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銀色のローゼンシア  作者: 鎮黒斎
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オペレーター・ロザリー

オペレーター・ロザリー


 ラルベルのマザー補助汎用機破壊活動から数週間が経つ。ここ数週間、各所で破壊活動は活発化していた。


 「何故ロザリーはオペレーターになろうと思ったの?」


 ここはインテリゲンチアのロザリーの部屋。ローゼンシアは遊びに来ていた。


 「え? 訳ですか?」


 ロザリーは少し困った表情で言う。


 「……兄が国連で活動するセキュリティー部隊“ロザリオ”に属していたんですけど、亡くなってしまったんですよ……」


 「あ! ごめんね。もういいよ」


 ローゼンシアは申し訳無さそうに弁解した。


 「いえ、いいんです。これは私のこれからの決意のようなモノですから。」

 ロザリーは続けて語る。


 「ウェントールミリタリーインダストリーのテロリストじゃないですけど、最近サイバーテロなんてのが多いじゃないですか、兄はそれを阻止する為に戦死して……」


 ロザリーの表情が曇る。


 「で、私、本当はセキュリティー部隊に配属したかったんですけど適性が全くなくて……で、部隊の皆さんをサポートするオペレーターになろうと思い、一生懸命勉強してみたら。ほら、インテリゲンチアの試験に合格したじゃないですか! 私ビックリしちゃって」


 両手を合わせて、嬉しそうにロザリーは語っていた。


 「へぇ、ロザリーは偉いね。私なんて頭悪いから途中で挫折するよ。はぁ、尊敬するわ」


 「尊敬するのはこちらの方ですよ。インテリゲンチアのセキュリティー部隊の適正って審査が物凄く高くて、大抵入れません。ほら、計算能力が高い人程、ネット世界に適合する……なんて話も聞くでしょ。ロゼさんは頭が良い証拠です」


 「そうなのかなぁ……なんか少し違う気もするんだけどねぇ。私育ち悪いし」

 ――それにミラードの特例で入れてもらったようなモンなのよねぇ……。


 「……アリューさんとは仲が宜しいんですか?」


 「……は?」


 イキナリのロザリーの質問にローゼンシアは呆気にとられる。


 「なんだか、ここ数日サポートしていましたけど、なんだかお二人仲が良さそうなんで……恋人さんですか?」


「こ、恋……!?」


 ローゼンシアはその発言に顔を真っ赤にする。


「あのね、ロザリー。アリューは何も知らない弟の様な存在でね、放って置けない私の性格の所為であって、そう言うんであって、だから、あの、別に恋人とかそう言うのじゃないの!」


「本当ですか?」


「本当です!」


 そんな女の子同士の会話のやり取りが行われていた。

 が、そんなのもつかの間。呼び出しの警報が鳴る。


 「今回で何回目? ちょっとは休ませてよね! 行こ、ロザリー」


 「はい!」

 二人はミラードのいる部屋へと向かった。


 「みんな度々済まないね」

 ミラードは話す。


 「今回マザー補助汎用機の防衛に3回失敗した。今回はこそ失敗できない。敵はまだファイヤーウォールの解除に手間取っているようだから、今回は間に合う! 直ぐに向かってくれ! 今後から国連のセキュリティー部隊“ロザリオ”の協力を仰いだから、識別信号で確認してね。敵じゃないから」


 「了解!」


四人はネットの世界へとログインした。

 ロザリーのサポートで今回のマザー補助汎用機の前へワープ転送される。

 

『敵はまたヘルハウンドを多数保持しています。気をつけてください』


 今回の敵の発見はサポート無しで発見できた。

 が、残酷な光景が目に映る。

 地面から突き出た巨大な先鋭の構造体で、インテリゲンチアのセキュリティー部隊やロザリリオのセキュリティー部隊の隊員が磔にされていた。息絶え消滅する者、瀕死の重傷を負った者が多数いる。

 まさに地獄絵図の光景、ローゼンシアは思わず目を背けた。

 ――地のベルーガ。奴とは一番やり遭いたくなかったぜ。

 シャナガは舌打ちする。


「ヒャッホォーッ! 雑魚どもがまた蟻のように出てきたぜ。潰してやろうか、オイ」


 そこにはホウキ頭をした金髪で細身の男がいた。


「潰されるのはテメーだ!」


 アスカが言う。

 シャナガもローゼンシアもアブソリュートも同意見だった。



 「ウイルスの相手と負傷者の救助、よろしく」

 地のベルーガ。相手はアブソリュートがする事になった。


 ……だが、奴は素早い。訓練したアブソリュートでさえ追いつくのがやっとであった。


「聞いてるぜ、テメーが05かよ。オセーよ、お前」


 ベルーガは地面に手を突け、先鋭した無数の構造体が、猛烈な勢いで地面から練成させる。

 アブソリュートは黒い剣を使い、それを即座に消去した。


 「ワオッ、スッゲー! 一瞬で消えちまったぜ。流石、“カオス・オブ・ドラグーン”」


 「カオス……なんだって?」

 

