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銀色のローゼンシア  作者: 鎮黒斎
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ターゲット捕捉

ターゲット捕捉


 「……僕の事、何かわかりましたか?」


 相変わらず疑問を漏らす、アブソリュート。

 アブソリュートはミラードに呼ばれて例の頂上の室内にいる。今回もまたミラードに呼ばれてアブソリュートはやって来た。

 アブソリュートの頭は自分の正体がなんであるのかで一杯だ。


 「話しは結構ズレるけどね、わかった事は少しある。君の生みの親、ウェントールミリタリーインダストリーで失踪したDr・エスメラルダ。彼が“カウント・ゼロ”を探しているようなんだ」


 ――なぜ?

 と言いたげな表情でアブソリュートはいる。


 「狙いは彼の情報収集能力の速さ……なのかな? 本当のところ、なんであるのかわからない。けど、わかった事はエスメラルダも何か探っているようなんだ」


 ミラードはもったいぶるように言う。エスメラルダが何を探っているのか。


 「ガークの事。君の剣も効かなかった。奴は既にマナゲスの法則を捻じ曲げる手法まで編み出している。……エスメラルダはネットの世界を司る絶対のルール・“マナゲスの法則”について、ガークがどれだけ知っているのか探っているんだよ」


 ――エスメラルダはガークの情報を欲しがる為にカウント・ゼロを必要としている? そう言うのか……?

 ハッと言う表情でアブソリュートはミラードを見た。

ミラードは話を続ける。


 「そう、狙いはウェントールミリタリーインダストリーのデータベース」


 「危険だ! アスカもいる」


 「でも、いつかは必要になって来る事なんだ」


 と、少しきつい口調でミラードは言った。

 アブソリュートもその重要さは十分わかっていたので、これ以上言うのは止めにした。

 ――待てよ、エスメラルダがガークの情報を欲しがっている。その為にカウント・ゼロを必要としているって事なのか?


 「あれ、それって何か変じゃないですか?」


 それはカウント・ゼロをわざわざ使って、ウェントールミリタリーインダストリーのデータベースを必要としている事だ。自分で調べようと思えばできるはずなのだ。ウェントールミリタリーインダストリーを失踪できた彼ならば。

いや、ウェントールミリタリーインダストリーに“いた”彼ならば知っていた事なのだ……ワープ転送を使って。


 「命が惜しい……と言う訳でもなさそうだし。

彼も元Wウェントールミリタリーインダストリーの人間、全てを知っていてもおかしくなさそうなんだけど……正直、僕にもわからないよ」


 その時、昼食のサイレンが鳴った。


「あ、もうこんな時間か。話は以上だ。昼食とってきなよ」


 ミラードはやや口調を強くアブソリュートにそう誘う。

 アブソリュートは気負いし、その誘いに答える事にして室内を去った。

 と、突然ミラード宛に宛先不明の電子メールが来ていた。中にデータを添えて。

 “即見てもらいたい、カウント・ゼロ”と書いてある。

 過去にインテリゲンチアに侵入を許したカウント・ゼロだが、実はミラードは彼と面識があり特定の条件下で雇っていた。ラザーズ一家の拉致事件があった後、サイファをインテリゲンチアのセキュリティー部隊に誘ったが彼は断り、ハッカーの世界に身を染めた経緯がある。自分で解決したい事があるそうだ。

