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補習が入っているうちはまだ夏休みじゃない 4


 「…なに?」恐る恐るヒロちゃんに聞く。

「花火大会また4人でって言ってたんだけど、ユキが今日になって行くの止めようかなって言い出して。オレら3人で行ったらって言い出してんだけど」

 …やっぱり私のせいだ。

 どうしょう…もう1回ユキちゃんにラインで謝ろうかな…

 でもぶっちゃけずるい私としては、ユキちゃんが来なくて3人の方が、そして出来たらタダも用事が出来てヒロちゃんと二人の方がいいと思ってる。ずるくて嫌な感じだと充分感じながら、ヒロちゃんと二人きりだったらいいのにって思ってる

 

 けれど、それだったらヒロちゃんもきっと花火大会キャンセルするし…私と二人きりなんてヒロちゃんには意味ないもん。

 花火大会では勝手にユキちゃんに張り合って浴衣着てって、切ないリベンジをもくろんでいるのに、それさえかなわなくなったら、この夏休みどうやって過ごせばいいって言うんだろう。



 ヒロちゃんが続ける。「どう言ったらユキが思い直して一緒に行ってくれるかな」

 返事が出来ない。

 そしてその私をタダも見ている。ちょっと憐れんだような視線に見える。海からの帰りに、ユキちゃんにラインが返せてない事をタダには話したし、タダは結構男子のくせに細かい事を気付くタイプだから、私がヒロちゃんの事でユキちゃんに言ってしまった事のおおよそを感づいているのかもしれない。


 「なんか、」とヒロちゃん。「ユキをほったらかしてビーチバレーやったり、ほら…最初オレが恥ずかしがってユズと一緒にカニ捕りしてたりしたから、もうオレの事嫌になったのかもしれない…オレらがやっぱ、3人むかしからの友達で、ユキだけ仲間外れみたいな気がしたのかも…オレがもっと気を使ってやってたら…」

 

 それを私に言うんだな…

 どういうつもりなんだヒロちゃん。

 小さい時から知っている私だから、2回も振ったにも関わらず気を使ったりなんかしたら逆に良くないとでも思ってんの?ちょっとは気を使われたいですけど!

 その後もずっと普通に話すし、今回海も一緒に行ったし、海行く前も『妹みたいなもんだ』って言われたから、告ったとか振ったとかそんなの関係なく、ずっと親しい人間として私を位置づけてくれてるって事?

 それか、ユキちゃんの事で頭がいっぱいで私には何にも気を使えないの?バカじゃないの?

 一瞬でそんなグジャグジャに哀しい気持ちになったが、ユキちゃんが行かないと言い出したのは私に大きな原因があるので、あからさまに怒る事も出来ない。タダをチラッと見たら白眼をむいて見せた。

 白眼って…

 また私をバカにしてんのか!?

 腹立つ…

 ヒロちゃんに思い切り腹を立てられない分、タダに腹立つ。



 が、タダがヒロちゃんに静かに言った。

「ヒロトお前さ、そういうのも何でも、考えなくすぐ言っちゃうのがお前の良い所でもあるとは思うけどさ、お前の事ずっと好きなユズにそんな事聞かなくても良くねぇ?」

 ドクン!と胸が大きく鳴った。私が思ってる事を、まんまタダが言ってくれた感じ。

 あれ…でも今私の事『ユズ』って呼んでなかった?聞き間違い?


 「あ…」と言い淀むヒロちゃん。「悪い。なんかつい何も考えねえで…」

 マジか!!まさか本当にユキちゃんで頭がいっぱいだったとか…私に気を使えないくらいな感じでユキちゃんの事心配してたのか…

 くそ~~~っ!信じらんないマジバカなんじゃないの!と思ったが、急に私に対して申し訳なさそうな感を出して来たヒロちゃんについ言ってあげる。

「大丈夫だよ!…そいで、そんな事ないと思うよ。ビーチバレーしてるヒロちゃんの事、ユキちゃんメチャクチャ撮ってたしカッコいいってずっと言ってたから」

 まあ…私の方が撮ってたし、心の中で『カッコいい』と『好き』を大連発してたけど。

「そうか?…うん、まあそれは言われたけどな」とヒロちゃん。

「え?」

「『すごくカッコ良かった!』ってユキに言われたけどな」

「…あそう」淡々と答える私。

 


