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04

俺は風呂に入るときもできるだけ見ないように努めた。やっぱり見知らぬ異性に裸を見られるのは困るだろう。

それでもおっぱいやおしりの柔らかい肉は俺を誘惑した。

俺は適度に身体を洗いつつ胸を揉んでみた。別に気持ちよくもない。触った手の方は気持ちよかったんだが……エロ本みたいにそれだけで乱れる、ということはなかった。



俺は目覚ましの音で目を覚ました。

朝7時。制服に着替え、階下へ降りていく。

朝食の準備はされていて、俺は椅子に座る。

すると母親が、

「珍しいわね。いつもは起こすまで寝てるのに」

と言った。


俺は黙ってやり過ごすと、学校のカバンを持って外へ出た。


母親が後ろから走ってやって来た。

「沙織、お弁当!」

「あ、あぁ……ありがとうございます」

「ございます?」

と母親が怪訝な様子を見せたので、しまった!と思い、もう一度言い直した。

「ありがとう」

母親もそれ以上尋ねてはこなかったし、及第点といったところか。

「それにしても、今日は早く行くのね」俺はしまった!と思った。いつも朝何時ごろ起きるか、何時ごろ学校へ行くのかなど全く聞いていなかったのだ。

「今日は……ちょ、ちょっと用事があるんです」

と答えると、母親は

「です?」

とそこに反応してきた。

「と、とにかく用事があるから」

と言って俺は駆け出した。

「なんか変ねぇ」

という母親の呟きを後ろに。


俺は西原公園につく前に缶コーヒーを購入した。

本来ならタバコの一服もしたいところであるが、女子高生にタバコなど買えるはずもなく、諦めた。


「早く着きすぎたな……」

俺はポツリとつぶやく。


ブランコの上に座り、少しだけ揺らしてみる。

まだ七時半すぎだ。

学校へ登校する若者たちが見える。

そんな自分も今は若者だが。


缶コーヒーをちびりちびりと飲んで、時間を過ごす。八時になったら母親のふりをして欠席の連絡をせねばならない。


沙織は八時にやって来てくれるか……それも心配だった。

待ち合わせ場所なんて決めずに俺のアパートで話せばよかった、と、ふと思う。

だが、いきなり密室に男女二人では沙織も緊張するか、と、気を取り直す。


この公園はわりと広く、ウォーキングの人や犬の散歩の人が多い。

公園といっても、このブランコと滑り台くらいしか遊具はなく、あまり子どもを見かける場所ではない。

今時は公園内でのボール遊び禁止なども手伝ってそうなのだろう。

ましてやこの朝っぱらから子連れはいなかった。


周りを回っているのは、主婦らしき人と引退したであろう老人だった。


俺は空になった缶を足で踏んづけてさっきの販売機まで戻って捨てた。


そうしてブランコに戻ってきた。

八時少し前である。

俺は学校に電話したいが、あいにくクラスも担任の名前も聞き忘れていたことに気がついた。9時近くなり、これはもう待っている時間じゃない、と俺はアパートへ向けて走り出した。

まだ桜がかろうじて咲いている道を突っ走っていく。

念のため昨日沙織に教えた道順で走る。行き違えてもいけないからだ。


走って走って、アパートに着いたのは9時15分だった。思えば携帯を鳴らした方が早かったかもしれない。


ドアのチャイムをならし、反応を待つ。反応がない。ノックをする。反応がない。


仕方ないので携帯を鳴らす。寝ぼけ声で沙織が出た。

「部屋の前まで来てるんです。開けてください!」

と言うと、がさごそ音がして、鍵が開いた。

沙織はまだうとうとしているようだ。

そんな沙織から、担任の教師の名前を聞き出す。

そして学校と書かれた番号を探し出すと、電話をかけた。

電話はすぐに繋がった。

担任の教師の名前を出し、代わってもらう。

「いつもお世話になっております、倉田沙織の母ですが」

『あぁ、倉田さん。今ちょうどこちらから電話をしようかと思っていました』

あぁ、間に合ってよかった。

「娘が風邪をひいたらしくて、今日はお休みさせようと思いまして」

担任はのんびりとした口調で言った。

『あぁー、そうですか。わかりました。お大事に』

担任がそういうと俺は静かに電話を切った。

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