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陰謀

今週中予定してるところまで終わらせたい。


「日本という国はいつから腐った国になったと思う?」


作戦行動開始は夜、それまでの間オレはポッドの中でプロペラのついた鳥と会話していた。ハロルドは話していてとても面白い、彼はアメリカンコミックが大好きらしく、今度貸して貰う話になっていた。映画好きなオレはスパイダーマンやアベンジャーズは一応見たのである程度話について行くことが出来た。


そんな風に楽しく話をしていたが、ハロルドはいきなり笑うことをやめた。今から真面目な話をするから聞いてくれ、と口で言わずに伝えているようだった。


「2025年、国民がDからSランクまでのアルファベットで区別されるようになった時だ。」


2025年に全国の小学6年生は体力、知力、学力、その他のテストを受ける。その結果とそれまでの生活でそれは決定する。これで決まったランクは死んでも変わることはない。


このシステムの笑えないところは”判断基準が努力点ではなく才能”だという所だ。いくらSランクを目指して便器したって、運動したって、努力した時点で負けなのだ。


中1の時にSランカーに言われた一言を今でも覚えているーー

ーーそれはとても理不尽でこの世の不条理を感じた。そして僕ら低ランカーは思ったんだ「この世界は腐ってる」って。


オレはDランクだーーー

いつだって見下される存在、受験や就職で一目見て落とされる人間。面接を受ける時にSとDランクは3秒で終わると言われた。Sは企業において飛躍的な向上をもたらす。だからこそ入社させない理由はない。だから3秒で終わる。しかし、Dランクは語る必要も無いその逆だ。、Dランクは強制労働施設でしか働けないなんて言われた。そこで雑巾のように使われて捨てられる。


もちろん僕は高校に行けなかった。

ーー試験前日にそれは届いた。,A4の茶封筒。その中にはこう書かれていた。

「あなたは受けることの出来る力をもっていません」

それを見た時、僕はどんな顔をしたのだろうか。差別だと思った。オレは受験勉強を人一倍頑張ったんだ。自身があった。けど、スタートラインにさえ立たせてもらえないなんて誰が予想しただろうか


ーーー努力の天才は報われない。

オレはこれを幼くして学んだ。


「いいや、2016年だよ。この時既に始まっていたんだ。」

「確かマイナンバーが施行された年だったっけ」


中学の歴史の教科書に乗っていた内容を思い出す。


「ああ、その時からこの国は腐り始めていたんだ」

「どういうこと?」

「この時のマイナンバーの目的は何だったかわかるかい?」


僕は独学で高校で教えられる内容を勉強した。その時のオレは一種のひきこもりだったけれど。


「たしか……」

 マイナンバーは、社会保障、税、災害対策の分野で効率的に情報を管理し、複数の機関が保有する個人の情報が同一人の情報であることを確認するために活用される。


これがマイナンバーの最初の目的だった。


「そうだね、でもここで一番大事なのは”資産把握”だ。マイナンバーによって手続きが一括でできるようになるなんて、カモフラージュにすぎない。」

「どういうこと?」

「まず、国は国民一人一人の資産から区別を始めたってことさ」

「つまり?」

「マイナンバーの今に至るまでの基盤はこの時既に出来上がっていたんだ」


少し考える。しかし、どうしてこれを?


「国を強くするためだよ。武力を使わない日本にとっての最大の武器は己の頭だからね」

「つまり、今まで才能はあるがそれを発揮できる環境になかった人たちに補助金を与え、国のために励んでもらうためにか」

「そのとおり、まあそれに関しては2025年、君の言ったランク付けの時に出来たものだけどね」

「でも、これって…」


僕は理解した。ハロルドの言いたいことを。今までなぜ気づかなかったのかーー

ーー日本が腐った理由を。


「そう、そのために金や能力のない人間はいらないと判断したんだーー

ーーそしてそれは10年前完成した」

「DNAか…」

「ああ、我々は気づくべきだったんだよランク付けの時点で。今考えればおかしいことなんだ。ランク付けできるシステムの開発が2024年、あまりにも早すぎる。ずっとこのために開発していたとしか考えられない」


ハロルドは大きく息を吸い込み吐き出す。


今、国がやりたいことはなんだと思う…




夜になった。オレは研究所の正面、ちょうどよく崖があった為、そこで双眼鏡を覗いた。夜ともなれば警備が厚くなることは当然。いくつものドローンが一定の間隔で巡回していた。


ハロルドは準備するそうで今は無線で話すことは出来ない。まあ、発炎筒の設置と警備の数数えるなんて自分だけで出来るけども…


双眼鏡にはカメラがついているから口頭で言わなくていいそうだ。ゆっくりと、双眼鏡で研究所全体を見る。


ーー人がいた。


警備というと全てドローンに任せるようなご時世で人の警備員だろうか。彼はとても大柄だった。

彼は奇妙だった。冬の砂漠は寒い。僕だって黒のジャケットを着ている。迷彩服は趣味に合わなかったから着ていない。しかし彼は半袖にボロボロの半ズボンを着ていた。


さむくないのだろうか、それを心配した。よく見ると銃も防具も着けていない。おそらく警備員ではないだろう。だとしたら研究員だろうか。変わった研究員っているものだな、と思った。


しかし、突入まであと30分であそこにいられるのは邪魔だ。僕は腰から拳銃を取り出したーー

ー麻酔銃だ。ボッドの中に念のため、と入れておいてくれたそうだ。ポッドには他にもいろいろと入っていたが、持ってきたのはこれと少しだけだ。


照準を彼の頭に合わせる。右手で持っているため、手の震えはない。落ち着いて引き金を引いた。

サブレッサーが付いているため、1発ならドローンに気づかれることもない。


これで頭に当たり、眠ってそれをドローンが発見、回収してもらうという算段だ。

ーー燃えつきた。

目を疑った。それは現実か幻想か、麻酔弾は彼の目の前で小さな炎を巻かれて、消えた。


自然発火、警備装置、そんな単語が僕の頭を駆け回る。この現象に答えを求めていた。

けれどその答えは聞かずとも教えてくれた。


「…燃やした」


よく聞こえなかった。けれど彼は親切にもう一度言ってくれた。


「私が燃やした。」


その声は低く、野太かった。



彼が腕を動かすと警備ドローンは1機残らず研究所内に引いていった。


「ドローンは逃げたんじゃない。今私が逃がしたんだ」


後の1文はとても強調して喋った。


「さあ、ちょうど退屈していたところだ!!先に進みたければ私を倒して行け!!」


彼の体全体が炎を纏う。いや、体が燃えているように見えた。

世にも奇妙な人間だと思った。さしずめこれは人間びっくり賞なのだろうか。

冗談なら冗談だと言って欲しいが、残念ながら現実。仲間が来るためにはこの炎の化物を倒すしかなさそうだ。


右腕を見た。黒々としたそれは夜の暗さに溶け込んでいた。

僕はフッ、と笑った。


これはこれで刺激的で面白い。


















お読みいただきありがとうございます!!


今回久しぶりにマイナンバーって単語が出てきた気がする…

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