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私は気がついたら下着のまま寝かされていた。

ベッドの頭に手紙が置いてあった。

『起きたらおかゆをチンして食べて薬を飲むこと!』

誠一郎からの手紙だった。

まだ少しふらつくが、起きれない程ではない。私は起き上がると冷蔵庫に向かい、おかゆをチンして食べ始めた。

ちょうどいい塩加減で、あっという間におかゆはなくなった。

私はゼリー飲料を飲み、水分を補給すると、薬の包みを開け、薬を飲んだ。

ずいぶん汗をかいたらしい。下着を脱いで体を拭き、パジャマに着替えるとベッドに戻った。枕元に体温計が置いてある。

熱を計ってみると、七度八分にまで下がっていた。もう一汗かいたらきっとよくなるだろう。

私はそう思うとバッグから携帯を取り出した。

寝転んで、メールをうつ。

誠一郎宛だ。

『今日はありがとう。ゼリーも超助かったよ!熱は七度八分まで下がったよ。あと少し汗をかいたら、よくなると思う。これからもう一度寝ます。おやすみなさい』

なんだか一方的なメールになってしまったが、いいか。

返信はすごい早さで来た。

『明日もお仕事は休みなさいね。塾の前に一度寄るから、ほしいものがあったらメールしてね。おやすみなさい』

私は誠一郎に悪いなと思いつつ、

『雑炊かうどんが食べたい。あとゼリーをもう少しほしいかな』

『ラジャー!おやすみなさい』

誠一郎は私の体調を気遣ってか、短いメールで最後を締めくくった。



翌朝、私はいつも通り六時半に目を覚ました。大量に汗をかいており、再び汗を拭き着替えた。

熱を計ってみると、七度三分まで下がっていた。

この調子なら会社も行ける……と思ったが、大事をとって休むことにした。

学生の頃は遅刻、欠席を普通にしていたのに、おかしなものだ。



七時になり、安野に電話する。

『先輩、大丈夫ですか?』

「あぁ、大丈夫。ただ、念のため今日は休むことにしたから、その連絡を頼みたくてね」

『わかりました。課長に伝えておきます。無理はなさらないように』

「沙織が世話しに来てくれるみたいだから、大丈夫だよ」

『それはそれは……お邪魔してしまうところでした。では、お大事に』

そう言うと安野は電話を切った。別に来てくれてもよかったのに……でも、風邪が移ると大変だな、と思い、そのまま横になった。



誠一郎は今日もマスクをして完全防備でやって来た。

「なんでマスクしてんの?」

と聞くと、

「移されたら学校休まなきゃいけなくなるから、防備」

と楽しそうに言われた。

どうやら、インフルエンザも通さないという自慢のマスクらしい。

誠一郎は台所に立つと、私のためにうどんを作り始めた。

トントントントン、ねぎを切る音がする。

私はゆっくり起き上がると、ちゃぶ台の前に腰かけて出来上がりを待った。

やがて、だし汁のいい匂いがし始め、私のもとには豪華な天ぷらうどんが出てきた。

「この天ぷらどうしたの?」

「お惣菜コーナーで安くなってたから。あ、海老天苦手だった?」

「いや、好きだよ。おいしい」

横を見やると、なぜだか顔が赤い誠一郎。

移したかな?と思い聞いてみると、

「な、なんでもない!沙織が……って言うから一瞬ドキッとしただけ」

「えっ、私何か言った?」

「もういい!気にしないで!」

マスクで隠れてよく見えないが、おそらく顔はトマトのように赤いのだろう。

私がなにか、照れるようなことを言ったらしい。なんと言ったかは思い出せないけど……


誠一郎は時計を見やると、

「そろそろ塾に行くね」

と立ち上がった。

私が

「ありがとう、誠一郎」

と言うと、

「鍵は閉めてくから寝てなさいよ」

と言われたのだった。

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