Ⅰ 夢と現実の境界線はいつだってすぐそこに
こんにちは、初めて書いた作品です。色々と不安なところがありますが、楽しんで頂けると幸いです。更新がとっても不定期ですが色々とコメントなどもらえると嬉しいです
Ⅰ 夢と現実の境界線はいつだってすぐそこに
街の喧騒が耳に痛い。普段から人の多い街だか、一人で歩いているとこの喧騒に押されてなおさら自分が一人なのだと意識させられる。休日の街並みはやはり平日とは比べ物にならないくらいに賑やかだ。
別に何か目的があって歩いているわけじゃない。いわば俺の趣味のようなものだ。
何もすることない日には一人で街中を歩いて回るのが俺の趣味なのだ。歩く場所はどこだっていいのだ。人ごみの中でもいいし、人通りの少ない裏路地を歩くのもいい。
要するに、独りであることが実感出来たらいいのだ。こんなことを言っていると俺に友達が少なそうな感じがするので、もう少し違う言い方をするなら、自分が人の営みと離れたところに居るのを実感すると安心するのだ。
なので、そんな俺はせっかくの休日に独りで街中を歩いているのだ。
しかし、今日の朝方に家を出てもう昼過ぎだし、散歩中に聴いていた曲もプレイリストを三周半もしてマンネリ化だ。
……つまり何が言いたいのかといえば、そろそろこの散歩に飽きてきたのだ。あてもな歩きまわるだけの散歩はやはり飽きが来るのも早い。
幸いなことに昼ご飯はさっき食べてきたし、ここからだと家も近いのでそろそろここら辺で帰ろうかと思い人混みの中へと足を踏み出す。
――――――と、そこで人にぶつかった。トンっと軽い感触を肩に感じた。すぐさまイヤホンを外しながら、ぶつかってしまった相手の方向へ体を向ける。
「あっ、すいません。俺の不注意でした。……って、あれ?」
しかし、俺が体を向けた先には誰もいなかった。確かに人とぶつかった気がしたのだが
「……気のせい、なのか?」
実際に周りを見渡しても、誰もいないのだからそうなのだろう。
急に立ち止った俺を不審げに見ながら周囲の人たちはそれぞれの方向へ歩いていく。
気を取り直して、イヤホンをつけ歩き始める。今日は帰ってからクリームシチューでも作ろうかと思案する。……それもいいかもしれない、うちは両親もおらず独り暮らしなので、年末あたりこの時期の食事は一人がつらい。温かいシチューでも食べて心の温もり分を補給するのもいいだろう。
そうと決まれば、早速材料を買わねばなるまい。一旦は家に向けた足を近場のスーパーがある方向にむけなおす。
今度こそは人にもぶつからずに歩きだした。
―――クスッと、頭の中で今日の晩御飯の献立を考えながら歩く俺の傍を誰かが笑いながら髪を翻して通った気がした。
夢か現か、現か夢か。
境界線なんてきっとない。
どちらかが本物でどちらかが偽物なんてことも無い。
どちらかが嘘でどちらかが本当なんてことも無い。
ただ、どちらを信じるかの違いだけ。
どんな夢でも見る張本人が信じたなら夢は本当であり、現実こそが嘘になる。
人間なんて曖昧で二つの世界をふらふら漂う。
でも、夢を見てればいつかは覚める。
覚めない夢はないのだ。
覚めた後に、―――嗚呼、あれは夢だったのかと気がつく。
そのままいつもの日常に返っていく。
そしていつかふと、本当に唐突にこう思うのだ。
―――今見ていることこそが夢なのでは、と。
結局その問いに答えは出ない。
人は一生その問いを考え結局死んでもその答えは出ないまま。
その短い人生を全うする最後の間際に思うのだろう。
―――結局、自分が見ていたモノはなんだったのかと。
答えは無いし正解も無い。
――――――夢か現か、現か夢か?