 アブソリュートは馴れない言葉に疑問の声を発した。自分の何かをこいつは知っている。これは興味と言う行為に近い。アブソリュートの心は言っている “少しでも聞き出すべきだと”。


 「テメーのアクティブ・デバイスの名前だよ。“アークファクト”・“カオス・オブ・ドラグーン”ってんだ。……おっと、やべやべ。俺ってお喋りぃ♪」

 ――この黒い剣の名はカオス・オブ・ドラグーンと言うのか。


 「僕の事を知っているんだな?」


 「これ以上は教えな~いよ~♪」


 「チッ!」


 これ以上は聞けそうにないので、アブソリュートは聞きだすのを止め、完全に戦闘に専念する事にした。

 しかし、敵は踊り、全身を脱力させながらも起立し「トーントントン…」と狂ったかのような動きをする上に素早い。

 どうやってコイツを仕留めるべきか……アブソリュートは思案していた。

 シャナガがウイルスを相手にしながら叱咤する。


 「アリュー、無理すんな! こいつはエレメンタルレイド最強の人間。無理に倒そうとすると痛い目を見るぞ! 俺達の援護が出来るようになるまで持ち堪えろよ!」


 「うっせーんだよ、キース! 楽しい戦いの邪魔をするんじゃねぇ!」


 ベルーガはシャナガに怒気を放った。

 ――エレメンタルレイド最強の人間、地のベルーガ。

 どうりで強い筈だ。スピードと狂った動きで翻弄されっぱなしでいるアブソリュートであった。

 ウイルスの全消去に成功したローゼンシアも戦いの補助にあたる。

 が、ヘリオン・チェレスタの全機投入した攻撃も、いとも簡単交わされてしまった。

 狂ったように宙返りし、狂人のように踊りながら避ける。


 「やるじゃねーか、かわいこチャンよ!」


 到底、普通の人間には見えなかった。外見的にも戦闘センスも。

 しかも今回、アブソリュートの他、アスカ、シャナガ、ローゼンシアの四人もの攻撃も簡単に避けるベルーガ。

 ローゼンシアはアブソリュートに目配せした。

 ――何か僕に伝えようとしている。

 アブソリュートは何であるか、頭をフルに回転させる。

一瞬敵に隙が出来た。

 ヘリオン・チェレスタで攻撃した際のベルーガの着地地点の把握に成功したのだ。ローゼンシアとアブソリュートの無言の意思疎通は成功した。

 アブソリュートはカオス・オブ・ドラグーンでベルーガの腕を斬り落とそうとする。

 ドラグーンはベルーガの左腕を捕えた。が、ベルーガは消滅していない。

 なんと、ベルーガは結晶化させた鋭利な右手の手刃で左腕を切り落としていたのだ。切り落とした左腕は霧散と消滅する。


 「油断しちまったぜ。アブネー、アブネー……消えちまうとこだった」

 ――左腕を自分で切断するなんて……なんて奴だ。

 そしてベルーガは、結晶化された右手に高温を帯びさせ、傷口を焼いて出血を抑えている。

アブソリュートはベルーガが行う全ての行為に恐怖のようなモノを感じ始めていた。


 「イテー、イテー、でもちょっと、カ・イ・カ・ンってか、ギャハハハハハ!」

 ベルーガは狂ったように笑い叫んでいた。


 「左腕が無くちゃバランス悪くて、あんま楽しく遊べねーよな。ま、いっか、ガーク様の使命は果した。左腕の再生も後でしてもらうとして……じゃな、お前ら。また遊ぼうぜ♪」


 ベルーガはログアウトする。

 それはマザー補助汎用機の機能停止を意味していた。

 次に伝令が入る。


 『みなさん、ワープ転送してください。また戦闘です。今度は水のマーランドが指揮する部隊と戦闘する事になります。転送先を送りますね』

――……今度はやらせはしない

 そうアブソリュートは心に誓った。


 水のマーランド率いるウイルス・ヘルハウンドの軍勢。

今度は死守するべきだとミラードも思ったのだろう。五部隊、今回戦闘に当てている。

 ――マーランドを討つ!

