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07

誠一郎を見送った後、私はジムに電話をした。

三万円は痛かったが、どうしても痩せたかった。


ジムの人は親切で、楽々仮入会を済ませると、明日行くことを伝え、電話を切った。


入会金については、誠一郎のなけなしのお金を使うこともできず、私の小遣いから出すことにして、先程財布からお金を抜き取っておいた。

と言うのも、私の毎月の小遣いは十万円もあり、使わなかった分も合わせると十数万円を持っていたからである。

私の財布を見ると、誠一郎は仰天していた。

それもそうだろう、今まで十八万円の中でやりくりしていたのだ、その約半分が小遣いだなんて、天地の差だ。


私はそのほとんどを化粧品や、洋服の購入に充てていた。むしろ、十万円じゃ足りないくらいだった。


私は覚悟をした。

今までの約十万円、小遣いの中で生活をしなければならないことを。

三万円は大きかった。

だが、どうしてもこのデブな身体が許せなかったのだ。

私はあまり細かく考えないで置こうと思い、頭を左右に振った。



風呂を沸かして、寝る準備をする。

冷蔵庫には相変わらずビールがひしめいていたが、私はそれをとらず、今日買ってきたミネラルウォーターに手を伸ばす。


一口、口に含むと飲み込みながら思った。

明日からはミネラルウォーターも買えない……


風呂に入ると、またがしがしと頭を洗う。昼も入ったけど、また臭い。

明日からは昼に風呂に入れるわけじゃないので、さらに憂鬱な気持ちになる。シャワーを出しつつ、明日からはこのシャワーもけちらねばならないことに気づく。

何でもかんでも我慢我慢の生活。

「嫌だなぁ……」

思わず口にしていた。



風呂からあがると、誠一郎にメールする。

しばらく経ってから返事が来る。

スマホにまだ慣れないようだ。

『たくさん着信音が鳴るけど、どうしたらいいかわからない』

あぁー、多分ラインだな。

「無視してていいよ、明日学校へ行ったら寝落ちしてたとでも言うといいから」

『それでも、この音、消えないの??』

一つの返事にやたら時間がかかる。仕方ないか。まだスマホに慣れていないんだ、と自分に言い聞かせる。

一番簡単な方法で、

「設定ボタンから音、を選んで消せるよ」

ただし、私からのメールも聞こえなくなるけどね。と教える。

またしばらくしてから

『出来ました。ありがとうございます。』

とメールが来たきり、メールは途絶えた。多分もう寝てしまったのだろう。


私はミネラルウォーターを片手に、タバコを見つめていた。

学校にも数人、タバコを吸う子がいた。

そんなにうまいものなんだろうか?

吸ってみることにする。

タバコに火をつけるが、うまくつかない。何故だろう?タバコをくわえたまま、息をする。

すると、火がついた。なるほど、吸いながらつけるのね。

妙なところに感心しつつ、タバコを燻らせた。味はなんとも言えない。だけど、この吸い込む行為は癖になりそうだった。

むせることもなく吸えたのは、誠一郎の身体だからだろうか?



タバコを吸い終わり、いざ寝ようとしてもなかなか寝つけなかった。

明日の出勤に緊張しているのだろうか?柄にもない。


私は緊張というものに縁がなかった。

小さい頃からピアノとバレエをしていて、舞台に立つことが多かったせいか、緊張することはあまりなかった。

高校入試だって、リラックスして受けられた。一つレベルを落としたところを受けたということもあるかもしれないが、緊張はしなかった。


その私が寝つけないほど緊張している……

それは、自分の身体ではないせいか、仕事というものを体験したことがないせいか、多分、両方だろう。


三時過ぎても眠れなかった私は、ビールを飲んでみることにした。

よく、アルコールをとると眠くなるっていうじゃない?


ビールの味も、これまた微妙だった。麦茶を炭酸割りにしたような、微妙な味。不味くはないが、決して旨くはない。


大人はこんなもの飲んでいるのね……


そしていつの間にか、私は眠りに落ちていった。

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