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きみのとなり  作者: Ruco
9/50

9,小鳥遊との放課後

昨日はよく眠れなかった。昨日からずっと、小鳥遊に言われたことが頭に残っていた。


『お前の顔見るとイライラする』


今日学校でどんな顔して小鳥遊に会おう。できるなら会いたくないけど、同じクラスの上に隣の席。


そんなことを考えながら学校に着いてしまった。教室に入ると小鳥遊がいつも通り席に座っていて、後ろの席の高橋くんと化学の勉強をしていた。


「雅ちゃんおはよう、昨日はごめんね」


麻衣ちゃんが教科書から顔を覗かせる。その声に小鳥遊がチラッと振り向いたが、すぐに高橋くんの方に向きなおした。

……目も合わせてくれない。

やっぱり私嫌われたんだ…。


「おはよう、麻衣ちゃん」


「…雅ちゃん大丈夫?元気なさそうだよ?」


麻衣ちゃんが不安げに見つめるから、心配かけたくなくて首を横に振った。


「大丈夫だよ、今日のテスト数1あるからちょっと不安なだけ…」




それからテストが始まり、放課後になっても小鳥遊とは一言も話さなかった。

今日は数1と化学基礎の2科目だけだったが、どちらも出来が悪い。

明日は古典と英語と生物基礎だからまだ大丈夫かな…。


ため息をつきながらロッカーで帰り支度をしていると小鳥遊が来た。

ロッカーは縦に2つずつ並んでいて、これも席順になっている。小鳥遊のロッカーは私のロッカーの上にある。私も小鳥遊も無言で黙々と荷物を整理していたが、私の頭に教科書らしきものが落ちてきた。


バサバサッ


「わっ!いったあ…」


「悪りぃ、大丈夫か!?」


私が頭を押さえていると、小鳥遊に両手首をつかまれて顔を覗きこまれた。


「どこに当たった!?」


あまりにも小鳥遊が真剣な顔をしてたから、不覚にもドキッとしてしまった。


「……やめてよ、私の顔見るとイライラするくせにッ…」


ドキドキしたのを隠したくて、咄嗟に小鳥遊を睨んだ。


すると、私の手をつかむ力が弱まって小鳥遊が下を向いた。気がつくと私の左肩に小鳥遊のおでこがくっ付いていて、身動きがとれなくなった。


「ごめん…昨日のは八つ当たり……ちょっとイライラしてた」


「………」


「お前の顔見てイライラしたことなんてねーよ」


小鳥遊が肩から離れて、表情が見えた。

さっきの真剣な顔とは全然違って、すごく落ち込んでいたから思わず笑ってしまった。


「ふ…あはははっ…そんなに落ち込まないでよ、もう気にしてないんだから」


小鳥遊は顔を上げたが、まだ落ち込んでいる。


「“もう”ってことは、少しは気にしてたんだ」


「…うん……」


「…昨日寝れなかった?」


「え、何で分かるの?」


「クマできてる」


全然気づかなかった…。

朝ちゃんと鏡で見たはずなのに。


「ごめん、うそ(笑)」


何コイツ、反省してないじゃん。ちょっとムカついたから小鳥遊を睨んで立とうとしたが、手をつかまれていて立てない。


「ごめんって、ていうか教科書当たったとこ大丈夫?」


「けっこう痛かったよ、1冊じゃなかったし、角当たったし」


まだ少しだけ痛い。当たったところを手でおさえると小鳥遊が膝をついて私の頭を抱えるようにして見た。


え…ちょっと…


目の前には小鳥遊の胸。

小鳥遊の手は私の頭を押さえていて、周りから見れば抱きしめられてるようにしか見えない。


「あ、赤くなってんじゃん」


「…良いよ別に」


頭のことはもう良いから早く解放してよ。


「本当ごめん…これ以上藤崎が数学できなくなったらオレのせいじゃん(笑)」


「……あんたって本当に一言多いよね」


やっと小鳥遊が手を離してくれて、教科書をロッカーに戻しながら言った。


「なあ、まだ針生のこと好きなの?」


…どうして……いきなり。

荷物をまとめていた手を止めて小鳥遊の方を向いた。


「…もう好きじゃないよ」


もう司のことは忘れるって決めたから。司はただの中学校の同級生。


「ふーん…」


小鳥遊はそれだけ言うと、スタスタと帰って行った。



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