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銀色のローゼンシア  作者: 鎮黒斎
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死闘

死闘


 風の剣を持った男と黒い剣を持ったアブソリュート……二人とも人並みはずれた身のこなしで戦っていた。

 アブソリュートは上空を飛び縦回転し、風の剣の男に一撃を浴びせる。風の剣を持った男は、それを横回転して交わし再びアブソリュートに攻撃を転ずる。アブソリュートは右斜め下に剣を構え、それを防ぐ。そんな攻防が続いていた。


 「ほう、誕生したてでこの戦闘能力……流石だ05」


 謎の男は余裕をもった笑みで、片言のように言う。


 しかし……。


 「敵の方が実戦的に豊富だ。アリューの状況が絶対的に悪い」


 シャナガは冷静に、戦局を見張っていた。

 触れるだけで消去する黒い剣を持ったアブソリュートでも絶対適わないと言っているのだ。

 ローゼンシアもヘリオス・チェレスタで応戦する……が、男が放つ強力な風の壁でレーザーが防がれる。

 アスカもラングルードで攻撃するが防がれ、またもや小風の刃の攻撃を受けるのだった。

 今回はアスカも本気で攻撃にあたった。


 「爆砕陣!」


 風の剣を持った男に、ラングルードから放たれた稲妻が浴びせかかる。

 だが、風の剣を持った男は無数の稲妻を素早く剣で払い、残りの稲妻の攻撃を宙返りで簡単に交わされてしまっていた。

――攻撃が全く効いていない!

アスカは人並み外れた剣技とスピードを持つ敵に、力量の差をまじまじと見せつけられた。

 その時だった。


 「お前ら、何をしている!」


 警官かガードマンか……人が見回りに来たようだった。


 「……うるさい蝿だ」


 風の剣を持った男は訝しげにそう言い、光る砂みたいなのを放った。そして、数の真空の刃をその人間に向けた。


 「いけない! あれは強制ログアウトを封じるプログラムだ!」

 アブソリュートは慌てて言葉を出した。

 ――なぜ僕がそんな事を知っている!?

 アブソリュートが自分にネット界深部の情報が、知識にある事ある瞬間だった。


 通常、ワイヤード制御を改造していない一般人には、仮想空間でダメージを受けると自動的に働く強制ログアウトがある。今回、“光る砂”らしき特殊なプログラムで強制ログアウトを封じられたのだ。


“光る砂”で強制ログアウトを封られ、真空の刃は迫りくる。


 その通りすがりの人間は真空の刃に包まれ……絶命し霧散と消えた。


 「なんて事を……」


 なんの躊躇いもなく、すぐさま殺しにかかる風の剣を持った男にローゼンシアは恐怖と同時に後から怒りを感じた。

だが、“光る砂”はワイヤード制御を改造してあるハッカーには通用しない。これはログアウトするチャンスかもしれない。

が、ログアウトする準備が整うまで、風の剣を持った男が待ってくれるとは思えない。

――しゃぁねぇ……俺がやるか。

その時、風の剣を持った男に、カウボーイハットが飛んで来た。

風の剣を持った男は、帽子を斬る。帽子は帽子と言う役目を終え、霧散と消えた。

 なんと、シャナガが風の剣を持つ男の前に出ていたのである。


 「バカかお前! 死ぬぞ!」


 アスカはシャナガを静止させようと叫ぶ。

が、シャナガはその言葉を無視し、次にこう言い放った。


 「ラルベル、久しぶりだな」


 シャナガの腕には、炎につつまれた槍のアクディブ・デバイスが、いつの間にか握られていた。


「お前の相手は俺がしよう。こいつらに手を出すな」


 シャナガの表情に怒りが見えていた。


 「その槍、その容貌。“爆炎のキース”……貴様、生きていたのか!」

 どうやら二人は顔馴染みであったらしい。

 が、シャナガの事を“キース”と呼んでいた。


 「ラルベルよ。さぁ、どうする? 年期は俺の方が上だし、この人数では流石のお前も無傷では済まんだろうよ?」


 ラルベルと呼ばれた風の剣を持った男は戸惑った。

――“爆炎のキース”が生きていた……しかも、俺の目の前にいる。どうする?

