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学校が始まり、また電車通学が始まった。

電車の中でやつによく似た後ろ姿が見えると、心臓がビクンとした。

だが、沙織に言われた通り、よく見て、別人だとわかる。全身の力が抜ける。でも、薬を飲まずに発作を止めることができた。ただ、握りしめていたお守りを持った手だけが固まって動かなかった。

反対の手でなんとかその手をはずすと、冷えきった手のひらにハァーッと息を吹き掛け、暖をとった。

電車の中は寒くはない。さっきの出来事で緊張してしまって手の指先が冷たくなってしまったのである。

そんな手を暖めながら、学校のある駅で降りた。


学校が近くなると、由美子の姿が見え、俺は走って横までいった。「明けましておめでとう」

由美子もそう返してくる。

「クリスマスイブは大変だったね。もう大丈夫なの?」

「大丈夫とは言えないかな……街で似た人を見かけると過呼吸とか発作をおこしちゃう」

「それ、病院にちゃんと行ったの?」

「うん、通ってる」

そこへ瞳が飛び込んできた。

「二人とも、明けましておめでっとうー!!何の話をしてるの?」

「沙織の病気の話」

「病気!?なになに?」

俺はまた最初から瞳に説明をした。

「じゃあ、もう大丈夫じゃないかな?沙織の彼氏がいてくれただけで発作が止まったんでしょ?なら、彼のことを思い出してたら大丈夫じゃん?」

「瞳、そんな簡単なことじゃないって」

「ううん、瞳の言う通り。今日も発作を起こしかけたけど、彼の言う通りにしたら大丈夫だった」

「彼氏に感謝、だね!」

「うん!」

俺たちは教室についた。相原は、またなにか本を読んでいた。


休みの間、何をしていたかと言う話になり、俺は俺の実家に行った話をした。

「沙織、思い切ったねー!!」

「なにが?」

「そんなに年上の彼氏の実家に行ったってことは――」

「私、ウェディングに着ていく服ないよ」

由美子と瞳が畳み掛けるように言ってきた。

「もう……二人して話が飛躍しすぎ!」

そう言いながらも俺の顔はにやけていたに違いない。

沙織がうちに来た話もした。

「それ、もうウェディングの階段を登り始めてるわ」

「進路希望にはお嫁さんって書くつもりだね!」

二人に茶化されて、俺は疲れながらも嬉しいと感じていた。



相原はどう過ごしたんだろう?

相原の席まで行き、聞いてみることにした。

「唯、休みの間どうだった?」

「んーとね、カウントダウンの花火見に行ってきた。そうだ、お願いがあるんだけど、カウントダウンの花火、一緒に行ったことにしてくれない?親がしつこくて」

「いいけど、どうするの?」

「今度うちのお母さんがいるときに遊びにきてよ。カウントダウン一緒に行った子って紹介したいからさ」

「了解。ということはお泊まりはなしで行ったのね?」

相原はため息をつきながら言った。

「泊まり掛けはダメだっていうんだもん、仕方ないよー」

俺はうちと似たようなもんだなと思いつつ、相原の話を聞いた。

愚痴とかも多かったけど、粗方幸せそうである。ちょっとホッとした。





相原の家に来ている。

相原の母親はなんだかちょっと迫力があって怖い。

「お母さん、こちらがカウントダウンに一緒に行った倉田沙織さん」

「まあまあまあ、遊びに来てくれてありがとうね。唯がお友だちを家に連れてくるなんて、もう十年ぶりくらいかしら」

「お邪魔します」

「あとでケーキを持っていくけど、倉田さんはコーヒー、紅茶、緑茶、どれがいいかしら?」

「コーヒーでお願いします」

そう言うと、相原に連れられて二階へと上がった。

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