死、それは突然現れる
今回は少し短いと思います。
なかなか面白いことするじゃねーか小僧。レイドンにさっきまでの自身はない。目の前の敵と同じ、この戦いを楽しんでいた。
そういえばこういう面白いやつもこの世にはいたっけな……
「でも、そんな生ぬるい電撃じゃ俺は倒せないぞ小僧!!」
体がビリビリする。遠くなる意識を舌を噛んで踏みとどめた。
自ら肉体改造実験に志願したのはもう20年前。その時はただ、守る力を欲しかったーーー守るべき家族は核で死んだ。
守る者がいなくなった俺は生きる目的を失った。所属していた軍隊で改造人間は反逆する可能性があると判断されたらしく同じ改造を受けた仲間10人と牢獄に閉じ込められた。自分の部隊の部下達は改造人間の俺を避けて生活するようになった。
果たして俺に利益はあったのだろうか。答えは否だ。
俺は己の拳で牢獄を破壊して逃げた。仲間も助けようと思ったが、彼らは既に処刑されていた。残っていたのは俺だけだったらしい。
それから俺は戦いの中に生きた。ただ強い奴を追い求めた。
ーーー俺は…戦いの中で死にたかったのかもしれない
「最大火力だ!」
全身に放出している炎を腕に集中させる。これが俺の本気、俺が求めた力の結晶。
炎は腕から勢いよく飛び出し、敵を焼き払ったーーーと思った。
左頬に重い衝撃が走るーー
ーーその勢いで体力を使い切った体は地面に倒れ込んだ。
「左腕か…」
俺の火炎放射を避けて殴ったのか。面白い。久しぶりだ、この感覚。
やられたよ、俺はその時、敗北を認めた。
そのまま意識は遠くなっていく、まるで眠りにつくように気持ちよかった………
…………
……
…
ダァン
俺の目の前に立っている男は黒々とした腕をこちらに向けて笑っていた。
ーーー右足が濡れる感覚
レイドンは感覚を覚えていた。軍人という仕事をしてきて何度この体験をしただろうか。
遠くなっていく意識を遮るように右足に激痛が走る。
風穴が開いていたーー
目視しなくても分かった。撃たれたのだ。
「2発目は当たったね」
男の笑みはーーー狂気そのものだった。
静かな砂漠の中で男の笑い声が響き渡る。
「ねえ、知ってるぅ?。この研究所で寄生虫作ってるらしいよぉ。」
ーー左足に激痛が走る。
見れば男の掌から細く白い煙が出ていた。
「その寄生虫にオレ殺されそうになったんだぁ。」
右腹から血がにじみ出る。
ーー3発目
意識はもう痛みの感覚が消えるほどに遠くなっていっていた。しかし、レイドンの意志がそれを阻止した。
レイドンは知っている。この男と全く同じことをした人間を…
奴は成績優秀で訓練も真面目にやった。部隊の隊長だった俺は奴を誇りに思っていた。
ーーしかし、初めての実戦のことだ。テロ集団の基地を制圧する作戦で、奴は死ににぞこないの人間をもて弄んだ。それは死ぬまで。いや飽きるまで。
奴もこんな笑い方をしていたーー
奴は俺の部下、奴にとっての同僚、仲間を殺したーーー奴を殺したのはオレの人差し指だ。
反逆者とされた奴はすぐに捕まった。そして処刑が決定するまでに時間はかからなかった。
仲間だった奴に銃の引き金を引いた感覚を障害のある俺は忘れることはないだろう。
「アヒャヒャヒャヒャアハアハアヒャ」
それはまるで赤ん坊のただを聞いているようにも聞こえた。
俺の右足はなくなった。
何発の銃弾が撃ちこまれたのかわからなくなっていた。
「アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!」
耳障りな甲高い笑い声が耳に響いた。
その声が俺の耳を支配した。残された体力を使って口を開くーー
「お前、いつか殺されるぞ…」
「……………………」
男はニヤっと笑い、ゆっくりと黒々とした掌を俺の脳天に向けた。
このあと起こる出来事を確信したレイドンはゆっくりと目を閉じた。
耳に男の甲高い笑い声が聞こえる。
ああ、これが俺の最期か……
つまらないものだったな
静かな夜の砂漠に銃声が鳴り響いた。
お読みいただきありがとうございます!!
ここまで読んでもらった方は意外な展開かな?と思いますかね