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私は気が動転した。

なんで誠一郎が安野と……!

会社の休憩室からは通りがよく見える。向こうは気づいていなかっただろうが、こちらからは丸見えだった。

私が動転したのは安野が誠一郎といたからか?誠一郎が安野といたからか?

――それはわからなかった。

ただ、一つ、二人が手を繋いで歩いていた、これは事実だった。



その後の残業は悲惨だった。いつもなら手伝ってくれる安野も、

「今日は所用がありまして」

と帰ってしまったし、帰ったというか誠一郎と会ってたし、量はさほどではなかったが、ショックでパソコンを触る手がおぼつかなかった。

安野は沙織に何の用事だろう……決まってるじゃないか、告白するのに!

私は珍しく遅くまで仕事をしていた。

安野は誠一郎になんて言ったんだろう。誠一郎はそれになんと答えたのだろう。

誠一郎には好きな人がいると言っていたが、男に戻れない今、考えが変わっているかもしれない。

そうすると、二人は付き合うことに……


いや、誠一郎に限ってそんなはずはないよね。誠一郎、好きな人のこと、ホントに好きだって言ってたもんね。


その日は午前様だった。





翌日、私は真っ先に安野の元へ行き、昨日のことを根掘り葉掘り聞いた。

「やっぱり好きな人がいるからって断られましたよ」

自嘲気味に安野が言う。

「俺、諦めるっす。新しい恋を探します」

私の心のもやもやはずいぶん良くなった。

ただ、誠一郎の好きな人、というところには、まだまだもやもやしていた。


そのもやもやが何なのか、今の私にはわからなかった。





また二人で出掛けることになった。

塾はさぼっちゃダメだといってあるのに、たまの息抜きは必要だとか。


今日はイタリアンにした。

私がどんどん先に歩いていくと、誠一郎が小走りに後ろをついてくる。それが可愛くて、何度も先に行っては止まった。

「全く、身長差を考えて歩いてほしいですよ」

私の身長は178センチ。対する誠一郎の身長は151センチだ。


「悪い悪い、つい、ね」

いらいらモードの誠一郎の頭をくしゃっと撫でる。

「なにするんですか?!」

「いや、なんとなーく」

それより、冬服買わないとな、さすがにそれじゃ季節外れだわ。

そう思って再び服屋に入っていく。

さんざん横から口出しして、やっと決まった。

当たり前のように誠一郎の財布からお金を払った。


イタリアンのお店につく。テーブルマナーは以前行ったフレンチでしっかり覚えていた。


料理が来るまでの間、会社であったこと、学校であったことを報告し合う。


その中には安野とのことがあった。

「期待させるのもよくないんで、きっぱりお断りしました」

「誠一郎の好きな人ってさ、誰なの?」

「そ、それは……」

「教えてよ!!」

「いずれ、時が来たらお話しますよ」

うまくはぐらかされた。


それ以外は二人は楽しく過ごした。プリクラも撮った。

誠一郎がバッグをごそごそすると、手帳が出てきた。

「まだ、それ使ってくれていたんだ……」

「うん!ちゃんと中身も書いてるよ!」

見せてもらうと中身がぎっしり書かれていた。所々にみんなでとったプリクラが貼ってあり、私の時より充実した日々を送っているようだった。

悔しくはなかった。むしろホッとした。

私の手帳はということでリュックの中を漁られ、発見された手帳。仕事のスケジュール以外にはなにも書いていない。そこへ、誠一郎がさっき撮ったプリクラを貼り付ける。ちょっとは賑やかになったかな。と笑う誠一郎につられて私も微笑んだ。


その日も門限ギリギリに誠一郎は帰っていったのだった。

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