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安野が相原と番号交換をしていたのには正直、引いた。相原もそんなに軽い女でもないだろうに……


相原は

「安野さんからメールがあった!」

などとうきうきしていたが、一言忠告しておいたほうがいいと思い、言った。

「唯、気をつけて。安野さん最近好きな子に告白して振られたらしいよ。だから、あんまりはしゃがないほうがいいと……」

思う、と言おうとしたところで相原が言葉をかぶせてきた。

「振られたなら関係ないでしょ!!」

「でも、そんな軽い男と……」

「軽いか軽くないかは私が判断することでしょ。沙織には関係ない」

そう言われてしまうとその通りだった。


次の休み時間から、俺は相原から無視された。

せっかく仲良くなったのに……これじゃ前よりひどい関係だ。


沙織に相談してみよう、そう思った。





沙織に相談すると、

『それは謝るっきゃないでしょ』

と言われた。

「謝って許してくれるかな?」

『許してくれるまで謝る』

「うん……そうだね」

『そうそう、私も相談があってね……』

沙織は自分の気持ちを正直に話してくれた。

俺はなんと言ったらいいのだろう……

「それは自然な気持ちじゃないかな?好きな人とは一緒にいたいものじゃない?」

『誠一郎も好きな人とは一緒にいたい?』

「うん、できれば、ね……」

『ね、誠一郎の好きな人って誰?私が知ってる人だよね?』

「そりゃそうだけど」

『私がその人と結ばれたら嬉しい?』

「うーん、どうかな?」

沙織が沙織と結ばれたら、って、そりゃおかしな話だ。

『教えてよー。好きな人』

「今はまだ言えない」

『同僚の平野さんとか?』

「それはない」

俺は言うと、少し伸びをした。

「こういうことは、自分の胸にしまっておかないと」

『えー。じゃあ私が安野くんのこと相談するのもタブー?』

「いや、そうじゃないけどね……」

『じゃあ教えてよ、好きな人』

「口に出したら壊れてしまいそうだから、言わない」

『えー、なにそれー』

沙織の膨れっ面が目に浮かぶ。

「うまくいきそうになったら話すよ」

『わかった。応援してるよ!』

そこまでで電話を切った。


「うまくいきそうに、か……」

期待できない希望に胸を馳せるのだった。





「唯、ごめんね。私、唯の気持ち考えてなかったね」

無視され続ける俺。

「ゆーい、ホントにごめんってば」

「うるさいな。気が散るから黙っててくれない?」

相原は本から目をそらさない。

「許してくれるまで離れないから」

俺はそう言うと、相原に粘着し始めた。

「ゆーい、お願いだからさ」

「唯、許してよ」

「唯、ごめんってば」

六時間目が終わって相原のところへ行くと、相原はため息をついて言った。

「わかったわよ。許す。許したらいいんでしょ?」

「わぁー!唯、ありがとう!!」

「ただし、私と安野さんのことに口出ししないでね」

「わかってるって」

相原のことは心配だったが、それよりも許されたことのほうが大きかった。


由美子と瞳も、徐々にではあるが、相原と仲良くなりつつあった。


あとは安野をどうするか、だ……


俺は久しぶりに安野にメールを送った。

内容は、「相原のことをどう思ってメールしているのか」だった。


なかなか返事がこない。さてはジムにでも行っているのか……

時計とにらめっこをしていると、メールが届いた。

『沙織ちゃん、久しぶり。相原さんのことはいいお友達だと思ってる。誤解しないで欲しい』

いいお友達って……それはそれでイライラする。相原が安野を気にしていることがわかっているからである。安野もそれには薄々なりとも伝わっているはずだ。


俺はイライラをどこにぶつけていいのかわからなかった。

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