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私は誠一郎の家をあとにして、歩き始めた。

二駅くらいだから歩いてもよかったのだが、なんとなく気乗りせずに電車を待っていた。


すると、一組の仲のよいカップルが駅の構内に入ってきた。


安野と相原だった。

驚きを隠せない私。安野はにこやかにこちらへ向かって来る。


「先輩も今帰りですか……って、ここ先輩ん家より先ですよね?」

「もしかして、沙織のこと送った帰りですか?」

相原が言う。こいつ、こんなに積極的なタイプじゃなかったのに……むしろ団体行動が苦手で、いつも一人で本を読んでいた……あの相原じゃなかった。

「あぁ、そうだよ。沙織を送ってきたところだ。」

そう言わざるを得なかった。

安野と相原はなにやら内緒話をしていた。

そして言った。

「もしかして……沙織の好きな人、ですよね?あのアパート、先輩さんのものなんでしょう?」

その一言を聞いて、驚いた。何の話をしているのだ?誠一郎が私のことを好き?ありえない。

「アパートは私のものですが、沙織が好きな人は別の人ですよ?」

「あれぇ?でもこないだお邪魔したときはっきり言ってましたよ、好きな人のアパートだって」

そこで電車が来る時間になり、私は電車に乗った。安野たちは逆方向の電車に乗るらしい。


詳しいことを聞きたかったのだが、仕方がない。

というか、聞いてどうする?


もし、相原の言ってることが真実なら?


もし、誠一郎が私を好きなんだったら?


ありえない。


それよりも私は安野と相原の姿が目に焼き付いて止まらなかった。

仲良さそうに手を握りしめてホームに入り込んできた二人。

ということは、安野は相原と、そういうことだろう。


文句を言える立場ではないが、ついこの間まで誠一郎に好き好き光線をだしていたのに、そんなにいきなり変われるものなのか?誠一郎はもてあそばれただけなのか?いや、正確にはもてあそばれたわけではないのだけれど、それでも動揺させたのは事実だろう。

アパートについてからぐにゃぐにゃ考えていたら酒が飲みたくなり、冷蔵庫を物色。

アルコールは切らしていた。

仕方がないのでコンビニまで歩いて行く。

歩きながらもぐにゃぐにゃ考え込んでいてすっきりしなかったので、安野に電話することにした。

ビール二本とカクテル一つを入れたビニール袋をぶら下げて、私は安野に電話した。

『電話かかってくるんじゃないかと思ってました』

「いや……なに、二人はどういう関係か少し気になって」

『友達以上恋人未満、な関係です』

「いや、でもお前こないだまで沙織が好きだって言ってたじゃないか」

『だから言ったじゃないですか。すっぱり諦めたって』

「それで今度は相原ってわけだ」

『そうですね……』

「ぬしゃふざけとんのか、われ!!」

思わず大声で怒鳴った。

『ふざけてませんし、先輩には関係ないことじゃないですか』

薄ら笑いの安野にぶち切れた私は、

「お前がそんなやつだと知っていたら、好きになんかならなかった!!」

と怒鳴った。

『あ、先輩の好きな人って俺だったんですか?唯に話を聞いてますよ。中身は女の子だ……ってね』

「なにをっ……」

それ以上反論は出来なかった。

『まぁ、気にしないでくださいよ。俺も気にしませんから。明日からも同じ、先輩後輩ですよ。ねっ?』

そう言われると「うん」としか言えなかった。


相原に話したとしたら、誠一郎しか考えられない。

私は慌てて電話を切ると、誠一郎に電話をかけた。

『はい?』

「誠一郎、裏切ったな?!」

『え……なにを……?』

「とぼけないで。相原に私とのことしゃべっただろう?」

『……』

「なんとか言ったらどうなんだ!!」

『……ごめん、しゃべった』

「ごめん、で済む問題か?私は明日からどういう顔で仕事に行けばいいんだ!!」

私は空になった缶ビールを片手で握りしめて怒鳴ったのだった。

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