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誠一郎が心療内科に行ったと聞き、少しホッとした。

原因はやっぱりPTSD。たった一日だったが、怖い思いをしたのだろう。もし、入れ替わりなしで私が捕まっていたら、PTSDくらいじゃ済まなかったかもしれない。

誠一郎には怖い思いをさせて悪かった。私はそう思った。


心療内科で薬が処方されたという。これで少しはマシになるかな、と思う。

今の状態じゃどこにも連れては行けない。


そう考えながらジムで汗を流すと、安野がやって来た。

「沙織さん、大変だったらしいですね」

もうここまで話が伝わっているのか。相原だな。

「おかげさまで無事でした」

「よかった……沙織さんがひどい目に遭ったと聞いたときには唯と二人でおろおろしましたよ」

「――相原と付き合ってるの?」

「えっ?えぇ、まぁ……」

照れる安野を見て少しホッとした気持ちになった。

「十も離れた年の彼女ってどんな感じ?」

「それは先輩のほうがよくご存じでしょう?」

「たまにはノロケも聞いてやらないとね」

「あはは、なんか久しぶりに先輩と話ができますね」

最近は係長の仕事が忙しくて、安野とはまともに話すことも少なかった。

クリスマスも明けて一晩、安野は相原と過ごしたのであろう、爽やかな笑顔で笑った。

あぁ、この顔が好きだったんだよな、と思うと少し胸がキュンとした。

安野は相原とはうまくいっているらしい。最近では友達カップルとダブルデートをしたらしい。

高校生の話についていけたのか、と聞くと、苦笑しながらついていけなかったっす、と答えた。

ダブルデートかぁ……。相原も友達ができたんだな、よかった……


私はそう思いながら、由美子と瞳を思い出していた。二人とも、まだ彼氏はできないらしい。

この前の、永澤に初めて会った合コンからも、うまくいきそうでいっていないところへ永澤の事件が起きてしまった。

由美子には相手から謝罪の電話があったらしい。


永澤は、誠一郎と会うために、さして仲良くもない彼らに合コンのセッティングを任せたらしい。しかも、指名で。

だが、彼氏は何も気にすることなく、由美子にコンタクトをとり、合コンをセッティングしたとのことだった。

今回の件で由美子はとても落ち込んでいるらしい、と誠一郎から聞いた。

冬休みに入っているため、会うことはできなかったが、私のせいで、と泣きながら謝られたらしい。


今回のことは誰が悪いと言うことはない、永澤が悪いだけなんだが。



ジムの帰りにシャワーを浴びていたら、安野が久しぶりに宅飲みしましょう、と提案してきた。


二人でビールやらつまみやらを買って、私たちは歩き出した。


部屋につくと、

「やっぱり先輩らしい部屋っすね!」

と安野が言う。

どうやら、きっちり片付けた部屋が私らしい、と言いたかったらしい。


適当に座ると、それぞれの缶を開け、乾杯と相成った。


安野は楽しそうに相原のことを話し、私は誠一郎との日々について語った。

そのうちに仕事の話になり、安野が提案する企画に興味を持った。

そんな風にして時間は過ぎていった。


「もう、おいとましないと」

と言う安野に

「もう少しいいじゃん」

と言う私。

「明日は会社の忘年会だから」

と言われ、思い出して見送った。


誠一郎とメールしながら過ごす。

すると、

『背の高い男の人が怖い』

と返ってきた。

結局、電車に乗るたびにパニック発作用の薬を飲んでいるようだ。


学校は幸いにも女子高だからよかったが、外に出るたびに不安になっているようだ。

病院からは二週間後といわれているが、今回はお正月が入るので実際は三週間後になる。

薬をそんなに飲んでいたら足りなくなるのは明確だったので、明日にでも通院することを勧めたのであった。

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