表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/112

18

翌朝、母親に塾に行きたいと伝えた。

母は

「いいけど、今まで成績を気にしたことなんてなかったのに?」

と聞いてきた。

「その、授業についていけなくなりまして……」

「そんなかしこまらなくて大丈夫よ。行きたい塾でもあるの?」

「それは、まだ……今日友達に聞いてみようかと思いまして」

「それはいいけど、最近言葉遣いとか、おかしいわよ。他人じゃあるまいし……」

いえ、他人です。

そう言いたかった言葉を飲み込んで、俺は茶碗をさげた。

「行きたい塾が決まったら、お母さんに言いなさいね」

と言いながら母は台所に戻っていった。


遊べなくなるのは辛いかもしれないけど、今、入れ替わった状態では、由美子たちと一緒にいることもある意味拷問だった。

だから、塾に行くと言えばそれから解放されるとも思ったのだ。


学校につき、いつも通り由美子と瞳が絡みにやって来る。

「私、塾行こうと思うんだけど、どこかいいところ知りませんか?」

「知りませんか?って、やっぱりなんか他人行儀だよ。沙織、ほんとはなんかあったんじゃないの?」

「そうだよ。今まで普通にタメ口だったじゃん」

「私たち親友でしょ?何かあったなら、話を聞くから言ってみて」

「そうよ、そうよ。何でも聞くからさ」

二人は俺の肩に手を置くと、顔を近づけてきた。


「ごめんなさい、これは癖みたいなものでして……」

「癖?」

「大学の面接を受けるかもと思って、それで……」

我ながらいい言い訳を使ったな、と思う。

だが、二人は納得がいかない様子だ。

「ぜっったい何かおかしい」

「そうよ、私たちにも言えないことなの?」

思わず俺は、入れ替わったことを話しそうになった。

だが、話さなかった。


信じてもらえるかも怪しかったし、言ってしまってからの周りの反響が怖かったのだ。


「なんでもないよ、気にしないで」


そして授業が始まった。

今日はやけに下腹が痛い。腰も痛い。

授業に専念できないほどだった。

休み時間にトイレに行って、その理由がわかった。

生理だ。生理がきちゃったのだ。

洗面台のところで待っている瞳に聞く。

「ねぇ、なんだっけ、生理がきちゃったみたいなんだけど、アレ、持ってる?」

「アレ?」

「生理の時パンツにつけるやつ」

「あぁ、ナプキンね、持ってる、持ってる」

瞳はそう言うと、ちょっと待っててと言って走って行った。

しばらくして瞳が戻ってくる。片手にはポーチを持って。


「はい、これ。昼用しかないんだけど」

「ありがとう」

と言って、個室に入ろうとして、ふと気づいて聞いた。

「これ、どうやって使うんだっけ?」





トイレの一件以来、二人の疑いの目はさらに厳しくなった。


俺は神にも祈る気分で一日を過ごした。


ちなみに、塾はこのクラスで一番おとなしそうだった相原に聞いた。

相原は学年でもトップ争いをしているくらい勉強熱心だったから、そのせいもあって彼女に聞いたのだ。


彼女が通っているのは、早稲本予備校。

名前には聞いたことがあるが、距離的に行ける場所なのかどうか聞いてみた。

すると、うちへ帰る一つ前の駅から徒歩五分の距離にあることがわかった。

射程圏内だ。

俺はその予備校に決めた。


由美子と瞳には、

「予備校に通うことにしたから、あまり遊べなくなる」

と伝えた。

二人は、

「えぇーっ、なにそれー!!」

と批難したが、もう決めちゃったもんね!!と思った。


今日は塾前最後の日と称してカラオケ大会をすることになった。


アニソンしか知らないけど、大丈夫かな……?


俺は最後までためらった。

だがしかし、二人の勢いに押されて結局カラオケに入ってしまったのだった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