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沙織と電話してよかったな、と思う。

相原のこともしっかり受け止めて考えてくれた。沙織にはぼっちの気持ちはわからないようだったが、

『あんまり無茶して嫌われたら一緒なんだからね!!』

と激励を受けた。


相原とは相変わらずで、ときどき昼休みに一緒に弁当を食べた。毎回だと気を使わせるし、由美子たちのこともあるし。まだ今の段階では由美子たちと接触するのは早いと思った。

ぼっちから抜け出すって、相当な労力を必要とするものだ。

俺みたいに、なんの前触れもなく、やむを得ずなんてパターンはそう多くない。

這い出るにはそれ相応の覚悟も必要とするものだ。

相原にはまだそういう覚悟ができない。少なくとも俺はそうだった。

まずは友達になるところから、だ。

塾でも話はするようになったが、主に勉強の話が中心で、雑談をすることがなかなかない。

それは学校にいったらさらに輪をかけて勉強のことしかしゃべらなかった。

弁当をつついていても、勉強の話が中心。

俺はもっと相原と下らない話をしたりしてみたかった。


由美子が言う。

「沙織、なんで相原に構うの?」

「そうだよ、友達なんていらないって顔に書いてあるじゃん」

瞳も合わせる。

「そんなことないって。友達欲しくないなんて普通思わないからさ!」

「でも、私たちのこと忘れないでよ」

「忘れるわけないじゃん」

俺は敬語を使わなくなっていた。

――友達、だから。



昼休み、またしても弁当を開いた相原の横に座って、俺も弁当を食べていた。

「――どうして倉田さんは私に構うの?」

ふいに相原が聞いてきた。

「そりゃあ友達になりたいからよ」

「私と友達になってどうしようというの?」

「そりゃあ、みんなで甘味処に行ったりして、楽しくやろうと……」

相原は突然弁当を閉じた。

「私は群れるのが嫌いなの。そういうお誘いならよそにいってもらえる?」

「でも、みんなといると楽しいよ?」

「私は楽しくない」

そう言い残すと相原はどこかへ行ってしまった。


教室に戻り、由美子と瞳に、今あった出来事を話して聞かせた。

「そりゃああんたが悪いわ」

と由美子。

「一人が気楽って人もいるんだし、沙織が悪いよ」

「そうかなぁ……私は由美子と瞳がいることでずいぶん助けられていて、その感触を味わって欲しいだけなんだけど……」

「それが余計なお世話だって言うの。懲りたら相原さん追っかけるの、やめなね」

由美子はそう言ったが、俺は諦めがつかなかった。

一体いつからぼっちなんだろう。

俺はそれを調べることにした。


まずは中学が一緒だった子にアタックする。

中学の頃にはすでにぼっちだったようだ。

その子に頼んで、小学校の同級生に電話してもらう。

すると――

小学三年生までは普通に友達がいたことがわかった。

三年生から四年生の間になにかなかったか、と聞くと、そういえば、と彼女は言った。

『相原さんの親友だった子が、事故でなくなってるんだよね……あれって三年生の三学期くらいだったような……』

ビンゴ!!

それが原因で彼女は一人でいるのだ。

これは俺の勘だったが、遠からず当たっているはずだ。


俺は翌日再び相原の横に座った。

「相原さん……私ね、いなくなったりしないよ」

相原はビクッとした。

「な……なにをいきなり」

「私は事故にあったりしない、ここにいるよ」

相原はすごい剣幕で怒鳴り散らした。

「誰になに聞いたかしらないけど、知ったかぶりしないでくれる?!」

ビンゴだ!!

「相原さん、そうやって殻に閉じ籠って、友達がホントにそれで嬉しいと思う?」

「そ、それは――」

「とりあえず、私と友達になってください」

俺は告白するように頭を下げて右手を差し出した。

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