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3月28日『スクードの休日』

『王都冒険者ギルド』


日々様々な依頼が集まるその場所を、スクードは一人で訪れた。今日は珍しく鍛冶屋を休みにしたのだ。


鍛冶スキルを磨く為に、彼は刀を打つ練習を毎日行っているのだが、今日は不足した素材などを自分で取りに行こうとしていた。


「あ、スクードさん。おはようございますっ」

「おはよう。今日はこの依頼を受けたいんだが」


クエストボードと呼ばれる場所に貼られた紙を手に取り、スクードは受付へと向かった。そして、彼を見た途端に満面の笑みを浮かべた受付嬢の前に、先程取った紙を置く。


「マンドラゴラ狩りですか。危険度はAに指定されていますけど、スクードさんなら大丈夫ですよね」

「ああ、余裕だ」

「怪我はしないでくださいね」


それに対してこくりと頷き、スクードはギルドをあとにした。そんな彼を見送った受付嬢に、別の受付嬢達がニヤニヤしながら話し掛ける。


「リティアったら、彼と話している時、いっつも顔が赤くなってるわよねぇ」

「へっ!?そ、そうなんですか!?」

「それなのに彼、貴女から好意を寄せられていることに全く気付いていないものね。鈍いって恐ろしいわ」

「うぅ・・・」


受付嬢リティアが両手で顔を隠した。そう、彼女はスクードに惚れている。そのきっかけとなった出来事は、また近いうちに分かることであろう。












「「「ギギェアアアッ!!」」」


植物型の魔物であるマンドラゴラの群れが、甲高い叫び声を一斉にあげた。それを聞きながら、スクードは鬱陶しそうに表情を歪める。


「・・・うるさいぞ」


スクードが魔法を唱えた。マンドラゴラ達の真上に氷の槍が何本も出現し、槍先をマンドラゴラ達に向ける。


「アイスランス」


そう呟いた瞬間、槍が一斉に降り注ぎ、全てのマンドラゴラの胴体を貫く。恐らく血であろう緑色の液体が周囲に飛び散り、マンドラゴラは絶命した。


「ふむ、思ったより大量に素材が手に入りそうだ」


絶命したマンドラゴラ達から素材を剥ぎ取る。数分後、全てのマンドラゴラから素材を剥ぎ取り終えたスクードは、欠伸をしながらゆっくりと腰を上げた。


「・・・」


そこで感じた何者かの気配。

見られている・・・そう思った彼は、気付かれないように相手の居場所を探る。そして見つけた。


「何をしている」

「はっ、あ、あの、凄い人が居たもんで、こっそり覗き見してました」


気の弱そうな男が顔を出す。そんな彼にさほど興味を示すこと無く、スクードは素材を袋に入れて歩き始めた。


「待ってください!少し話を聞いてもいいですか?」

「面倒だ」

「少しだけでいいんで!なんなら歩きながらでも・・・」

「・・・」


無視して歩を進める。だが、許可などしていないのに男はスクードの隣に立ち、汗を拭きながら質問を開始した。


「あ、貴方は何者なんです?」

「・・・鍛冶屋だ」

「へえ、見えませんね。それじゃあ、さっき使ってた魔法は?」

「水属性の初歩魔法だ」

「あれが!?初歩魔法であれだけの威力なんて、貴方は一体・・・」

「・・・」


スクードは分かっていた。男が探りを入れている事を。そして、この男が一体何者なのかを。


「おい」

「は、はいっ」

「いつまで気弱な男を演じるつもりだ?お前の魔力、人間のものではないだろう?」

「・・・へぇ」


スクードの言葉を聞き、男の表情が一変する。


「よく気付いたな、流石は伝説の───」

「ウインドカッター」


殆ど呟きに等しかった。突然空気の流れが変わり、真空の刃が男の腕を切断する。


「ぎゃああっ!?」

「魔族か。数年ぶりに見たが、何故こんな場所に居る」

「ぐっ、ククク、何故だろうなぁ」


肉が切れる音が響く。男の肩から噴き出した血は、まるで雨のように周囲に降り注いだ。


「もう一度言うぞ。何故こんな場所に居る」

「言うわけねえだろうが!!」

「・・・そうか」


あまり興味が無い。

スクードが手元に魔力を集め、それを炎へと変えて男に放った。断末魔を上げる暇もなく、炎に呑まれた男は塵と化す。


「あまり調子に乗るなよ」


そう言い残し、スクードは再び歩き出した。








あの後、ギルドに依頼達成の報告を済ませ、自宅である鍛冶屋に戻ったスクードは、幾つか譲り受けたマンドラゴラの素材を使い、新たな武具の開発を始めた。


熱した玉鋼と、様々なマンドラゴラ素材を魔法の力で融合させる。そしてそれを槌で何度も叩く。やがて、慣れた手つきでそれを行うスクードの元に、買い物を済ませたエリィが戻ってきた。


