表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
銀色のローゼンシア  作者: 鎮黒斎
18/22

エスメラルダ

エスメラルダ


 「あんたの他のアクティブ・デバイスって自分で作ったのか?」


 アスカはサイファに尋ねている。



 「スカイリッパーだけな。こいつは俺が作った」


 「……あんたにはいつも驚かされるよ、良くやるわ」


  アスカは半分呆れ気味にサイファを賞した。


 「シャドーエッジは受け継がれた物で俺独自の物じゃない。俺のアクティブ・デバイスはシルバーファングだ」


 サイファが答える。


 「複数のアクティブ・デバイスを持つなんて可能なのかよ」


 「だから、俺がいるだろ? ……と、今日がウェントールミリタリーインダストリーのデータベースを狙う日だ。良く我慢したな」

 「やっとかよ! 随分待ったぞ」

 

 アスカは少しご機嫌が斜めだった。だがそれも今日限り。今日はウェントールミリタリーインダストリーのデータベースを狙う日で、何か物凄い事を知るきっかけになるかもしれない日なのだ。


 「まぁ、そう言うな。金もバッチリ溜まったし一丁行ってやるか」


 「おう! 今行くのか?」


 「阿呆、夜中に決まってるだろうが。今ゆっくり寝とけよ。仕事する時しんどくなるからな」


 夜中の二時。サイファはウェントールミリタリーインダストリーのファイヤーウォールを破り、中に侵入する。


 「相変わらず、随分鮮やかだな。俺達が潜り込むのでさえ、内部からの緩め役が必要だったのに」


 「腕が違うんだよ。つか、格が違うんだな。お前ら、ただのハッカーと一緒にするな」


 「へいへい、“カウント・ゼロ”様」


 アスカは冗談事のようにカウント・ゼロと言う名を強調した口調でサイファを拝んでいた。

 サイファの行動は早い。サイファの作ったオリジナルの検索するプログラムの数々で早くもウェントールミリタリーインダストリーのデータベースに入る事が出来た。


 「……さて、俺の知りたいのは“アブソリュート開発計画”だ。」


 「それなら知ってるぜ、アリューが誕生した事だろ」


 「ああ、そっか。お前達の所にいるのかソイツは。俺の知りたいのはもっと奥だ」


 そう言い、サイファは素早いキーボード捌きで情報の検索にあたる。空間ウインドウには文字がズラーと物凄いスピードで流れていった。


 「お、なかなかのプロテクトを仕掛けてるな。だがまだまだ」

 サイファにとって、データを守るプロテクトは意味が無いのと同じだ。いくつかのプロテクトが掛かっているがサイファには関係なかった。


 「あった!」


 サイファは検索し終わり、どうやらお目当ての情報を見つけたらしい。


「その事については、私から説明しよう。もっと良くわかると思うよ。“カウント・ゼロ”」


 どこからともなく声がする。

 サイファとアスカは身構えた。

 

 「誰だ!」


 サイファは四精霊帝士エレメンタル・レイドに感ずかれたかと焦っている。折角情報が目の前にあるのに。


 「私の名前はエスメラルダ=ラビュー=レミング。カウント・ゼロ、いつか君がここを狙ってくると思い、ずっとウェントールミリタリーインダストリーのファイヤーウォールを外部から監視していた」


 「なんだって!」


 サイファとアスカは素っ頓狂な声を上げた。

 エスメラルダ=ラビュー=レミング……“アブソリュート開発”を成功後、即座に失踪。

 シャナガと結託し、アブソリュートを逃がすのに一役買った人物である。

 サイファもその事は既に知っているようだった。

 ――それが何故ここに?


 「カウント・ゼロ……君に直接話がしたかったのだ。詫びもかねて」


 「詫びだと? じゃぁ……あの情報は本当だったのか!」


 「やはり、知っていたのか……本当に済まない」


 アスカにはなんの事だかサッパリわからず、二人の言葉を聞くだけだった。


 「ガーク・ゾロスはネット世界での魂の加工に成功した。」


 「それに俺の親父の魂を使ったって言うんだな!」

 ――魂の加工ってなんだ? 父親? サイファの?

