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誠一郎が一緒に帰省してくれる。それだけで心強かった。

私一人じゃ帰れないし、帰ったところで誰が誰やらわからない。

だからと言っていつまでも帰省しないと、ご両親は心配するだろう。


今回は電車で帰省することにした。

親にはまだ連絡をとってはいない。

沙織の許可がおりるまで保留だ。


私は風呂上がり、ビールを片手にテレビ番組を見ていた。

トーク番組で、どこからが恋愛なのか、という話題でタレントたちが盛り上がっていた。


なんとなく見ていたのだが、誠一郎を好きになったのっていつくらいだろう?と考え始めた。

安野を好きだった気持ちに偽りはないが、その間にも誠一郎の周りの人間に嫉妬したような気持ちになったことがある。

あれは恋愛感情か、それともただの独占欲か。

その見極めは難しかった。


安野に好きだと言ってしまったときも、誠一郎は自分の味方でいてくれた。そう、いつでも誠一郎はそばにいてくれた。

その頃から思えばずっと好かれていたんだなと感じる。

誠一郎が私を好きになってくれたのはもっと早い段階からだろう。


なんとなく誠一郎に罪悪感を抱きながら、私は今までのことをずっと思い返していた。



すると、誠一郎からの電話が鳴った。

「もしもし?」

『もしもし?俺だけど』

「うん、どうだった?」

『むちゃくちゃ反対だってー。お父さんもカンカン』

「私がそっちに行って説得しようか?」

『今きても焼け石に水だから、もう少し自分でなんとかしてみるよ』

「そっか。なんかごめんね」

『ううん、自分の希望だから自分でなんとかしないとね。沙織はまたビールですか?』

「なんでわかったの?」

『勘』

「すごい勘だね」

『だって、そのくらいしかすることないだろうし』

「テレビ見てた」

『テレビ?』

「チャンネル八番」

そこで誠一郎がテレビをいれる音がする。

『これ?恋愛相談室ってやつ?』

「うん。」

『ふうん、俺も見てみようかな』

そういうと、じゃあね、と誠一郎は電話を切った。


やっぱり実家行きは反対されたか……当然だよね。私が親でも反対するもんね。

でも、誠一郎は実家に帰りたがっている。

なんとか帰らせてあげたいのだけど……

車でなら一時間半の道のりが、電車だと二時間半以上かかる。日帰りできないこともないが、ばたつくだろう。

せめて私が車に乗れたなら……そう思っても、もう時間はない。

いざってときは日帰りにしよう。それならお父さんもお母さんも反対できないはずだ。

そうしよう。


誠一郎には明日にでもメールして伝えよう。

そう思った。





翌日、昼休みに誠一郎に電話をした。

「日帰りなら、文句も言われないんじゃないかな?」

『日帰り?でもそうすると、実家にいれる時間は短い……か。まぁ、でもいいや、日帰りで』

「ホントにそれでいいの?」

『うん、そうでもしないとお父さんも納得しないだろうし……』

「だね。じゃあ、それで決まりってことで。」

と言って電話を切った。

屋上で風に当たっていると、庶務の平野さんがやって来た。

手には弁当を持っている。

それを私の目の前に差し出すと、

「か、係長!よかったらこれ食べてくれませんか?」

耳まで赤くして平野さんが言った。

「サンドイッチです……お気に召すかはわかりませんが……」

「ありがとう。いただくよ」

ベンチに二人で腰かけた。

「よかったら、明日から毎日、お弁当作ってくるので、食べてもらえませんか?」

私は目を丸くして頭を横に振った。

「そんな、いいよ、悪いよ」

「いえっ、今料理練習中なんです。食べてくれる方がいると張り合いがでるというか……」

「料理練習中なんだ。そっかぁ、それなら食べてもらいたくなる気持ち、わかるなぁ。」

「毎日弁当をブログにアップしているんです。他人の評価も聞きたいっていうか」

「それならお任せしようかな?」

平野は最高の笑みで答えた。

「ありがとうございます!!」

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