叫んだ。

ウェントールミリタリーインダストリー……これが今回、僕達の敵にあたるかもしれない組織の名だよ」

 ミラードは静かに答える。

「……。」

 アブソリュートはしばらく沈黙を保っていたが、ついに言霊を言い始めた。

「……それは僕の所為?」

「そうとも言う……君はウェントールミリタリーインダストリーの特殊な……」

 といい始めたミラードだったが、思わぬ失言に言葉を濁した。

「特殊な何だって言うんですか! 僕には何もわからないのに!」

 自分の正体を知っているかもしれない人間が、今目の前にいる。

 アブソリュートは逸る気持ち抑える事が出来なかった。

「お願いします…教えてください。」

 アブソリュートはミラードに話すように懇願する。

「知らない方がいい事もあるんだ」

「僕は知りたい!」

 あまりのアブソリュートの勢いある言動に、ミラードはついに言う決心をした。

「簡単に言うと、君は特殊な実験体にされていたんだ。今はこれ以上の事は言えない」

「実験体だって! 僕が? でも僕には一般常識がある! 実験された記憶だって無い」

――記憶が無い?

 アブソリュートの脳裏に確信とも言える疑問が浮かび上がってしまった。

「違う!」

アブソリュートは一生懸命に何かを否定するかのように言い放った。

「済まない……これ以上の事は本当に言えないんだ。」

 これ以上の事は組織の極秘事項にも当たる。

今、部外者が多いこの場で多くを語れないミラードは申し訳なさそうに言葉を選んでいた。

アブソリュートは気力を喪失し、うな垂れ……膝をついた。

 ローゼンシアはそんなアブソリュートの肩に手を当て何か言おうとするが、言葉が出ない。

 ミラードはアブソリュートを哀れに思っていたが、話を切り替える事にした。

「それより、今回の君達の件なんだけど、ウェントールミリタリーインダストリーの本性を見抜き、解決するまで、君達を保護するよ」

「だから保護ってなんだよ!」

 アスカはまたしても苛々しながら言っている。

「君達もウェントールミリタリーインダストリーから狙われている……殺される対象となったんだ」

「なんだって! 一体どうして!」

 アスカは何故かサッパリわからなかった。

「証拠の隠滅。君達はそこのアブソリュート君の目撃者だ。通常生活をしていると敵は必ず君達を始末しにかかる……今回の話はこれまで。事件が解決するまで、責任持って保護しよう。部屋も用意してある。今は休息したまえ」

――部外者以外語れない。そう言う事かよ!

アスカは苛立ちを抑え、皆も一緒にミラードのいる部屋を出た。


 ミラードの居る部屋を出、廊下にアスカ達はいた。案内人の女性が、用意された自分達の部屋まで案内してくれている。

 部屋の案内をし終え、案内人の女性は去っていった。

 アスカは口を開く。

「……シャナガ、アンタには聞きたい事が山ほどある」

「ロゼはアリューを部屋へ連れて行ってくれ。アリューの精神状態が心配だ」

ローゼンシアはアスカの言われた通り、アブソリュートを部屋まで連れて行く事にした。

「……何から聞く?」

 シャナガもアスカから質問がくる覚悟を決めていた。

エレメンタルレイドの登場。05と呼ばれていたアブソリュート。……そして、インテリゲンチアの介入。どれもこれもアスカにとっては謎だらけだったからだ。

「お前が戦闘に参加しなかった訳はなんだ?」

 シャナガは言う。

「お前達を一人前のハッカーとして育てる為だ」

 続けてアスカが言う。

「ハッカーとして育てた訳は!」

「お前達が生きていく為……それもある」

 ――“それもある”ってなんだよ!

 アスカは更に苛々しながら言い放つ。

「エレメンタルレイドだかなんだか知らねぇが……てめぇは本当にそこに属してやがったのか!」

「昔の話だ」

 アスカの怒りは頂点まで来ている。

「俺達をウェントールミリタリーインダストリーに潜り込ませた……あれは計算づくか!」

「……そうだ」

「アリューの事も知っていたな!」

「多少はな」

「アリューが原因で、俺達が狙われる事も知っていたんだな!」

「そこのところは、インテリゲンチアが何とかしてくれると思った。常に伝令を打っていたから、嗅ぎ付けてくれるのにそう時間はかからないと思いこんでいた。が、時間がかかって、お前らには怖い思いをさせたな……済まない」

アスカの怒りは爆発していた。

「俺や……ロゼを巻き込んだ! 貴様は平気だったのか!」

「……」

 シャナガは黙りこくった。

「シャナガ=エドと言う名も偽名だな……テメェ、一体何を考えている!」

「今は言えない」

――バキッ!――

 アスカはシャナガの顔を殴りつけた。

 大きな鈍い音を聞きつけ、ローゼンシアが部屋から出てくる。

「お兄ちゃん止めて!」

 ローゼンシアは兄に本当に何かを訴える時、初めて“お兄ちゃん”と言う。今がその状況だ。

「こいつは……こいつは俺達をハメやがったんだぞ!」

「でも、私達を育ててくれた」

 ローゼンシアは過去、孤児で初歩のハッカーだった時にシャナガに出会った事を思い出す。

シャナガは倒れていたが、ゆっくりと起き上がった。

「今は我慢してくれ……いずれ話す時が必ずくる」

 シャナガは申し訳なさそうに声を落とす。

「お前らを巻き込んだ事は本当に済まないと思っている。だがもう安心だ、インテリゲンチアが介入してくれたからな」

 一息置き、シャナガは続けて言う。

「今は信用してくれなくてもいい……だが、俺はお前達をいつも信じて暮らしていたんだ」

 シャナガは後から「パートナーだからな」と付け加えた。


 シャナガは用意された部屋にいた。

ポケットからおもむろに人差し指くらいの長さで細い棒を取り出した。空間からグラフィックが出て女性の姿が浮かび上がる。これは現在の写真と言うべき物と言える。

「パリス……子供達に怒られちまったよ、俺はまだお前の事で頭が一杯らしい」

 シャナガは過去を思い出しながら、パリスと言う女性の立体ホログラフィックを見ていた。

「俺、お父さんになるのが夢だったんだけどなぁ……」


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