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一月後、デパート地下にて――俺はあるイベントの買い物に来ていた。

あるイベントとは、そう、バレンタインデーである。

小学生の頃、一個か二個もらうだけだったのだが、中学に行き、全くそういうイベントとは関係ない存在になっていった。

空気のような存在を目指していたので、そういう意味では成功していた。

友達?のような人がたまに話しかけて来るだけで、あとはホントに空気のような存在だった。

社会人になってからは、平野さんから義理チョコをもらえたくらいで、あとは何もなかった。


そんな俺が、今回は渡す側になってしまった。

だから、どんなチョコがあるかも知らない。今日は由美子と瞳とは別行動だった。由美子と瞳は、もっと安いチョコを買うといってショッピングモールへ行ってしまった。これは一人で決めるしかない。

初めてのバレンタインだから、豪華に劇的に決めたい。そう思っていた。


各店舗で試食を行っている。

俺はあんまり甘いものは得意じゃなかったのに、今は平気。やっぱり女の子の身体だからだろう。

いくつか試食して、ゴジバのショコラにするか、北海道生チョコにするか、さんざん悩んだ。

金額は構わないのだ。あとは味なのだが、さっぱりとしたショコラに、まったりとした生チョコ。どちらも捨てがたかった。

散々悩んだ末、行きついた答えは、

「両方とも買ってしまえ!」

だった。


私はその二つを包装してもらい、バッグへと押し込んだ。


出会ってから、既に十ヶ月たっていた。


初めてのバレンタイン、しかも貰ったことがほぼゼロだから、渡し方とか全くわからない。いつのタイミングで出せばいいのか……

これらは、明日にでも由美子と瞳に聞いてみることにした。





バレンタイン当日、俺は渡す計画をたてた。その日がやってきた。

沙織に電話する。

「今日ご飯食べにいこうよ!」

『いいよ』

「やったぁ!並木坂のフレンチいきたいな」

『お任せするよ』

俺はすぐに予約を入れた。



「遅い……」

もうすぐ予約の時間だというのに、沙織は帰ってこない。予約を一時間遅めてもらう。

それでも沙織は帰ってこず、俺は沙織に電話を入れた。

『ごめん、ちょっと急な仕事が入って』

「予約何時ごろにすればいいの?」

『八時かな。八時までには家に帰るよ』

「……わかった」

仕方がないので、八時に予約を入れ直す。


そして俺は待った。もうお腹はペコペコである。


八時ギリギリに沙織は帰ってきた。

急いでタクシーをよび、並木坂までとばしてもらう。店についたのは八時半だった。

「すみません。遅くなりました……」

店のウェイターにそう謝ると、

「いえいえ、大丈夫ですよ」

と言ってもらえた。


早速席についた。

コースはもう頼んであるので、店側に持ってきてもらうだけだった。

早速前菜がくる。俺はこの前菜がなんなのか、いつも楽しみにしている。


なぜか今日の前菜は格別に美味しい。

それはバレンタイン効果なのか、それとも店が美味しいのか。どちらかわからない。

二つ目の前菜も美味しかった。

スープは甘いコーンポタージュ。身体が温まる。

次に肉料理だ。ヒレ肉のステーキ。程よく火が通っていて、とても美味しい。

口直しのシャーベットをはさんで、魚料理。

スズキとムール貝の酒蒸しだった。

ちょうどパンも食べ終わって、デザートを待った。


その間にチョコを差し出す。

「えっ?これ、私に?」

「うん。気に入ってくれるといいんだけど」

「二つもいいの?」

「どっちも美味しかったから、買うの凄く迷っちゃって……」

「試食したんだ?」

笑いながら沙織が聞く。

「そうなんだよ。俺、あんな花園、行ったことがないから、超ビビったよ!」

俺はそうして懸命に店の様子などを語ったのであった。

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