3 決着。そして...
勝負は呆気なくついた。
「いくよ、金光」
その言葉と同時にピクシーが攻撃を仕掛けた。
ケイはピクシーが放った攻撃を刀で受け流すと、目にも留まらぬ速さでマリナに近付く。
そして、ピクシーを斬り伏せ、マリナの首筋に刀を近付かせた。
・・・だと思う。
反射神経が人並みな俺には、一瞬彼女の姿が掻き消え、気付けばマリナの側で刀を当てていた風にしか見えなかったのだ。
マリナも強いのだが、ケイはその上をいくのか。
一般人だとばかり思っていたのだが。
直ぐ側で、硬い何かがカランと乾いた音を立てて落ちた。
後から聞いたところ、これは鞘というらしい。
「これ以上、私たちの邪魔をすると、次は本気で殺しに行きますよ?」
何でだろうな、彼女が生き生きして見えるぞ。
マリナも怯えたように震えながら首を縦に振る。
ケイがそれを確認し手を離すと、ピクシーがいた場所に手を伸ばした。
何も残っていないと思ったそこは、微かに湿っていた。
「ルーグちゃん・・・・・・」
悲しい声で呟いたのを、ケイが聞き取ってしまい、悲痛の面持ちで彼女を見ている。
まあ、知っているわけないか。
「もう一度召喚魔法を使えば、あいつは呼び出せる。だから、お前が背負い込むようなことじゃない」
「え、そうなんですの?」
マリナ、お前は何で知らない?
成績が学年3位の癖に。
まあ、どんなに早くても、担任が許可するのは一ヶ月後になってしまうがな。
マリナと闘い、ケイの実力を見てしまった一ヶ月後。
「あ、あの、私、実家に帰りたいと思うんですけど・・・・む、無理でも勝手に行きますからねっ」
「何で断られる前提なんだよ」
あの時の気の強さは何処かに消え失せたようで、いつも通りになっていた。
「で、どうやって帰るんだ?」
「えーっとですね、この金光でぐさっと・・・」
「死ぬつもりか?」
「そういうことではないんですよ?ほら、この間ピクシーが消えたじゃないですか」
「それがどうした」
「ハルさんの言い分だと、元の世界に戻ったらしいじゃないですか」
「まあ、そう考えるのが妥当だと考えたからな」
「その時にですね、パアッと光ったんですよ。で、ピクシーは光となって消えたんです」
「・・・・・だから?」
結論が見えてこない。
「だからですね、正確には刺していないんです。金光が当たった所から光になっていったので、殺していないんです」
「つまり、試す価値はあると?」
「はいっ」
ケイがあまりにも自信たっぷりに言うものなので、こちらとしても危ないという理由だけで拒否する訳にはいかなくなった。
渋々承諾すると、不満そうに口を尖らせる。
「私は無理矢理連れてこられたんですよ。この位の権利はトーゼンです」
「・・・・・まあそうだな」
胸を張って言う彼女に、俺は何も言わなかった。
その次の日の午後。
俺らは本日は午前授業なので、この日に決行しようと決めていた。
「ケイ、絶対帰ってくるのですよ」
「マリナ。死にそうだからいい加減離してやれ。てか、お前は何故いる」
誰にも話していない筈なんだが、どこで聞いてきたのやら。
マリナは、ケイに抱き着き、離れる気配を見せなかったので、一応念を押しておく。
ケイは、苦笑いを浮かべながら、金光を取り出す。
それは、やめてくれ。
「丁度見かけましたので、お会いしに来ただけですわ」
渋々離したマリナは、仁王立ちで俺に言った。
何故そんなに偉そうなんだ?
「言っておくが、邪魔だけはするなよ」
「分かっておりますわ」
「じゃあ、ケイ、やるぞ」
「はーい」
俺らから距離をとってケイは、袋から金光を取り出し、切っ先を自分の胸にむける。
俺の隣で、マリナが息を飲んだのが分かった。
「ケイ!初めから胸をするな!失敗したら死ぬぞ」
「大丈夫です!」
それが一番怖いんだと言えるわけもなく、俺は押し黙りじっと彼女を見守る。
意を決して、ケイは胸に刀を突き立てた、
その瞬間を俺の目では捉えることができなかった。
気付けば、ケイの姿は目の前から消えていた。
マリナが、素の口調で尋ねた。
「寂しい?」
「どうだろうな」
ひょっとすると、そうなのかもしれない。
彼女が現れてから、毎日が退屈しなかったのだから。
抜き身の刀が、俺をあざ笑うかのようにキラリと光った。
ーー ーー
「だから、帰ってくると言いましたよね!」
「まあ、言ってたな」
彼女は、帰ってくるなりいきなり怒った。
「なら、確信犯なんですか」
「いつ帰ってくるか分からなかったからな」
俺のもっともな返答に、苦虫を噛み潰したような顔でぐぬぬと唸った。
あれから3年が経った。
魔法学校は、6年間なので俺は現在5年生である。
3年も経てば、帰って来ないのではという考えも首をもたげて来るだろう。
クラス替えをした際に彼女の居場所がなくなり、会話の中にも彼女の事が次第になくなっていた。
そんな中で、彼女は宣言通りに帰ってきた。
帰ってきてくれた。
嬉しさを不機嫌の仮面の下に隠し、俺自らの机の横に立てかけていた金光を、彼女に投げる。
「うわっと」
慌ててキャッチすると、ぎゅっと握り締め、俺を見て微笑んだ。
「ただいまです、ハルさん!」
「おかえり、ケイ」
この話で完結です。
何を伝えたかったのか分からない小説になってしまいました。
あらすじは一ヶ月の間に感じたことにしておいてください←
プロットを書き殴ったあげくに、ボツにしまくった後の惨劇なのです。
最後の部分が書きたかっただけだとは口が裂けても言えないです、ええ。
では、また別の小説にてお会いいたしましょう。
霧花