8,北島くんとの放課後
北島くんはすごく分かりやすく数学を教えてくれた。
ただ教えてもらうのは申し訳なかったから、鞄に入っていたお菓子の袋を取り出した。
「北島くん甘いもの大丈夫?これ新発売のだからまだ食べたこと無いんだけど一緒に食べよ?」
「甘いの好きだよー、オレもこれ気になってたんだ」
良かった、すごく嬉しそうにしてる。
袋を開けるとチョコレートの甘い匂いが広がった。1つ取って食べるとものすごく美味しい。
「すごい美味しい!はい、どーぞ」
北島くんに袋を渡し、再び数学をやろうとしたが、とてつもない睡魔に襲われた。
「ヤバい…眠くなってきちゃった…」
「…大丈夫?(笑)」
「ごめん、少し仮眠とる…お菓子食べて良いからね、先に帰っちゃっても良い…し……」
私はここで力尽きて寝てしまった。
それからどれくらい経ったのかな…
誰かに起こされてハッと目が覚めた。
「…い、おい藤崎」
「え…あれ……小鳥遊?」
目の前には北島くんではなく小鳥遊がいた。そっか…委員会終わったんだ。
それより、北島くんは…?
視線を机の上にやると、小さな紙にメッセージが残されていた。
『ごめん、友達に呼ばれたから先に帰ります。起こそうと思ったけど悪いと思ってそのままにしてた』
あ、先に帰っちゃったんだ…。
起こしてくれて良かったのに。
時計を見ると18時を過ぎていた。
確か寝始めたのが17時頃だったから、1時間寝たことになる。
「そーいえば日比野と一緒じゃなかったのか?」
まだ少しボーッとしてて、小鳥遊に返事をするまで時間がかかる。
「あ…えっとね…麻衣ちゃん、早く家に帰らなきゃいけなくなって1人で勉強しようと思ってたら…北島くんが数学教えてくれて……でも私途中で寝ちゃって…北島くん先に帰っちゃった」
小鳥遊が怪訝そうな表情をしている。
居眠りしたから呆れたのかな…。
「…何で男と2人きりなのに寝れんだよ」
「え…」
「少しは警戒しろよ!」
警戒…って?北島くんが私のこと襲うとでも思ってんの?そんなわけないじゃん。何言ってんの小鳥遊。
「北島くんはそんな人じゃないよ」
つい、むきになってしまった。
小鳥遊はただ心配してくれただけかもしれないのに、北島くんばかり庇うような言い方しちゃった…。
小鳥遊が舌打ちをして、私の腕をつかんだ。
「え、なに…」
「覚えとけ、男は状況次第で変わるんだよ。特にお前は隙が多いんだから」
小鳥遊…どうしたの?
状況次第で変わるとか隙が多いとか。
さっきからずっとムッとしてるし。
「ねぇ…何怒ってんの?」
「…怒ってねーよ」
怒ってないわけない…。こんな顔してる小鳥遊初めて見た。
小鳥遊はつかんでいた私の腕をパッと離して顔を伏せた。
「…怒ってねーけど、イライラすんだよ」
「何…で…?」
どうしたの小鳥遊…。さっきからおかしいよ。
小鳥遊の目はすごく冷たかった。
「…お前の顔見るとイライラする」
「…え……小鳥遊…」
そんな風に思ってたの…?
小鳥遊はそれ以上何も言わずに教室を出て行った。
私は身体中の力が抜け、その場から動くことができなかった。
次回もお楽しみに(^o^)/