15
ジムに行くと、トレーナーの宮本さんという人が出てきて指導についてくれることになった。
最初はストレッチから。
宮本さんは60を過ぎていそうなのに、ピンピンしていた。
ストレッチで、身体を前に倒そうとするが、腹の肉がじゃましてうまくまげれない。
どちらかと言うと背筋のほうが得意だった。それでも人並み以下だけど。
座ってのストレッチも、腹の肉が邪魔やら、筋力がないやらで、ほとんどなにも出来なかった。
「本宮さん……焦らずいきましょうね」
宮本さんに慰められる。
「私、痩せれますかね?」
その質問に、やや間があって、
「本宮さんのやる気次第では、痩せるでしょう」
と宮本さんが返してきた。
私はそれを前向きに受け取り、
「頑張っちゃいまーす!」
と言った。周りが一瞬固まった。
え?なに?私なにか変なこと言った??
「では次に、基本としてウォーキングマシンにトライしてもらいます。最初はゆっくりでいいですから、やってみましょう」
言われて私はマシンの上に乗った。
最初はゆっくり……と思っていたら、思ったより速度が上がる。
「もっと、もっとゆっくりでいいですから」
と宮本さんは言うが、止まらない。
私は走っていた。
走るたびにお腹がぶよんぶよん動くのを感じる。
苦しい。まだそんなに経ってないはずなのに、息が上がる。
「本宮さん、落ち着いて、徐々にゆっくりに、あっ!!」
「あっ!!」
ついに私は転んでしまった。
マシンのあちこちに身体をぶつけた。
「痛った〜い!もうやだ!」
宮本さんを始めとする周りの空気が固まった。
「あらやだ。」
私も敏感にそれを感じとる。
空気をぶち壊してくれたのは宮本さんだった。
「本宮さん、焦らず、無理せずですよ!」
「はい!!」
宮本さんのおかげで不審に思われずに済んだ。今度から言葉遣いには気を付けよう。
今日は初日ということで、施設内の色々なマシンを見に行った。
胸筋を鍛えるマシンや、ボート漕ぎのようなマシンもあった。試しに胸筋を鍛えるマシンを触らせてもらったが、微動だにせず。
「おっもーい!これ、絶対無理くない?」
宮本さんはあはは、と笑うと、次にそのマシンを使う人に譲った。
その人はマッチョというわけではなかったが、普通にマシンを使いこなしていた。
それを見て感動する私。宮本さんはそのくらいで驚いていたらいけない、と足の筋肉を鍛えるマシンへ連れていった。そこでは女性会員もマシンを使ってトレーニングしていた。
これならできそう、と宮本さんにお願いしてマシンを使わせてもらった。三回目まではできたのだが、四回目には足がぷるって漕げなかった。
「本宮さんは、まず基本的な動きとストレッチ、ウォーキングから始めましょうかね」
宮本さんは私を総合的に見て言った。
息が上がっている私は、
「はい、よろしくお願いします」
と途切れ途切れに言った。
「毎日いつ来ていつ使ってもいいプランですからね」
「はい!」
「ジムは十一時で終了するので、そのつもりでお越しください」
「はい!」
なんだか、何も出来なかったけど、希望の光が差したように思った。
帰り道、スーパーで買い物をして帰った。鶏の胸肉やささみ、そしてサラダの材料。それらを購入すると、アパートに帰ってきた。
そして弁当箱を探した。
ない。どこにもない。
誠一郎に電話すると、弁当箱はどこにあるのか聞いた。
『そんなもん、ないですよ』
「明日からダイエット弁当を始めるのに、弁当箱ないんじゃ意味ないじゃん!」
『そ、そんなこと言われたって……』
「もういい!タッパーにいれていくから!」
『最初からそうすれば……』
「うるさい!」
誠一郎が言葉を発していたが、無視して電話をきった。
そしてパソコンを睨みながら、私のクッキングははじまったのであった。