 と、その時だった。

 シャナガの地面の前に、「動くな」とばかりに言っているような水の矢が刺さっていた。何者かによる狙撃だ。

……シャナガは狙撃内の射程を見積もりして、視力をプログラムで補正し、最大限まで視力が挙げられた目は、三㎞先に水色の髪をした短髪の女性も現れていた。

 水色の髪をした女性はラルベルと名乗る男に、通信を入れる。


 『遅いぞ、ラルベル! 貴様の座標位置で着けてみれば、たかが四人程度に何をやっている!』


 通信が入った後から、マーランドがラルベルののいる座標に現れた。


 「悪いな、マーランド」


 シャナガの計算は狂った。

――水弓のマーランド。こいつも来やがった。

ラルベルと言う男は、訝しげにシャナガを見る。


 「“爆炎のキース”が生きていた。そして、この場に現れた。雑魚どもも数人いて少々時間がかかっている」

 マーランドと言う女性はラルベルの発言に驚いていた。


 「“爆炎のキース”だと! 組織で抹殺した筈では……」


 「……殺し損ねてたんだよ」

 シャナガは言う。


 「何がどうなってんだよ!」


 話しについて来れていないアスカは叫ぶが、同じくローゼンシアもアブソリュートも話にはついてはこれていない。

――風剣のラルベル、水弓のマーランド……形勢は最悪だ。

 シャナガには二人を相手に出来る余裕は無かった。アブソリュートがいても、それなりに戦力になるが……はっきり言って戦力差は変わらない。

 その時、ワープ転送でもう一人現れた。

――冗談じゃねぇぞ! 今度は誰だ!


 「…絶体絶命」


 シャナガは流石に覚悟を決めた。

 だが、シャナガの見た先に現れた人物は仮面をつけた人物だった。


 「誰だお前は!」


――敵か、味方か?


 が、考えてみれば味方である訳がなかった。

 アスカ、ローゼンシア、シャナガ…このチーム以外、それ程仲良くしているチームはいない。

 それに出てきたのは一人だ。途中でこの場に介入しようとすると、先程の斬り刻まれた通りすがりの人間のような目に合う。しかも、今回はワープ転送で来ている。

一人でワープ転送して現れる人間なんて敵しかいない。味方である可能性はかなり低い。

しかも、ここは人通りの少ない路地裏で、夜中だ。巨大な爆発物でも発火しない限り誰も近寄っては来ないだろう。

――まさに絶体絶命。

 シャナガには頭の中には、先程から絶体絶命の文字しか思い浮かばない。


 少年はヘリオス・チェレスタのような青色手鏡のアクティブ・デバイスを三十機召還した。

――しかも、遠距離型の敵か!

 しかし、そのヘリオス・チェレスタに似たようなアクティブ・デバイスの矛先はどうやら自分達には向いていなかった。


「…行け」


 仮面の人間の小声と同時に、ヘリオス・チェレスタに似た三十機もの青い手鏡のアクティブ・デバイスはその人間の周囲を離れ、ラルベルに十機、マーランドに十機、高速移動しながら、敵の方に向かって移動しレーザーで攻撃を仕掛ける。後の十機は自身の周りに守るように配置している。


「なに! テレキネシスだと!」


 ラルベルとマーランドは思いもよらない攻撃に隙を突かれて避けるのに手一杯だった。

 それほど凄まじい攻撃だったのだ。

 レーザーの雨と言ってもいい。ヘリオス・チェレスタに似た青い手鏡のアクティブ・デバイスのスピードもかなり速い。ローゼンシアの周囲に固定されているヘリオス・チェレスタとは威力も去る事ながら性能の違いもかなり差があるようだった。

だが、流石にエレメンタルレイドとも呼ばれている二人……攻撃を避けている。


 「チッ、これしきの事で!」


 ラルベルは憤る。


 「待て! あの機微から、まだ相当の余力を残している……先は長い。撤収するぞ、ラルベル」

 マーランドも仮面の少年の実力が未知数と判断し手を出すなと言っている……二人はログアウトし撤収した。


 「あなたは誰?」


 ローゼンシアは、仮面の人間に尋ねた。


 「キース……君がエレメンタルレイドの一人なので疑っていた。情報を正確に知るには時間がかかったんだ。結果、君は信用できる人間だと、ついさっきインテリゲンチアで判決が下った……みんな忙しから僕が来たよ」


 仮面の人間は、笑顔で答えてる気がした。


――インテリゲンチアが助けに来た!

 シャナガは大喜びでガッツポーズをした。


「“知識層・インテリゲンチア”が俺達を助けにきた! 俺達は助かったぞ!」


 アスカもローゼンシアもサッパリ状況がわからなかった。

 ……助かったと言う事以外は。



 “インテリゲンチア”・通称“知識層”。天才達が集うイオシスにある頭脳組織シンクタンク。だが、その権力は独立したモノでどんな国家にも従わないのがこの組織である。国家以上の権力を有する事もあり、発言力はかなり高い。

 それが今回、助けに来たらしい。


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