 アスカは未だ全くわからずにいる。ただ、サイファの父親が関係している話だと言う事はわかった。


 「ガークは苦労の末、君達一家を拉致するのに成功し、Wウェントールミリタリーインダストリーのマザー補助汎用機モノリスがある前で、全員殺した。君の母親は反抗して現実世界で殺されてしまっていた」


――俺は丁度、出かけてたからな。

サイファは過去の拉致事件の真相を調べる為に奔走していたのだ。そして、その真相がN・M・Iにある事まで突き止める事に成功した。

 エスメラルダは続けて言う。


 「最高と称すアークブレインの魂の加工。その加工に成功し、私に託された」

 サイファは怒りに任せ、サブマシンガン・スカイリッパーを召還し、エスメラルダに向ける。


 「いつ撃ってもいい。覚悟はできている。だが、話は全部聞いてもらいたい」


 そう言いエスメラルダは目を瞑り語り掛けてきた。


 「私はそれがなんであるのかわからずにいた。ただ、“アブソリュート開発計画”の責任者として任命されただけで、アブソリュートの体の開発で手一杯だったからだ」


 「その魂を妹の魂と一緒にマザーに読み込ませたな! フォレスタは消えた!」


 「……済まない、全ては後から知った事だった。後はウインドウに書いてある通りだ」


 サイファは空間ウインドウに目を向ける。

 アスカもサイファからコピーしたデータを空間ウインドウで見る。



“アブソリュート開発計画”

ウェントールミリタリーインダストリーのガーク・ゾロスが提唱している理論を成立させる為、非合法な実験を始める。

(理由はウェントールミリタリーインダストリーによって全て消去されている…娘フォレスタを読み込ませる為とだけ残っている)

一度魂となる人物をネットの世界にログイン、その人格は一時ネットのマザーコンピューターのメモリに記録される。その後ネット空間でその実体を殺し、この工程を魂の加工と言う。現実世界で魂が記憶している遺伝子を改ざん・培養。

マザーコンピューターのメモリに残された彼のパーソナルと融合させ(魂の加工)、“アプソリュート”として生まれ変わる。他の人間でも試してみたが、成功の気配すら見せなかった。

新しく作り変えられた為、生前の記憶は無い。

理論では、メモリに残存された旧人格ゴーストと融合を果した時点で、他に類を見ない程ネット空間に最適化された存在になると言う。五体目でやっと完成の日を見る。マナゲスの法則を無視し、移動・転送する事が可能と言われている。

  生前はインテリゲンチア所属“アークブレイン”・ラザーズ=ミロード。



 「ラザーズ……ミロード! それにアークブレインだって!」


 アスカは驚いた。


――ミロードと名のついている人物……サイファ=ミロード。


偶然の一致とは思えない。それは、サイファが“親父”と発言した所からもわかる。だとすると、その“親父”に該当する人物が……。

驚く事は色々あった。ミラードの他にアークブレインがいた事。他にも驚く事は沢山ある。

唯一知りたかった情報も手に入ってしまった。記憶を無くしたアブソリュート。魂の加工とは、ネット世界に残存しているサイファの父親の旧人格ゴーストを融合させ、アブソリュートとして誕生させる内容の事だったのだ。

全てが繋がった。アスカはアブソリュートの正体を見つけたのだ。

 だが反面、サイファはまだ納得していない。


 「フォレスタの魂はどこへ行った?」


 サイファの怒りは頂点に達している。

今にもスカイリッパーの引き金を引くところだ。


 「……わからない。ガークのみぞ知る。だが、予想は付く」


 サイファは口を開いた。


 「マ……」


 『……そこまでだ』


 三人は身構えた。エスメラルダ、サイファ、アスカの他に声がしたからだ。

 ――その声の中に、アスカの良く知る人物がいた。風のラルベルである。

 四精霊帝士エレメンタル・レイドが揃っていた。

「チッ、ここまできて感ずかれるとはな。やっぱウェントールミリタリーインダストリーのセキュリティーは格が違う」

 サイファはそう言い残し、早速戦闘態勢に入る。


 「私も手伝おう」


 エスメラルダも戦闘に参加する気でいるらしい。


 「お前の助けなどいらない。アスカいくぞ!」


 と、サイファはエスメラルダの申し出を断った。

「おう、風のラルベルは俺に任せろ!」


「バカ言え、マーランドもお前が相手すんだよ!」


「なんだって!」


 アスカは冗談じゃないと言うような口調で大声を上げる。


「二人も相手できる訳ねーだろ!」


 悲鳴のような声をあげるアスカに、サイファは言う。


「俺がベルーガを倒すまで持ち堪えろ」


 そう言い、サイファはベルーガに向かって突進して行った。

 ――無理難題を平気で押し付ける奴だ。

 アスカは戦局が良くないので、プログラムの防壁を幾つか練成し、ラングルードを身構え防御に徹する事にした。

 風のラルベルと水のマーランド、二人の攻撃は流石に堪えた。

 臨機応変に防御に徹するアスカ。


「貴様、やるようになったな。だが、防御に徹しては何の意味も無いぞ」


 アスカの成長ぶりにまたもや驚いているラルベル。自分の攻撃が全く効いていない事に気がつく。


「私が水弾を撃っている、攻撃などさせるものか」


 マーランドは水弾を撃ち、後方支援している。

 ――マズイっつーの!

