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誠一郎に彼氏ができたら……

今まで考えたことがなかったわけではなかったが、いざ目の前にするとこうもショックなのか。

私はふらふらとマフラーの袋を片手に街を徘徊した。

なんだか気分が最悪だった。


そのままふらふらとアパートに帰った。

荷物をおろすとどっと疲れが出て、私はそのままベッドに横になった。


なぜか涙が止まらなかった。



誠一郎を裏切り者だとは言えない。彼の人生は彼のものだから。女の子として生きると決めたのかもしれない。

そうなると邪魔なのは私だ。

電話をする気にもならなかった。



すると誠一郎から電話が。しかし、私は出る気にならず、電話をスルーした。

電話は何度も鳴った。

そのうち私は携帯の電源を落としていた。



翌朝携帯の電源を入れると、二十回も着信履歴があったと不在着信メールが来た。

他のメールは全部誠一郎からだった。

私は一つずつメールを開く。

『沙織、何かあったの?』

『連絡待ってます』

『寝てるの?』

――などなど、どれも私を心配したような内容だった。


まさか、誠一郎のせいで落ち込んでいたなんて口が裂けても言えない。


とりあえず

「ごめんごめん、携帯の電池が切れたまま寝ていたよ」

とメールを返す。

すると速攻でメールが届いた。

『今日はちょっと相談があるの。夕飯一緒に食べない?』

「いいけど、メールじゃ言いにくいことなの?」

『うーん、メールではちょっと、うまく言えないかな……』

「じゃあわかった。今日はなるべく定時にあがれるようにするから、アパートで待ってて」

イヤな予感がした。

あの長髪イケメンと付き合うことになった報告か。

だから、電話やメールじゃ言いにくいのか。


この日の仕事はミスを連発し、定時にあがるのは無理になった。

「ごめん、残業。七時には帰る」

とメールすると、そこからは仕事だけに専念して、ようやく終わらせた。

時刻は七時半。私は沙織に電話すると街まで自転車で来るように伝えた。


今日は珍しく中華料理だ。


中華料理屋まで行くと、自転車置き場で誠一郎が待っていた。

「お仕事お疲れ様」「もう、今日は疲れたー!!」

二人そんな話をしながら店に入った。


店の中へ入ると緊張してきた。いよいよ誠一郎の口から語られるのだ。


注文を四皿ほど頼むと、誠一郎は言い出した。


「怒られるかもしれないけど」

「いや、全然怒らないよ」

「まだ話してないじゃん」

「それもそうだね」

「俺ね、昨日、合コンに行ったんだ」

「うん」

「うんって……怒らないの?」

「だって誠一郎の人生は誠一郎のものだし」

「ふぅん、そっか」

「で?合コンはどうだったの?」

最初にエビマヨが届けられた。私はそれを一つ口にした。

おいしい。こんな話じゃなければもっと美味しかっただろうに。

「合コンで、メアド交換をしたんだ」

「へぇ、よかったじゃない。これでぼっち完全卒業だね」

「それが、その人をどうしたらいいか、わからなくて」

「と言うと?」

フカヒレスープが届いた。ふーふー冷ましながら口にする。実においしい。

「メアドも本当は交換したくなかったんだけど、周りの空気がそんな感じじゃなくて……」

「それで?」

「この人と縁を切るか、ただの友達として認識してもらうにはどうしたらいいと思う?」

私は拍子抜けした。

「だって、昨日、腰に手を回されて歩いてたじゃん」

と言うと、

「そんなとこ見てたなら助けてくれればよかったのに。っていうか、いつから見てたの?」

「いや、買い物して外に出たらちょうどそうやって歩いてたから、つい……」

「つい?」

「そういう関係かと思って」

酢豚が届く。てりがあってめちゃくちゃ美味しそう。

「違うよ、俺には沙織がいるもん」

私は顔が赤くなっていくのを感じていた。

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