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沙織が珍しく早く帰宅した。

俺は

「なにか食べに行こうよ!」

と誘う。

たまには沙織とデートらしいことをしてみたい。そう思ったのだ。

塾なんて知らない、サボっちゃえ。

最初は気乗りしていなかった沙織も、俺が懸命に誘ったので重い腰をあげた。

「なに食べますか?」

この4ヶ月、無駄遣いもせず貯まったお小遣いは約四十万円。普通の高校生にはあるまじき金額だった。

俺は無駄遣いを一切しなかった。メイクもわからずにしていないから化粧品はいらないし、服も有り余るくらいあったので買わずにいた。


「たまにはお高いフレンチとか、どう?」

行ったことないくせに言ってみる。

「そうだなぁ……じゃあ、華麗亭のディナーにしようかな。予約してみる」

沙織が手際よく予約を入れる。

「お、俺テーブルマナーとかわからないけど大丈夫かな……」

今さらになってビビる俺。

「そんなの、適当でいいんじゃない?七時に予約入れたから、それまでどうする?どこか行く?」

「じゃあ、じゃあさ、ゲーセン行こうよ。プリクラ撮ろう!!」

「えー?プリ?まだ痩せてからのほうがいいな……」

洗面台の鏡を見ながら沙織が言う。

「充分痩せたって!自覚あるでしょ?」

確かに、痩せていた。頬についていた余計なお肉がなくなり、二重あごも解消されていた。

ズボンはブカブカになったらしく、ベルトできっちり締めてあった。

俺は学校帰りで制服のままだったので、服を買うついでにゲーセンに行くことにした。



服はすぐに決まった。沙織がいつも行っていた服屋があり、そこで一揃え購入し、着替えた。カットソー?とかいうものに七千円もだして買った。

いつも俺はミスタービッグスというディスカウントショップで五百円くらいのシャツを買って着ていたから、超ビビりながら買った。

コーディネートは沙織と店員さんがしてくれた。

九月の空の下、ちょうどいい気温、靴まで揃えて買った。

ブーツに二万円とか、俺の中じゃありえねー値段だったけど、沙織が満足している様子だったのでよかった。

ついでに沙織の服も買おうかという話になったが、沙織が行く店、行く店高いお店だったのでやめておくことにした。

「わたしだっておしゃれしたいのに」

と膨れる沙織が可愛いなと思いながら、街中を歩いた。

途中ゲーセンに寄り、ドラムの達人をして遊んだり、車ゲームをして遊んだりして、最終的にプリクラに行き着いた。


どうせ撮るならラブラブで撮りたいと思い、沙織にくっつくが、沙織が嫌がったので普通に撮ることにした。

やはりまだ、自分の本体がおっさんといることに抵抗があるようだった。

落書きコーナーへ移動すると、二人で落書きをしまくって印刷を待った。


実はプリクラを撮るのは二回目だった。

初めてのプリクラは由美子と瞳と撮った。

落書きできるコーナーに感動してめちゃくちゃ不審がられた。

プリクラは手帳に貼った。

カレンダーの今日の日付のところに。


初めて好きな人と撮ったプリクラ。大事にしよう、と思った。


その足でそのままフレンチのお店へ行った。


お店はこじんまりした感じだが高級感に溢れており、俺は気後れした。

沙織が慣れたようにずんずん奥へ入っていくのについていくのがやっとだった。


慣れたように席につく沙織の真似をして座る。

コースはもう頼んであるらしく、ナプキンを膝にかけると料理を待った。


待っている間、俺はひとしきり学校でのことを話した。

由美子と瞳のことや、授業のこと、担任の先生が怖いこと、いろいろなことを話した。

沙織はうんうん、と相づちをうち、楽しそうにしていた。


来てよかった。


そう、思った。

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