「あ、おかえり兄さん」

「エリィか。悪いな、買い物を任せてしまって」

「あはは、別にいいよ」


エリィが持っていた袋をスクードが魔力で浮かせ、向こうにある机の上に置く。そして、しばらくして完成した剣をスクードは満足そうに掲げた。


「新武器だ」

「凄いね。今回はどんな効果があるの?」

「こうして剣に衝撃を与えるとだな・・・」


スクードが剣で軽く地面を叩く。次の瞬間、耳をつんざくような音が響き渡り、エリィは咄嗟に耳を塞いだ。もはや、音と言うよりは叫び声である。


「マンドラゴラがあの叫び声を上げる時、体内にある反響石を振動させているらしくてな。それを剣と融合させ、衝撃を与えたら剣が音を発する・・・それがこの剣だ」

「う、うるさくて戦闘に集中出来ないと思うっ!」

「む、確かにそうだな」


このままではエリィが可哀想だったので、スクードは魔力を剣に流し込み、強制的に音を停止させた。


「うぅ、耳がぁ・・・」

「すまん、これ程の音を発するとは思っていなかった」

「びっくりしたよ・・・」

「まあ、誰かが買っていくかもしれないし、これは置いておくか」


効果を知ってしまうと、恐らく誰も買わないとは思うが。強めの衝撃を与えないように注意しながら、スクードはマンドラゴラ剣を机の上に置いた。










▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼








「お、やっと着いたな。はっはっは、到着までに二週間もかかるとは」

「はあ、あんたが何回も居なくなるからでしょうが」

「まあまあ、無事に着いたんだからいいだろ」


太陽が丁度真上に差し掛かった時間帯、王都にとある二人組がやって来た。まるで子供のようにキョロキョロと周囲を見渡す金髪の青年と、その隣で呆れたような表情を浮かべている、橙色の髪をポニーテールにした少女。


二人は、とある目的があって王都を訪れていた。

それは────


「泥棒だぁ!!」

「む・・・?」


突然向こうから男が走って来るのが見え、青年は目を細めた。


「泥棒だってよ。馬鹿なことするやつは何処にでも居るもんだなぁ」

「そうね、それが人間なんだもの」

「とりあえず捕まえてやるか」

「それはあんたに任せるわ」

「おうよ」


ニヤリと笑い、青年が走ってくる男の進路を塞ぐかのように立ちはだかる。それに気付いた男は、青年を睨み付けながら怒鳴った。


「どきやがれクソガキ!!」

「どかせてみろ」

「邪魔だ─────あ?」


何が起きたのか理解出来ず、男が目を見開く。気が付けば、男は仰向けに倒れていたのだ。


「な、何を・・・」


騒ぎを聞きつけた野次馬が集まってくる。なんとか立ち上がってこの場から逃げようとしても、身体に力が入らない。


「お前なぁ、何を持ち去ろうとしたんだ?」

「そんなこと、お前には関係ないだろう・・・!」

「うん、関係ないし、あんまりどうでもいい」


そう言うと、突然青年が真剣な表情で倒れる男を見つめた。思わず男は言葉に詰まる。


「金を盗ったのか?」

「・・・」

「馬鹿だよ、お前は。世の中には金なんかより大切なもんがいくらでもあるだろうが」

「それは・・・一体何なんだ?」


少し泣きそうになっている男からの問いに、青年はにっと笑い、はっきりとこう言った。


「女性の胸だ」

「・・・は?」


野次馬達も、全員何言ってんだこいつと言わんばかりの表情を浮かべる。


「胸に決まってるだろうがこのバカタレが!!巨乳こそ至高、見るだけで幸せになれ、力が湧いてくるだろう・・・!?」

「お、おい、頭大丈夫か?」

「そう、何よりも素晴らしい財産は、大きなおっぱ────」


突然凄まじい轟音が響き渡った。

同時に青年が顔面から地面にめり込む。


「何を言ってんだこの馬鹿ッ!!」


ポニーテールの少女に殴られたのだ。しかし、青年はすぐに地面から顔を出す。


「はっはっは、貧乳だから怒ってんのか?」

「あ?」


周囲の温度が一気に低下した。野次馬達は皆ぶるぶると震え、少しずつ二人から離れていく。


「貧乳でも、別にいいんじゃな────」

「このクズがッ!!汚物がッ!!粗大ゴミがッッ!!!」

「ぎゃああああああ!!!!」


その後、地面には幾つものクレーターが出来上がったとか。







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