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翌朝は誠一郎には出会わなかった。時間が少しずれたかな?


今日も手作り弁当を下げて自転車で爽快にはしっていく。

最初はよたよたしていたのが嘘のようだ。


会社につくと大きな声で

「おはようございます!!」

と言いながら席につく。

周りは少し戸惑いながらも

「おはようございます」

と返してくれた。


どうも調子が狂う。私が挨拶をすればするほどに遠巻きになっていく。


そんな中でも普通に接してくれているのが安野だった。

「おはようございます。先輩」

このにこやかな笑顔に癒される。


安野といるとホッとする。

冗談を言い合ったり、笑いあったりできる。


たった数日一緒に過ごしただけなのに、私はどうも安野に好意を持ってしまったらしい。


とはいえ、好意以上のなにかではなくなんとなく、いい人だな、と思う程度だった。


今日も昼ごはんはいっしょに屋上でとった。

安野は本当に私によくなついていて――こう表現するのはよろしくないが――とにかく好意的に接してくれて、私はとても助かっていた。

「先輩、今日は先輩ん家で飲みませんか?」

私は二つ返事で返した。

嬉しかったのだ。

誠一郎の身体になって以来、心を許せる人がいなかった。だから、家に呼べる友達が出来たことを心から喜んだ。


今日は残業しないで帰ろう。

そう決めて二人で頑張って伝票を入力し終えた。


終業なチャイムが鳴り、二人して

「お疲れ様でしたー」

と会社を後にした。


帰り道のスーパーでお酒をしこたま買い込み、惣菜コーナーでつまみをいくつもチョイスした。


自転車のかごに乗せると、アパートまで歩いた。

道中、安野が係長の真似をしたりして、笑いながら自転車を押した。

歩きだと少し距離を感じたが、安野がいれば道中寂しくもなかった。


そうして帰ってくると、鍵を……開いていた。


誠一郎がのんびりお菓子を食べながらテレビを見ていた。

「あ……誠一……じゃなかった、沙織、来てたんだ?」

「はい、今日は塾の申し込みだけしてきて、あとは帰るところで……って、安野くん?」

誠一郎は驚いた顔をした。

「先輩、彼女さんですか?」

「いやいやいや、こいつは半分居候なようなやつで……」

「俺の話とか、しててくれたんですね」

さっきの「安野くん?」をいい方向に勘違いしてくれたようで、よかった。

「紹介します。こちら、私の……妹分の倉田沙織。沙織、こちら安野さん」

誠一郎は少し躊躇しながらもお辞儀をした。

「本宮がいつもお世話になっております」

安野は目を輝かせて返した。

「こちらこそ、いつも先輩にはお世話になっております。いやー、沙織さんですか!こんなかわいい子つかまえて、先輩も隅に置けませんね!」

「だから、彼女でもなんでもないって」

焦って言い返す私。

その挙動が余計にそう思わせているようだ。

誠一郎は反論もしない。


私は嫌だった。こんなおっさんの、しかもでブスのおっさんの彼女と言われることが。


と、思っている側から、安野は誠一郎とメアド交換をしていた。

誠一郎、もっと警戒心を持てよ!!


そんなわけで、二人は知り合いに……いや、元々知り合いだったんだから、なんというのか、とにかく、友達になった。


電話番号まで交換して、こいつらラインでもやる気なのか?と思った。


しかし誠一郎はまだラインを使いこなせていないはず。



と思ったら、最近は由美子と瞳とラインで話しているらしい。

今聞いたぞ、そんな話。



ともかく、だ。二人はこうして出会ってしまったのだった。

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