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明けましておめでとうの最初の一声は誠一郎からだった。


当たり前かもしれないが、私にとっては重要なことだった。


今まで、おめでとうの挨拶はお父さんかお母さんが最初だったのに、初めて他人に一番に話した。それが誠一郎だった。

私は少し照れ臭く、少し恥ずかしながら、誠一郎に言った。

「この先何十年も、よろしくね」

誠一郎は驚いたらしく、

『何十年も?』

と聞き返してきた。

「私と一緒じゃ、いや?」

『全然!むしろ嬉しいくらいだけど、それは身体が入れ替わり直したら、わからないよね?』

「うーん、それはそうかもしれないけど」

『そこは、『そんなことないよ!』って言い返すところでしょ?』

そう言い合って二人で笑った。


「誠一郎、明日は着物だね」

『えっ、なんで?着物なの?』

「うちの実家は毎年元旦は着物なんだ」

『そうなん?緊張するわぁ』

「大丈夫。気付けとか髪の毛はお母さんがしてくれるから」

『お金持ちの家は違うねぇ……』

「まぁ、すぐに慣れるよ」

『慣れるって?』

「正月明けたらお茶会が三回あるからね。毎回着物」

『お茶会なんて、俺は出たことないぞ!』

「大丈夫、大丈夫。みたちり教えたげるから」

それを聞いた誠一郎は、

『しっかり指導をお願いしますよっ!』

と気合いが入っていた。

私だって今着物のことを思い出すまでお茶会があることなんて、すっかり忘れていたよ。





翌日。昼過ぎに着物の誠一郎を迎えに行った。

案の定、誠一郎は着物ででてきた。

薄いピンクの花弁が描かれており、色の白い誠一郎によく似合う。

お母さんが門のところまで見送りに来てくれた。

「いってきます」

と言うと、

「明けましておめでとうございます。沙織をよろしくね」

と母が続けた。

「はい!わかりました!」

私は元気に返事をすると、誠一郎と共に歩み始めた。

なれない着物に苦戦する誠一郎。

「着物のときは、こうして歩くといいんだよ」

とやってみせた。

「ホントだ!これなら歩ける」

誠一郎はおお喜びだった。

私はそんな誠一郎をみて、ほんわり温かい気持ちになった。


やがて神社につくと、まず長蛇の列に並んだ。

列はなかなか進まない。

私は誠一郎にトイレに行ってくるように指示した。

まだ並んでおく時間があるからだ。

誠一郎が戻ってから、私もトイレに行った。


初詣の列はなかなか進まず、身体が冷えてきた。

私はカイロを誠一郎に持たせると、自分はポケットに手を入れた。

すると、カイロを持ったまま、誠一郎がそのポケットに手を差し込んできた。

ラブラブ手繋ぎである。

私は人前だから恥ずかしいと言ったが、誠一郎は譲らなかった。


嬉し恥ずかし手繋ぎ。

ちょっとは彼氏らしくなってきたかな……と自分を振り返る。


やがて列は私たちの番になり、五円玉を投げ入れてそれぞれお祈りをした。

誠一郎はやけに長くお願い事をしていた。

「願い事、何にしたの?」

「それは秘密」

「なんで秘密なの?」

「言ったら効果がなくなるからさ」

そんな会話をしながら、お守りコーナーに移動する。

誠一郎は恋愛成就のお守りを買っていた。私は家内安全の木札を買った。

そのあと念願のおみくじコーナーへ。

私は末吉だった。

内容はこれから開けてきます、みたいな内容。

誠一郎はと聞くと、見せたくないという。

そんなに悪い結果だったのかと危惧しながら巧みに誠一郎からおみくじを奪う。


大吉だった。


ただ、恋愛事のところに「さわりあり。喧嘩事に発展か」と書かれていた。

私は私のおみくじをもう一度みると、恋愛事の欄に「さわりあり。誠実さをかかさぬこと」と書いてある。


これって喧嘩フラグじゃない?

今年はおとなしくしていたほうが良さそうだ。

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