 でもだ。

 さらに言って上げる事にする。ヒロちゃんのいないところでユキちゃんにぶちまけた負い目があるからだ。そしてヒロちゃんにも優しい女の子に思われたい。

「ヒロちゃんがもう1回、『どうしても一緒に行きたいんだ』って強く言ったら絶対大丈夫だと思うよ。…ていうかそんな風に言って欲しいんじゃないかな。強く誘って欲しいんだよ…私だったら言って欲しいかも」

「そうか?」と、とたんに目をキラキラさせるヒロちゃん。「ちょっとライン…いややっぱ電話してみるわ」

ポケットを探るがスマホは2階の部屋らしく、ちょっと上がって来る、と言ってヒロちゃんはリビングを離れた。



 あ~~あ、すぐ電話しに言ったよ。せめて私が帰ってからしろっつうんだよね!

 でもどうしよう…やっぱり私のせいだ…帰ったらユキちゃんにもう一度ラインしてみようかな。けれど私がそんな事したら余計ユキちゃんは気にするかも。この際本気でユキちゃんを来させないようにしたい気もないわけではないが、さすがにそこまで嫌な事をする自分は嫌だ。ヒロちゃんにも嫌われてしまう。それが一番困る。私はもう何もしない方がいい。ヒロちゃんが『どうしても一緒に行きたい』っ言えばユキちゃんだって絶対また行く気になるに決まっているし。

 …あ~~~~…もう~~~…私も言われたいよ~~~…

 ヒロちゃんに『ユズとどうしても一緒に行きたい』って言われたい!

 


 そうもんもんとする私の隣にトサッとタダが座って来た。

 何?と思う。さっき白眼向いたよね?変な顔だった。あれ、クラスの女子の皆さんにも見せたら一挙に引きそう。…いや、逆に『そんな感じの事もするんだ!やだ可愛い~~!』みたいな事になって、余計キャーキャー言われるのかな。


 「海で撮ったヒロトの写真見せて」

タダがそう言うので、スマホを取り出し見せる。

「すげえじゃん」とタダ。「結構うまく撮れてる。てかほんとヒロトばっかだな!」

「オレンジの双子も撮ってるでしょ?」

「なぜオレンジビキニを撮ってオレを撮らない」

「いや、そんな事ないよ?こことか、ここに写り込んでる」

「人を心霊扱いすんな」

「女子の皆さんに、あんたの写真くれってすごい勢いで言われたよ」

「ふ~~ん」

「ふ~~んて」

「でもやってないよな?」

「だってちゃんと写ってんのなかったし」

「あってもやんなよ」

「うん。まあ、そういう事はしないよ」

 そんなむかしからの知り合いを女子に安くで売るような事…


 「ねえ、高くで売れるんじゃないかな。あんたの写真。…動画とかだったらもっと…」

「何言ってんのお前」

「いやあ…せっかくだからもったいないと思って」

「せっかくてなんだよ」

「あんたも女子から言われるでしょ?『写真ちょうだい』とかさ。どんな感じで対応してんの?」

「対応って」と苦笑するタダ。「あんまそこまでは言われない。断るってわかってるからじゃね?」

 まあ、そんな感じなのかな。むかしから女子に騒がれても浮ついた感じになる事もなかったし、だからと言って騒ぐ子たちを毛嫌いしてるわけでもなく普通に接してたよね。

 それにタダは可愛い女の子たちが周りにいる時より、ヒロちゃんといる時の方が断然嬉しそうな顔してた。

 なのにさっきはあまりに私を憐れんだのか、私の代わりにヒロちゃんにあんな事言ってくれた。ここはちゃんとお礼を言っといた方がいいんだろうな…




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