 過去を思い出しながらも、メールの中身を見る事にした。

 その内容にはアブソリュートの正体を暴いた情報が入っている。それと“マザーコンピューターを守れ”とだけ書いてあった。

 ミラードはその内容を慎重に受け止める事にした。


 昼休み、アブソリュート、ローゼンシア、シャナガ、ロザリーのメンバーは昼食を取る為、インテリゲンチア内にある食堂へと足を運んでいた。

 インテリゲンチアの食堂はどこかの高級ホテルの食堂よりも余程広くそれが十階はある。食べる種類のレパートリーもかなり豊富でバイキング方式となっていた。

 アブソリュートのチームのメンバーは取り皿に食べる物を入れ終わり、席に着く。

 シャナガは和食。ロザリーとローゼンシアは洋食風だったが、アブソリュートは洋食と和食と、なんだか分からない風の食べ物で混ぜ合わせ内容だった。


 「アリュー……いつも思うんだけど、なんだか盛りが汚くて、“今食べるぞ!”って雰囲気じゃないんじゃない? しかも、洋食と和食と変なのゴチャゴチャにまじってるし」


 ローゼンシアは不満の声をあげる。


 「……いいじゃないか、別に。バイキングってなんでも入れていいんものなんだし」


 アブソリュートはそれに力なく反論していた。


 「そうですよ、ロゼさん。これはバイキングです」


 ロザリーがアブソリュートに助け船を渡す。


 「あ、ロザリーまでそんな事言うんだ」


 「そんな事より早く食っちまおうぜ」


 シャナガはおにぎりをほうばっていた。

 昼食を取り終り、メンバー達一行は一時休憩を取る。

 だが、休息の時間は訪れなかった。警報音が鳴ったのだ……これはいつもの通りマザー補助汎用機の攻撃された事を意味していた。


 「昼食くらいちゃんと休ませろ!」


 シャナガは激怒する。

その時、携帯無線でミラードから連絡が入った。


 「君達だけ、僕の所へ来てくれないか」


 そうミラードは言い残し、携帯無線を切る。

 メンバー達はミラードの所へ急ぐ事にした。


 ミラードがいる室内、メンバーは揃っている。


 「今回の補助汎用機の不成功に終った場合、補助汎用機の全機の十パーセントを切る。これはマザーコンピューターのダメージが来る事を意味している。みんながんばって」


 「はい!」


 ミラードの言葉に一堂は力強く応答する。


 「じゃ、ここで長話なんかしていられないわね。行こ!」


 ローゼンシアはそう呼びかけた。


 「アリューだけ残ってくれないかな? ……あ、大丈夫。すぐにそちらへ向かわせるから」


 そうミラードは言う。

 一堂はアブソリュートだけ残して、ミラードの室内を去った。

 ミラードとアブソリュートは向き合う。

 ――なんだか空気が重い。

 アブソリュートはそんな感じに捕えていた。


 「……アリュー。君は本当に記憶を失ってしまったのか?」


 ミラードはそう呟く。

 アブソリュートは首を縦に振る。


 「ミラード……どうしたんですか、一体?」


 アブソリュートがミラードの顔色の悪さに気が付き心配そうに声をかけた。

「いや、なんでもないんだ。済まなかった、直ぐに出撃してくれ」


 ――なんか今日のミラードは変だ。

 そう思いながらもアブソリュートはミラードの室内を出る。


 「ラザーズ……君は本当に記憶を失ったのか?妻を亡くした事、娘の事……残された息子の事までも……全て」


 そうミラードは呟いていた。

 ミラードにはアブソリュートの本当の正体を教える事が出来なかった。


 ネット世界内。アブソリュートは出撃に遅れたがチームと直ぐに合流する事ができた。これはロザリーのサポートのお陰である。

 「よう、ミラードとなんかあったのか?」

 シャナガがアブソリュートに質問する。


「いや……良くわからない」


「なんだそりゃ」


 そんなやり取りをしている内に、今回死守するべきマザー補助汎用機の所まで来ていた。


 『識別反応確認……これは! 四精霊帝士が全員出動しています。みなさん、要注意です! 必ず勝ちましょう!』


 ロザリーの激励が響く。


 ――四精霊帝士が全員出ていると言う事は、今回の内容を知っていると言う事か。って事は、敵の狙いはやはりマザーコンピューターを潰す事にあるのか?

