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今日も博人からメールがきた。

『今日はどこで遊ぶ?』

昨日のことがあって乗り気じゃなかった俺はメールを無視した。

そのあと何度も、

『元気ねーの?』

とか

『連絡待ってます』

とかメールが入ってきたが、ことごとく無視した。博人が悪いんじゃないのに……


多少の罪悪感はあった。

俺の一方的な思いで連絡を無視していたから。





学校が終わり、帰ろうとすると、校門のところで呼び止められた。

博人だった。


「なにメールしかとこいてんの?俺、なんかした?」

ブンブンと頭を横に振ると俺は答えた。

「元カレが、彼女を連れてきたの……」

そこまで言うと、涙もろい俺はポロポロと泣き出してしまった。


博人はそんな俺を庇うようにして、人目につかないところまで連れていってくれた。

「そうか、そんなことがあったんか。辛いね」

また後ろから安心するように包み込んでくれた。

俺はその心地よさに少しずつ涙が止まっていき、やがて泣き止んだ。


その間、博人は何も聞かないでただ側にいてくれた。


沙織のことで、こんなに泣くと思わなかった。

それからはすっかりアパートに寄り付かなくなってしまった。


毎日、博人と過ごしていた。

博人はいつも校門のところで待っていて、俺は自転車を押しながらゲーセンやカラオケに行ったりした。


一月ほど経った初夏の日、

「俺んちに遊びにこねぇ?」

と言われた。


その意味はわかっていた。

だが、俺には

『大切だから、キスもしない』

と言っていた沙織が頭をよぎり、素直にうん、と言えなかった。


そんな様子を見ていた博人は、

「どれだけお前のために時間を費やしていると思ってるんだよ!そろそろ振り向いてくれたっていいじゃないか!」

と叫んだ。

二人のやり取りを聞いていた学校の生徒たちがざわめいた。


そんな中で由美子と瞳が駆けつけてくれた。

「ちょっと博人、そんな風に簡単に沙織の初めてはあげられないわよ」

「は、初めて……?」

「そうよ!沙織は今どき珍しくキスもまだなんだからね!」

庇ってくれているのか非難しているのかよくわからないけど、とにかくこの場は収まった。


その日は久しぶりに由美子と瞳との三人で遊ぶことにした。

まずカフェでお茶をして、それからゲーセンに。

プリクラをたくさん撮り、三人でわけあった。

そのあとはぶらぶらウィンドウショッピング。

久しぶりに女の子だけの放課後は楽しかった。


由美子の恋の話や、瞳の振られた話を聞いているうちに、俺は涙がでてきた。

デパートのベンチで慰めてもらう俺。

「やっぱり博人とは付き合えない……!!」

その時は脳裏に沙織の優しいキスを思い浮かべていた。

額にほんの少し触れるだけのキス。

本当に優しくされていたんだなと実感する。

今となってはもう遅いのかもしれない。


俺は涙を止めることができず、ただひたすら泣いた。

由美子と瞳はただ一緒にいて、背中を撫でてくれたのだった。


翌日、博人からのメールがきた。

『昨日はごめん。俺は沙織のこと傷つけるつもりはなかったんだ。軽はずみでごめん。』

そんな博人に俺が返した返事は、

「ごめん。元カレのこと思い出にはできない。今までいろいろありがとうね、博人」

冷たいかもしれないが、事実だ。これを隠したまま付き合うなんてできない。

俺はけじめをつけよう、そう思った。

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