 アスカの防御に徹した行動は崩れようとしていた。

 その時、横からエスメラルダが姿を現した。


「いでよ、ファルシオン」


 湾曲した剣を召還し、エスメラルダはそれを回転させる。するとその剣の数は二十本以上に達していた。


「チッ、テレキネシス使いか!」


 ラルベルは憤慨している。


「マーランド、水の壁であの邪魔な剣をガードしてくれ!」


「わかっている!」


 マーランドも焦っているようだった。声に動揺が混じっている。

 ロングレンジで戦うスタイルをしたテレキネシス使いとはそれ程厄介な相手なのだ。


 ベルーガとサイファは戦闘を始めていた。

 サイファはベルーガのスピードに付いて来ている。


 「ワオ! お前ハエーぜ。俺について来れる奴がいるとはよ。ギャハハハハハ、お前、最・高!」


 ベルーガと同じスピードを誇るサイファであるが、攻撃がまるで当たっていない。

 ――直感能力の強化と脊髄神経の反射スピードアップ……やけに当たる感だけで生きてるような奴……しかも反射神経も半端じゃない。そんな奴に、どうやって勝てつーんだよ!

 サイファは憤慨していた。そう、ベルーガサイファを観察し、その動作を直感だけで攻撃を交わしていたのだ。

 サブマシンガン“スカイリッパー”から遠距離攻撃をし、中距離に持ち込んで両腕の鎖の“シルバーファング”で接近戦に持ち込み、黒いマフラーのようなアクティブ・デバイス“シャドーエッジ”を使い姿を消しつつ、同時に相手を切り裂く……と言う戦法。

 だが、例の狂った踊りと素早い宙返りで全て交わされてしまうのだ。


「アスカ、逃げるぞ。埒があかねぇ! そこのエスメラルダっておっさんに任せるんだ」


 どうしよもない形勢にサイファは逃げる決断をした。折角手に入ったデータを持ち帰れなくては意味が無いからだ。


「ありがとう、私を使ってくれて」


 エスメラルダは礼を言い、ファルシオンを四精霊帝士エレメンタル・レイドに向かって解き放った。

 ベルーガ以外、ラルベルもマーランドもこの攻撃には苦戦していた。

 何十本もある湾曲した剣が、複数同時に回転して攻撃してきたり追尾したりするのだ。防ぐ方も堪らない。

 アスカは言う。


「あのオッサンも一緒に逃げるように言おうぜ。あのおっさん見てると、ここで玉砕する気でいるんじゃねーかって思っちまう」


「あの形勢見てわかんねーのかよ。圧倒的にあのおっさんの方が優勢だろうが!」


 サイファはアスカの言葉をまるで聞いてない。


「ベルーガ以外な! アイツは絶対無理だって! 逃げるのに誘うべきだ!」


「……うっせーな、わかったよ!」


 サイファは口うるさいアスカの説得に応じた。


「おい、エスメラルダ! アンタも逃げるぞ!」


「……私を許してくれるのか?」


「まだ決めてねぇ! ほら、行くぞ!」


 三人は四精霊帝士エレメンタル・レイドの攻撃を避けながら、逃げる事にした。

 三人は、ウェントールミリタリーインダストリーのセキュリティー部隊やウイルスを退き、先程サイファが穴を開けたファイヤーウォール前に来た。


「エスメラルダ、現実世界の転送先をこっちに持って来い。出来るだろ、色々聞きたい事がある!」


 サイファは乱暴に言う。


「それはできない。私にはまだやらなければならない事があるからだ」

エスメラルダは申し訳無さそうに、サイファの誘いを断った。


「逃げる気か!」


「本当に済まない……ただ、君の探し物はマザーコンピューター内にある。ガークがここのマザー補助汎用機を使って流した。後は自分で確かめてくれ」


「次会った時は、私を撃ってくれてかまわない」

と言い残し、エスメラルダはログアウトした。


「……やっぱりそう言う事かよ。クソッ、なんだってんだ!」


 サイファは訳がわからず怒りの声を漏らす。


「……サイファ、今はログアウトしようぜ」


 アスカの掛け声と同時にサイファとアスカはログアウトするのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