 アブソリュートはそう推測する。

 今回のウイルスの数はやけに多い。セキュリティー部隊達も必死だ。


「よし、いっちょやってやろうぜ!」


 シャナガの掛け声と共に一行は四精霊帝士エレメンタル・レイドに向って進み始めた。

 ウイルスはセキュリティー部隊達に任せて、自分達は四精霊帝士エレメンタル・レイドを探す事にした。自分達が今最高の力を持っていると自負しているからだ。

 そして、ついに敵を発見する。

 巨大で先鋭した地から生える構造体で幾重ものセキュリティー部隊を串刺しにしている、地のベルーガ。

 風の刃で全てをなぎ払っている、風のラルベル。

 高圧の水弾で標的を貫通、抹殺している、水のマーランド。

 アブソリュート、ローゼンシア、シャナガは合図と同時にそれぞれの相手をするべき敵へと向って直進する。

 アブソリュートはベルーガを担当する事になった。戦闘経験ではシャナガに部があるものの、ドラグーンの威力は絶大だ。形勢逆転だって在り得る。

 シャナガの相手はラルベル。その戦闘経験を生かして、敵に苦戦を強れる事は確実。元四精霊帝士の力は健在だ。

 ローゼンシアの相手はマーランド。水の防御壁を破るにはヘリオン・チェレスタの攻撃が有効と見ての判断だ。


「05、テメー一人で大丈夫かよ、ああ?」


 ベルーガは余裕の笑みを浮かべながら、アブソリュートを見る。

「キース、真の四精霊帝士の力、見せてやろう」


「テメーらが偽者なんだよ。やれるもんならやってみな、ヒヨッコが」


 シャナガがラルベルに言葉を返す。


 「女同士の戦い、文句なし! 私の方が強いんだから!」

 ローゼンシアは勢いついた体制で、マーランドにヘリオン・チェレスタを放って攻撃している。

 その攻撃を、マーランドは水の壁を駆使して防御している。


 「命知らずが、四精霊帝士エレメンタル・レイド・水のマーランドの力見せてやろう」


 予想していた通り、ベルーガは最強だ。アブソリュートの進化した剣をもはや知りつくし、服すら切り刻ませてくれない。

 それ所か、ベルーガの変幻自在の接近戦用のアクティブ・デバイス……腕に結晶を纏わせた刃……これには悩まされる。

 奴は遠距離の攻撃方法も持っている為、簡単には離れる事はできない。なぜなら、スピードの方も敵の方が格上で、直ぐに間合いを詰められ、危険であるからだ。

 一方、ラルベルとシャナガは互角の戦いをしていた。戦闘経験の差をラルベルは風の剣の力の性能で埋めている。風を自由に操り、シャナガを苦しませる。

 マーランドとローゼンシアの戦いは圧倒的にローゼンシアに部があった。今ローゼンシアのヘリオン・チェレスタの数は十五機。同質のアクティブ・デバイスを持つミラードの半分の力を持っていると言っても過言ではない。

 ローゼンシアはマーランドを圧倒し、十五機ものヘリオン・チェレスタのレーザーがマーランドに直撃する。

 しかし、マーランドには一切効いてはいなかった。例の青いゲートからガークが出てきいたのだ。防御壁を練成し、ローゼンシアの攻撃を無力化する。


 「“申し子”よ。流石は適合者」


 ガークはローゼンシアの攻撃を受け流し、満足そうにほくそ笑む。


 「ベルーガ、この銀色が“申し子”なのだな?」


 ガークはベルーガに尋ねる。


 「間違いありませんぜ! 銀色がクリーンヒッツッ! キャッホーですZE」


 ベルーガは喜び叫びながら、軽々とアブソリュートの攻撃を交わしていた。

 目の前の禍々しい老人にローゼンシアは狼狽する。


「なによ、この老人!」


 彼女は気味の悪そうな老人に向って毒を吐く。


 「ロゼ! そいつがガークだ。逃げろ!」


 アブソリュートはローゼンシアに近寄ろうとする。しかし、ベルーガがそれをさせてくれない。気を抜けば守らなければならない自分が、逆にやられてしまう。

――ロゼは僕が守る!

