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今日も博人からメールがきた。
『今日はどこで遊ぶ?』
昨日のことがあって乗り気じゃなかった俺はメールを無視した。
そのあと何度も、
『元気ねーの?』
とか
『連絡待ってます』
とかメールが入ってきたが、ことごとく無視した。博人が悪いんじゃないのに……
多少の罪悪感はあった。
俺の一方的な思いで連絡を無視していたから。
◇
学校が終わり、帰ろうとすると、校門のところで呼び止められた。
博人だった。
「なにメールしかとこいてんの?俺、なんかした?」
ブンブンと頭を横に振ると俺は答えた。
「元カレが、彼女を連れてきたの……」
そこまで言うと、涙もろい俺はポロポロと泣き出してしまった。
博人はそんな俺を庇うようにして、人目につかないところまで連れていってくれた。
「そうか、そんなことがあったんか。辛いね」
また後ろから安心するように包み込んでくれた。
俺はその心地よさに少しずつ涙が止まっていき、やがて泣き止んだ。
その間、博人は何も聞かないでただ側にいてくれた。
沙織のことで、こんなに泣くと思わなかった。
それからはすっかりアパートに寄り付かなくなってしまった。
毎日、博人と過ごしていた。
博人はいつも校門のところで待っていて、俺は自転車を押しながらゲーセンやカラオケに行ったりした。
一月ほど経った初夏の日、
「俺んちに遊びにこねぇ?」
と言われた。
その意味はわかっていた。
だが、俺には
『大切だから、キスもしない』
と言っていた沙織が頭をよぎり、素直にうん、と言えなかった。
そんな様子を見ていた博人は、
「どれだけお前のために時間を費やしていると思ってるんだよ!そろそろ振り向いてくれたっていいじゃないか!」
と叫んだ。
二人のやり取りを聞いていた学校の生徒たちがざわめいた。
そんな中で由美子と瞳が駆けつけてくれた。
「ちょっと博人、そんな風に簡単に沙織の初めてはあげられないわよ」
「は、初めて……?」
「そうよ!沙織は今どき珍しくキスもまだなんだからね!」
庇ってくれているのか非難しているのかよくわからないけど、とにかくこの場は収まった。
その日は久しぶりに由美子と瞳との三人で遊ぶことにした。
まずカフェでお茶をして、それからゲーセンに。
プリクラをたくさん撮り、三人でわけあった。
そのあとはぶらぶらウィンドウショッピング。
久しぶりに女の子だけの放課後は楽しかった。
由美子の恋の話や、瞳の振られた話を聞いているうちに、俺は涙がでてきた。
デパートのベンチで慰めてもらう俺。
「やっぱり博人とは付き合えない……!!」
その時は脳裏に沙織の優しいキスを思い浮かべていた。
額にほんの少し触れるだけのキス。
本当に優しくされていたんだなと実感する。
今となってはもう遅いのかもしれない。
俺は涙を止めることができず、ただひたすら泣いた。
由美子と瞳はただ一緒にいて、背中を撫でてくれたのだった。
翌日、博人からのメールがきた。
『昨日はごめん。俺は沙織のこと傷つけるつもりはなかったんだ。軽はずみでごめん。』
そんな博人に俺が返した返事は、
「ごめん。元カレのこと思い出にはできない。今までいろいろありがとうね、博人」
冷たいかもしれないが、事実だ。これを隠したまま付き合うなんてできない。
俺はけじめをつけよう、そう思った。




