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翌朝。

俺は目覚ましの音で目を覚ました。


ずいぶん着替えも慣れてきたし、姿見を見るのは苦じゃなかった。

むしろ、喜んで見た程だ。

今までは姿見なんて使うこともなかった。

というのも、今までデブで姿見なんて見ようものなら、発狂してしまいそうになるからだった。


制服にさっと着替え、階下へ降りていく。

「沙織ー!早く起きなさい!」

ダイニングに入るのと同時に母が叫んだ。

「もう起きてますよ」

そういいつつ、定番と言われた席につく。

今日のご飯はオムレツとベーコン、ほうれん草の和え物だった。

毎日仕事もしながら家事をこなす母を、いつの間にか尊敬し始めていた。

「はい、沙織、お弁当ね」

母は完璧である。

娘の俺が何にも手伝わないことが、気が引けてきた。

今日は帰ったら料理の手伝いでもしてみよう。

そんな気分にさせられた。



駅までの道で沙織とすれ違った。

沙織は大きな声で言った。

「おはよう、誠一郎!」

だがしかし、俺は返事が出来なかった。今までもそうだが、どうも挨拶は苦手らしい。

その上、『誠一郎』と言ってくる相手にばか正直に「おはよう、沙織」などと、周りが不審におもうことをしたくなかったのだ。

ゆえに、無視して学校へ向かった。


学校へつくと、携帯が光っていることに気づいた。沙織からである。

『ちょっとー、無視はないんじゃない、無視はー。今日も伝票入力だぜ』

と、書類の山をバックにピースサインをしている自分の写真を送ってきた。

なに考えてんだ、あの馬鹿は……


とりあえず朝の挨拶をしなかった件について、返事をしておいた。


そこへ、由美子と瞳がやって来た。

「昨日さぁ、どこに行ってたの?」

由美子が強い口調で聞いてくる。

「え……家にいたけど」

「嘘つきは泥棒の始まりってよく言うよねー」

見下げたかたちでものを言う瞳。

「家にいたなんて、なんでそんな嘘つくんだよ?!」

肩を小突かれる俺。

こえぇー!女子高生こえぇー!今すぐ逃げ出したいよ!

「嘘……ついてないよ?」

恐る恐る言う俺。

「じゃあ、これはなんなわけ?」

そこには昨日アパートの鍵を開けようとしている写真が撮られていた。

「彼氏?」

瞳が聞いてくる。頭をぶんぶんと横に振る。

「じゃあ、これはどういうこと?」

追い詰められた俺は、

「し、親戚のお兄さん家。お母さんに言われて、ちょっと手伝いに!!」

「ふうん、親戚、ねぇ……」

そこでチャイムがなった。

私はチャイムに救われた。ありがとう、チャイム!!


授業中は言い訳を考えるのに必死だった。


しかし、そこまで気に病む必要はなかったのかもしれない。

なぜなら、次の休み時間には、今日は甘味処に寄って帰ろうという話になったからだ。

しぶしぶ了承する俺。

俺が嫌なのは、会話についていけず、ぼっちになることだ。

沙織にそんな経験させることは出来ない。

会話に混ざるしかないのである。


放課後、俺は瞳と由美子と甘味処までやって来た。甘味処は繁盛しているようで、席は最後の一つであった。

「ラッキー」

「まじ、ラッキー」

口々に言いながら座る俺たち。

メニューを見ても、いまいちピンとこない。

「沙織、いつもの食べないの?」

「いつもの?」

「そう、いつもの」

いつものって何だよ!名前で言えよ!!

若干焦りながらメニューに目を通す。

「たまには違うメニューも食べたいですからね〜」

なんて言いつつ、メニューを漁る。

クリームあんみつ……これなら食べれるかもしれない。

「決めた!クリームあんみつにする……」

「なんだ、結局いつもと同じじゃん」


目の前に置かれる美味しそうなデザートたち。

俺はわき目もふらず、クリームあんみつに夢中になったのであった。

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