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歓迎会も終わり、随時みな帰宅を始めた頃、酔っぱらってしまったすみれの介抱を私はしていた。
初めて飲むお酒に、量の調整がうまくいかなかったようだ。
まだ未成年。犯罪である。だがしかし、歓迎される側が飲まないっていうのもなんなんで、毎年新人さんには多くのお酒が振る舞われることになっているようだ。去年は歓迎会が終わったあとに入れ替わってしまったのでよくは知らないが。
帰り道を教えろと言っても朦朧とした意識で答えられないすみれ。
仕方がないので私のアパートで横にさせるようにしようと思った。
下心が全くないわけではなかったが、誠一郎のために、我慢することにしたのだった。
タクシーに乗せるのも大変だったが、降ろすときのほうが倍以上大変だった。
ほぼ意識のないすみれを立たせて引きずる。アパートが二階でホントに助かったと思った。
二階より一階のほうがいいにこしたことはないけど、一階で人が出入りするわずらわしさを考えると、やっぱり二階でよかったな、と思う。
なんとか引きずってベッドまで運ぶと、仰向けにすみれを寝かせた。
私は少し寒さを感じながらも、リビングにしている部屋でごろりと横になった。
布団がないせいか、ちっとも眠れなかった。
床につく背中が痛い。せめて枕が欲しいなと思い、誠一郎が買ってきたぬいぐるみにタオルを巻いて枕の代わりにした。
掛け布団のかわりにバスタオルで。
そうすると、いつの間にか寝てしまっていた。
朝、いい匂いがして目が覚めた。
すみれが起きて食事を作っており、その匂いで目が覚めたようだった。
「あっ、係長、おはようございます」
と声をかけてきた。
私はあちこち痛いところを伸ばしつつ、おはよう、と返事をした。
「ちょうど今食事が出来たところです。冷蔵庫の中身を勝手に使ってしまって申し訳ありません……」
「いや、いいんだ。すまないね」
「申し訳ないのはこちらの方です。昨日あんなに酔っぱらってしまって……」
「いやいや、いいんだよ。毎年誰かが犠牲になるみたいだからね」
私は笑いながらそう言った。
お皿にはスクランブルエッグとトマトとレタスがもりつけてあり、オレンジジュースと買っておいたグレープフルーツが半分に切って置いてあった。
「今パン焼けますから」
一昨日買っておいたロールパンを焼いていた。
手際がいい。
家庭的でいいな、と私は思った。
ちょっとぽっちゃりな分も含めて、私はストライクだな、と思った。
そんな自分をはたからみたら、どう思うんだろう?と思った。
自分には恋人がいる。とても好きだ。そう思っているのに、目の前の女性がこんなに気になる。
安野のときと違う点は、相手が異性だということだ。
叶えようとすれば、叶ってしまうこの思い。
誠一郎には絶対に言えない、そう思っていた。
それから約一月経って、なかなか会えない誠一郎を食事に誘った。
誠一郎はいつもと違って、おどおどしていた。
出会ったばかりの頃のように。
私は会社の中の話をいつものように誠一郎に報告していた。
すると、誠一郎が、
「ずいぶん倉橋さんの肩を持つけど、好きになったんじゃないの?」
と言ってきた。
私は、食べていたパンを吹き出しそうになりながら、
「そ、そんなことあるわけないでしょ」
と言ったが、内心心臓がバクバクいっていた。
すると、誠一郎の方も男友達が出来たという。友達と言っているが、どこまでが本当かわからなかった。
そんな帰り道、誠一郎が
「今まで通り部屋は使っていい?」
と切り出してきた。
「お好きなように使っていいわ」
と私は答えた。
夜は更けていった。