 アブソリュートは独断専行に近い行動で、水のマーランドを探していた。


 『マーランド確認。RTKK・101・402地点です』


 欲しかった情報が即時に手に入った。アブソリュートは独断専行でマーランド迎撃に当たる。


 『あ、アリューさん独断専行はいけません!』


 ロザリーは叫ぶ。


 『え? アリュー! 何勝手な事してるのよ!』

 ローゼンシアも大声でウインドウに叫ぶ。

が、アブソリュートには聞えてはいなかった。

 指定された座標地点、マーランドを発見する。


「チッ、05か。……ちょうどいい、貴様を連れ帰り洗脳する」


「今度はやらせはしない!」


 アブソリュートは猛烈な勢いで水のマーランドに襲いかかる。

 マーランドは油断していた。05の戦闘能力の大幅な上昇に。

 ――勝てる。

 アブソリュートはそう思った。

 だが、敵も四精霊帝士エレメンタル・レイドの一人。簡単にはやられない。

 アブソリュートの周辺に水の壁を何枚も練成し、マーランドは自分の姿を隠す攪乱戦法に出た。

 この戦法には、アブソリュートも手を焼いた。

 水の壁を消去しつつ、マーランドの姿を探る。

 一瞬、水の壁から高い水圧で作られたような水弾が襲ってきた。

 アブソリュートは即時にそれを振り払う事に成功する。何枚もの水の壁を消去しながら物凄いスピードでそこに向かう。

 ――敵はそこか!

 アブソリュートはその水弾を撃ってきた水の壁を切り裂き、マーランドを発見する。

――しまった! 補助汎用機の全破壊もシステム停止もしていない……ログアウトもできない!

マーランドは自分の失策に後悔した。

――捕らえた!

アブソリュートは勝利を確信する。

がしかし、強力なバリヤのような構造体でドラグーンの攻撃は弾かれてしまっていた。


「バカな、僕の攻撃が弾かれた!」


「ガーク様!」


 そこには楕円形の形をした青いゲートがあった。

そこから出てきた、白髪、白髭の……だが禍々しい形相をした老人がマーランドの背後にいる。

 建物の敷地内のログイン・ログアウトの法則を無視して老人はやって来たのだ。


「ガーク様、申し訳ありません!」


 ――ガーク……確か、この戦いの全ての元凶である奴の名前。ローゼンシア、アスカ、シャナガがこの戦いに参加しなければならなかった理由にもなった奴。

 ――こいつは敵だ!

 アブソリュートは速攻で老人に斬りかかった。

 が、またもやバリヤのような透明な構造体で防がれる。

 ――なんだこれは!

 アブソリュートは困惑した。



 『ガーク、随分探したぞ!』



 アブソリュートの音声ウインドウに声が響く。

 ――この声は。

ワープ転送で……なんとミラードが現れたのだった。


 「フン、ミラード=フェルスター…貴様など眼中にないわ」


 禍々しい形相の老人はミラードを見下していた。


 「世界最高の頭脳はこのワシだ。公認ではお前になっているが、ワシからすればお前などヒヨッコのような物。笑わせてくれる」


 「貴様、一体何を考えている!」


 「…なんの事だか」


 「しらばくれるな!」

 

ミラードは三十機ものソレイユを召還し、攻撃に当たらせた。

 

 ――物凄い数だ、ミラードが本気を出せばそんなに召還できるのか。

 アブソリュートは驚いていたが、もっと驚く事に、ガークと言う老人には一切攻撃が効いていない。


 「クッ、法則を捻じ曲げた構造体……その練成に成功していたのか」


 「マナゲスの法則を一時的に変える事など、ワシにとっては造作もない事」


 老人は不適な笑みを浮かべて言う。

 ――そうだ、あのバリアのような構造体は、昔自分を閉じ込めた鉄格子のような物と同等のプログラムが外部に展開している。今回のは透明な構造体のようだが。


 「しかし、ベルーガの事と言い、05。誕生仕立てで大した戦闘能力だ。こちらの手に入らなかったのが残念だよ」


 老人はクックックと笑みを溢していた。


 「ベルーガは四精霊帝士エレメンタル・レイド最強の戦士。右脳の強化と脊髄神経の反射スピードのアップで思考に問題が出たが、あれも直感能力のたわ物でね」


 老人はそう語り、姿を後ろに翻す。


 「この練成の弱点は身動き取れぬ事か。今回は失敗で良い。今お前を失う訳にはいかぬ。帰るぞ、マーランド。」


 「ハッ!」


 ガークとマーランドはログアウトの法則を無視し、青いゲートに入って行った。

 青いゲートは閉じられた。


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