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ブラを買いに店に入った後、誠一郎に言われて気づいた。

「常連さんのお店に男と入って平気なの?」

そう言われればそうだ。何の考えもなしに行動していたが、男と行くイコール彼氏と思われてもしかたがないこと。

ホントに、何も考えていなかった。

ただ、誠一郎が言うほど抵抗はなかった。それは誠一郎の中身が自分であるせいもあったかもしれない。

彼氏と思われるならそれでいいや……安野にはどうせ届かぬ想いだ。

誠一郎と一緒にいると、なぜか安心できたし、勇気ももらえる。安野に対するドキドキとは正反対の気分だ。


一旦アパートへ帰り、服を制服に着替えた誠一郎を駅まで送る。

誠一郎は自転車を押しながら笑っていた。

その笑顔が何故か眩しくて、私は目を細めた。



「じゃあ、またね」

駅の構内に入って行こうとする誠一郎をなぜか呼び止めてしまった。

「なに?」

笑顔で誠一郎が振り返る。

「な……なんでもない」

「そうか?ならいいんだけど。またね」

「うん……またね」



なぜ呼び止めてしまったのかはわからない。



わからない――




私はアパートに戻ると服を脱いだ。

ずいぶん身体も鍛えられてきた。お腹もほとんどひっこんで、ベルトの上に若干乗っかるかな、くらいにはなった。

顔の肉も落ち、しっかりした顔立ちになってきた。前と違ってあごもラインがはっきりしてきた。

あと一息だ。



私は自転車にまたがると、今日もジムに向かうのだった。





「本宮くんもずいぶんスリムになったねぇ」

宮本さんが嬉しそうに言う。

「はい、ズボンがほとんどサイズが違ってしまって、リサイズしてもらいました」

「雨の日も晴れの日も頑張って通ってきているからね」

うんうん、と宮本さんが頷く。

すると、向こうから安野が歩いてきた。

「お疲れ様です」

そう一言いうと、ふいっと別の場所へ行ってしまった。

「ありゃりゃ、喧嘩かい?」

宮本さんがそう言った。

「喧嘩というか、私が勝手にいろいろ言って怒らせてしまっただけです……」

宮本さんはうんうんと頷くと、

「若いときはいろいろあるもんです。悪いと思っているなら素直に謝ってみたらいかがですか?」

「そうですね……でも、相手にされないかもしれない……」

「精一杯誠心込めて謝れば、自然と相手には伝わるものですよ」

「そうですね……私、謝ってきます!」

そう言うと私は安野の後を追った。


「安野くん……」

安野はスルーしようとする。

「安野くん、本当にごめんなさい。私、安野くんの気持ちも考えずに発言してた!」

安野の手が止まる。

「沙織のことも、わかった風な口を利いてごめんなさい!本当にごめんなさい!」

安野が口を開いた。

「俺も……先輩がよかれと思って話をしてくれたのに、勝手に怒ってすみませんでした」

「安野くん……」

「沙織ちゃんのことを言われると、頭がカッとなって……」

安野は俯いていた。

「俺、沙織ちゃんのこと、マジみたいっす……」

それを聞いた私は平然なふりをして言った。

「私は安野くんを応援しているよ」

「ありがとうございます!」

やっと安野が顔をあげた。

「さっ、先輩、身体動かしましょうか!!」

それから二人で身体を動かした。





しばらくは誠一郎と会うこともなく過ごした。電話は毎日習慣のようにしていたが、私は残業が続き、ジムに通って毎日を過ごしていたので会えるタイミングがなかった。

相変わらず私の部屋へ来てゲームをしているようだ。

ゲームの数が増えているのでわかる。


誠一郎と食事に行ってからもう1ヶ月が過ぎている。外は薄曇りで寒い日が続いていた。

私は相変わらず自転車通勤、ジム通いを続けていた。

体重に変動はなかったが、お腹回りがすっきりしてきたのはわかる。

洗顔も髭そりも入念にしていたので、ずいぶん清潔感のある男になってきたと思う。


そんなある日、私はとんでもない光景を目にした。

安野が誠一郎と手を繋いで歩いていたのだ。

一瞬しか見えなかったけど、間違いない。

私はショックで、その日はジムに行けなかったのだった。

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