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それから博人からは、一日最低三通メールが届くようになった。


「おはよう」

「今日の学校どうだった?」

「おやすみ」

この三通のメールで俺と博人は繋がっていた。

不思議な気分だった。あんなに沙織にご執心だった俺が、いとも簡単に心変わりしそうだった。


仏頂面のイケメンな博人。笑顔になるとたまらなく可愛い。

そのギャップが、俺を魅了した。


毎日のメールは徐々に増えていき、やがて沙織からのメールよりも博人からのメールのほうが多くなっていった。



ある日、校門前でいい男が誰かを待ってると騒動になった。

俺は気にせず自転車を走らせ校門を通り過ぎようとしていた。

「おい!」

と声をかけられ止まってみると、そこにいたのは博人だった。

「博人くん、どうしたの?」

「どうしたもこうしたも、お前の帰りを待ってたんだよ」

荷台に自分の荷物を乗せ、自転車をかわりに押していく博人。

強引すぎる……

「今日このあとの予定は?」

「七時から塾だけど……」

「あと三時間はあるな。どこいきたい?」

突然すぎて言葉が出ない。

「おい、どした?」

聞かれて慌てて、カフェに行きたい、と言った。

「カフェ?場所しらないなぁ。沙織ならわかる?案内してよ」

この人、人の都合なんて全く考えていない。


でも、とりあえず俺はカフェに案内したのだった。

北欧調の店内に、雑貨売り場がある、今俺の高校で一番人気のカフェだった。

少し考えれば、そんなところにのそのそ行かなかったのに、店内は俺の高校の生徒で溢れていた。


とりあえず案内されて席へ座る。私はケーキセットを頼んだ。飲み物はコーヒーで。

博人は意外にもパフェセットを頼んだ。

飲み物はオレンジジュースで。

「甘いもの、好きなんだ?」

と俺が問うと、博人はくしゃくしゃな笑顔をして

「うん、特にパフェは格別!お前にも少しやろうか?」

くしゃくしゃな笑顔に戸惑いつつ、

「私はいらない」

と言い切った。


勝手に待ってて、強引に出掛けるなんてわがまますぎ。

だけど、沙織とは違う博人の存在が、少しだけ、くすぐったかった。


「なんで待ってたの?」

と言う問いに博人はこう返してきた。

「会いたかったからだよ」

「それならメールくらいくれたらいいのに」

「びっくりさせようと思ってさ。実際、びっくりしたろ?」

「したはしたけど……強引すぎるよ」

「あー、ごめん。俺よく言われるんだ、強引って」

「歴代の彼女から?」

「ちげーよ!俺彼女いない歴イコール年齢だから」

さすがにそれは嘘だろう……

「あ、今俺のこと疑ったでしょ?」

「だったら?」

「俺の親友と電話すれば一発で信じれるよ」

「口裏合わせでもしてるの?」

そこにケーキセットとパフェセットが届いた。

博人はまたくしゃくしゃな笑顔で食べ始めた。

「うーん、美味しい!!これは今まで食べてきた中でも絶品だ!沙織も食べてみ?ほら」

あーん、してくる博人。

俺はいらないと言ったにも関わらず、

「ほら、早く!溶けちゃうよ!」

仕方がないから、あーん、してやった。沙織からもほとんどしたことがないのに。


パフェは確かに絶品だった。ケーキと半分こして食べた。

俺がクリームを一杯食べている瞬間に写メを撮られた。

「待ちなさいよ、それ、どうするつもり?」

「俺の待ち受けにすんの」

「恥ずかしいからやめて」

「えーっ、可愛く撮れてるよー?」

「そもそもなんで私が博人の待ち受けにされるわけ?」


「だって好きだもん」


博人ははっきりそう言った。

俺は慌てて

「私、彼氏がいるから、無理」

と言ったが、

「略奪愛かぁ〜。それはそれで奪い甲斐があるな」

と言い切ったのであった。

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