 アブソリュートは必死だ。なんとかベルーガを放そうと剣を巧みに操る。しかし、相手が悪い。カスる気配すらみせない。

 そこに助け舟が現れた。ミラードである。


 「ガーク、貴様をここで倒す!」


 ミラードはそう言い、ソレイユを召還する。


 「娘はもらった、貴様らはもう消えろ。プログラム作成に3年はかかった、ワシの特別なアタックプログラムを見せてやろう」


 と、同時にガーク全身が光りだす。


 「いけない! 核爆熱アトミック・フラッシュ!」


 ミラードの叫びとも呼べる掛け声が飛ぶ。


 「あぶねッ!」


 「……え?」


 シャナガの影がとっさにアブソリュートを被った。

と同時に、辺り一面は灼熱の海と化し、焦土と化した。

 ローゼンシア、ミラードはアクティブ・デバイスから何重ものバリアを練成し直撃を免れた。シャナガはアブソリュートを庇い重症を負っている。

 直撃していないといっても威力は絶大で、アブソリュート以外全員が深い傷を負い、身動きができない。中でも近距離で受けたローゼンシアは気絶までしている。


 「貴様……禁忌のネットプログラムを使うとは!」


 ミラードが恨めしい声を出して言う。


 「だから、貴様らはそこで這い蹲っている。」

 ガークは余裕の笑みを溢して、ローゼンシアに四角いガラス張りのような構造体を練成して囲い、宙に浮かせた。

 四精霊帝士達はガークが核爆熱を使う瞬時に青いゲートを発生させて撤退しているようだった。青いゲートが3つ確認した、と同時に瞬時に消えた。


 「“申し子”は貰った!」


  ガークは叫ぶ。


 「貴様の狙いは一体なんだ! やはり……」

 ミラードは、よろけながらも立ち上がって、ガークに訴える。


 「貴様でも、もう感ずいているだろう」

 ガークはミラードを見下して言葉を発する。

 ミラードはフォレスタの名を聞いた時から、ガークの陰謀の推測は立っていた。その推測が現実になろうとしている。自分の配慮の無さに愕然とした。


 「アビスが崩壊すると、現実の世界ではどうなるのだろうな? 人類全員がワシの余興に付き合ってもらうぞ。その後、ワシの都合のいいように新アビスを誕生させよう」


 ガークは見得を切り、不気味にほくそ笑んだ。

 それがガークだった。自分の欲求を満たす為なら、どんな事でもやってのける。ただ、遊び心で、ネット世界を崩壊させようとしている。


 「無限は零と同意なのだよ、マナゲスの法則では。永久と言う名の情報と、もともと無い情報。実は、∞を表現できないから0と言う形をとったに過ぎないのだ。∞……0と言う事なのだよ、全て。無限の情報を発し、0へと棄却させる。0と1は引き合う。無限の情報を発し0へと棄却させる剣をもつ者と修復能力を備えた、誕生を司る1と言う名の“申し子”は引き合った。……ワシは正しかったのだ」


 「貴様……その為だけに、アブソリュートを!」

 ミラードは激昂する。


 「左様。こちらの手からアブソリュートを離されたのは予想外だったがな……まぁ、お陰で“申し子”を見つける事が出来た」


 そうしている内に、ガークは楕円形の青いゲートを召還する。

――いけない、奴を逃がしては!

