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俺は徹底して安野のことを無視し続けた。
最初は熱心だったメールも、一週間も経てば止みつつあった。
俺は相変わらずの生活を続けていた。
塾へ行く前にアパートに寄り、ゲームをしてから塾へ向かった。
塾にはクラスで一番おとなしい相原がいる。最近積極的に話しかけているが、反応はいまいちだ。だが、それでもめげずに話しかける。
なぜなら、彼女は俺と同じ、ぼっち臭がするからだ。
普段女の子と話すときはどもってしまったり、敬語になってしまったりの俺だったが、相原にはそれを感じなかった。
むしろ友達になりたいくらいだ。
わざと隣の席に座ったりして徐々に距離を縮めていく俺。
ぼっちだったからわかるんだ、一気に距離を縮められるとビビりモードに入ってしまうということが。
そうして隣の席を陣取ったわけだが、今日はいつもとは違って、相原のほうから挨拶をしてきた。
俺は喜びいさんで、相原に話しかけまくった。
さすがに迷惑だったらしく、最後は返事もしてくれなかったが、よしとしよう。
俺はぼっちの味方だ。
塾に行くことにより、俺の門限は十時半までひきのばされていた。
俺はその日、なんとなく塾に行きたくなくて、アパートでお菓子を食べながらゲームをしていた。最近はまっているRPGのゲームをしていたのだ。
そこへ、ジムを終えた沙織が帰ってきた。
「おかえりなさい」
と言ってそちらを見ると、なんと安野の姿があった。沙織がジムのあと宅飲みをしようと声をかけたらしかった。
それだけ二人の関係は良好なのはいいことだが、俺は心の準備もなにもしていない状態で安野に会う形となってしまった。
突っぱねたことを謝るべきか、否か。
否だ。俺は何にも悪いことはしていない。
――と思うのだが……
安野は私を見ると、少しひきつった笑顔をこちらに向けている。
仕方がない。迷惑だと言ったきりメールを無視し続けたんだから、当たり前だろう。
とりあえず二人は家にあがると、宅飲みの準備を始めた。
俺は、沙織がビールを飲んでいる姿を見て、懐かしいな……と思っていた。
俺は、ジュースで乾杯に付き合う。あとはお愛想を振り撒いてひたすらゲームに興じた。
二人の会話のほとんどが、係長の話だった。
いやー、あの人にはいつも困ってたよ。思い出した。帰り支度をしているといきなり今日締め切りとかいう仕事を丸投げしてきたり、かなり困ったちゃんであった。当時はどうせぼっちだし、残業代稼がなきゃということで、一人夜遅くまで頑張ってたっけ。
「係長、無理矢理仕事押し付けてきたりしてない?」
思わず俺は会話に入ってしまった。
「無茶ぶりはするけど、いまのところなんとか気にしない程度」
と言う沙織に、
「あの人は意地が悪いからね」
と言った。
「えっ、なになに?係長のこと知ってるの?」
安野が入ってきたが、続けてしまった。
「あの人はどうせまた飛ばされるんだろ」
「えっ、なんでそんなことまで知ってるの?本宮さん、そんなことまで話してるの?」
悪気のない笑顔。
「ま、まぁ、一緒にいることが多いと耳にするというか……」
俺はなんとか切り抜けた。
沙織、何とか言ってやってくれ!!さっきから俺しかしゃべってないぞ!
「そ、それで、最近どうです?仕事のこととか、本宮がしっかりしているか心配で」
安野は俺の目を見て言った。
「最近の先輩は周りともうまくやっているし、別人みたいだとか。あ、これ、悪口じゃないですよ」
無邪気な笑顔で答える安野。
「別人……」
俺がその言葉にショックを受けていると、さらに続けた。
「仕事にもやる気があって、バリバリだし、人が変わったみたいだって話ですよ」
安野は無邪気にそう言ったが、沙織と俺にはのしかかる暗雲だった。
「具体的に誰がどう言ってるか教えてくれる?」
やっと沙織が口を開いた。
「えっ……と、みんな悪気があって言っていることじゃなくて……」
「それはわかっている。ただ、純粋に誰が何を言ったか知りたかっただけだよ」
安野は途方にくれた。