 全員がそう思っている時、上空からいくつもの弾丸がガークを襲う。

 自動的にガークのバリアは練成され、サイファのスカイリッパーの攻撃を簡単に防いだ。


 「……ぎりぎりセーフか?」


 「ロゼ! 貴様、ロゼに何する気でいやがる!」


 サイファとアスカが上空からワープ転送して現れた。

 サイファは長い鎖状のシルバーファングにプログラムを流し、青いゲートを破壊した。


 「これで逃げられないぜ。ガーク、貴様をいつ討てるか……ずっと待っていた!」


 サイファは喜び勇み、ガークに向って接近する。


 「だから、貴様らはヒヨッコなのだ。ゲート出したのは唯の余興よ。……周りを見ろ」

 そう言い、ガークとローゼンシアは姿を消した。

 それは、ログアウトした事を意味する。核爆熱で全てを焼き払い、マザー補助汎用機モノリスが破壊されたのだ。


「畜生、なんてこった!」


 サイファは悔しがる。


 「ロゼ! クソッ!」


 アスカも妹を奪われ、歯噛みしながら悔しがった。


 全員、インテリゲンチアのミラードの部屋にいる。アスカとサイファもだ。


 「私の失策だ。奴の陰謀は絶対阻止しなければならない!」


 ミラードは落ち込みながらも威厳を込めて言葉を放つ。


 「シャナガさん、大丈夫ですかね……」


 アブソリュートの隣にいたロザリーは心配そうに呟く。

アブソリュートもシャナガの事を考えていた。

 シャナガは医務室に運ばれたのだ。シャナガだけではない、セキュリティー部隊の大半が各熱爆で病院送りとなってしまった。シャナガはアブソリュートを庇い、核爆熱を炎の槍だけで防いだ結果、なんとか一命を取り留める。これは、シャナガ独自のアクティブ・デバイスの防御力が強かった事を意味する。


 「でも奴等、ウェントールミリタリーインダストリーの敷地内にいる。インテリゲンチアでは手を出せないぜ……国を挙げて、戦争でもやらかすのか?」

 相変わらず言葉使いの悪いアスカはミラードの発言に異議を唱えた。


 「……そう、インテリゲンチアでは手はだせない。でも、君達がいる」


 そう言い、ミラードはそれぞれの顔ぶれを見ている。


 「僕専用の秘密裏で構成された特殊部隊とハッカー……これならどう?」


 一堂に笑みが現れた。


 「アリュー、傷の方は大丈夫? 行けそうかい?」


 ミラードは言う。


 「ええ、全然平気です。僕が一番距離が遠かったし、シャナガが庇ってくれましたから」


 アブソリュートは既に行く覚悟でいる。

 続けて、ミラードはサイファに向って言葉を発する。


「サイファ、君にも協力してもらっていいかい?」


 ミラードはサイファに協力を要請する。

 「当たり前だ。親父の敵は俺が獲る」


 「流石、ラザーズの息子だ」


 そうミラードは言い残した。

 サイファはアブソリュートを見ていた。


 「僕に……何か?」


 アブソリュートは不思議そうにサイファを見る。


 「……いや、なにも」


 サイファはそう答える。

 なぜだろうか、アブソリュートには何かサイファに違和感があった。

 ――自分と同じような声、自分と同じ赤い髪……なぜだろうとても懐かしく思える。アブソリュートの“もう一つの魂”が揺さぶられ、何か語っているように感じた。


 「奴の狙いがマザーコンピューターなら、マザーコンピューターの前で待ち伏せすると言う手もあるんじゃね?」


 アスカは不思議そうにそう呟いた。


 「それも考えた。……ガークはマザーコンピューターを狙いに必ずインテリゲンチア内に瞬時に移動する方法を取ってくる。繋がっているとすれば、イオシスのマザー補助汎用機……奴はそこにいる。こっちも強力なファイヤーウォールでガークの突破用に対処してるが、5時間はもたせる。回線切断の用意もしているが、時間がかかりそうだ。その前にローゼンシアを救出するんだ!」


 続けてミラードは言葉を発する。


 「セキュリティー部隊もいるけど、二十隊くらいしか中には入れない。ならば君達より戦力は劣る事になる。」


 「四精霊帝士もマザーコンピューター前にやって来たら、状況はヤバイ。イオシスのマザー汎用機モノリスに向うべきだ。セキュリティー部隊も入ってごちゃごちゃするよりはよっぽどマシ。こちらと四精霊帝士エレメンタル・レイドなり始末する。ウェントールミリタリーインダストリーへ向ける部隊を分けるのは論外だ」

 そうサイファはハッキリと言った。

――それに多分、奴が時間稼ぎをしてくれる。

 サイファはとある人物の姿を連想し、思い出している。



 『それはできない。私にはまだやらなければならない事があるからだ』



 その言葉をサイファは信じていた。


 「そうと決まれば、時間が惜しい。みんな、ただちにログインしてくれ! 奴の陰謀が成功してしまえば被害は甚大だ……必ず阻止してくれ」


 「了解!」


 アブソリュート、アスカ、ロザリー、サイファはログインシステムへと向った。


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