5,高総体
こんにちは(^o^)
今回は雅の元カレが登場します!
6月初め
今日は高総体だ。
3年生の先輩方にとっては最後の大会になるかもしれないため、いつもよりピリピリしている。
個人戦ではベスト4に入ることができなかったので今日の団体戦に全てをかけている。
私たちの学校は去年ベスト8入りを果たしたらしいが、団体で地方大会へ進むには3位以上にならなければいけない。
団体戦は部長がクジを引いてトーナメントがつくられるが、シードを持っている4つの私立・強豪公立高校が毎年ベスト4に入っている。
正直なところ、今年の部長はクジ運が悪い。
2回戦目で第2シードとあたるなんて…。
いや、もしかしたら相手が棄権するってこともあり得る。諦めちゃダメ。
「雅、試合始まるまでまだ少し時間あるから男子の応援行こ」
日南子に誘われて男バドの応援に回った。
「男子って1回戦どことあたるのー?」
「海真高校」
うわ、男バドの部長もクジ運悪いなあ…。海真って言ったら毎年ベスト8入ってるし、去年は初のベスト4入りしたし、それに…
司がいる。
そーいえば言ってたな、司。海真でバドをしたいって。
今日、来てるのかな。来てないわけ無いよね…(笑)
応援席からコートを見下ろすと、もう試合が始まっていた。
司…どこで応援してるんだろう。
キョロキョロと周りを見渡すが、司らしき人は見当たらない。
トントン、と肩をつつかれて振り向くと小鳥遊だった。
「おい藤崎、あれ…」
小鳥遊は相手のベンチを指差した。
指先をたどっていくと、そこには司の姿が見えた。
「う…そ、司…1年で団体メンバー入り!?」
「オレもびっくりした。海真にいると思わなかったし、しかもメンバー入りしてるとか…」
「雅ちゃん……」
麻衣ちゃんも気づいて口をパクパクさせている。
どうしよう…私すごい動揺してる。
もう司が、私の知ってる司ではないような気がした。
試合が終わり、結局男子は0ー3のストレート負けで1回戦敗退、女子も1回戦は3ー1で勝ったものの、2回戦で第2シードにストレート負け。
落ち込む先輩方に何て声をかければいいのかも分からず、応援席からまだ続いている試合を眺めた。
…海真が3回戦に進んでる。
この試合に勝てばベスト8だ。第3シードの私立高校に2ー1で勝っていたが、第2シングルの試合が終わった時点で2ー2になってしまった。
最後の第3シングルに誰が出るのかを慎重に決めている様子だが、コートに立ったのは司だった。
「えっ…司が第3シングル!?」
私が驚いたの聞いて小鳥遊と麻衣ちゃんも試合を見始めた。
「すげ…第3シングルかよ」
私たちの近くの応援席にいる海真の女子生徒たちが騒ぎ出した。
やっぱり高校生になっても人気あるんだなあ…。
試合が始まる直前、司と目が合った。気のせいだと思ったが、司が笑って口を動かした。きっと声は出してなかったと思うけど、口の動きは「大丈夫」と言っていた。中学生のとき、よく司が試合前に私に言っていた言葉。
「…今、雅ちゃんの方向いて何か言ったよね?」
「うん。『大丈夫』って言ってた…」
司の言葉通り、競り合うこともなく試合が終わり、3ー2で海真が準々決勝へと進んだ。
すごいなあ、司…。どんどん上手くなってる。私は自分の席に戻った。
「雅」
「え…?」
試合を終えて戻ってきた司が私の所へ来た。
別れてからほとんど接触が無かったからすごく緊張する。
「あ…お疲れさま、すごいね…1年生で試合出ちゃうなんて」
いつも通りに話してるつもりだけど大丈夫かな…。
「まあ、海真でバドやりたくて入った訳だし……髪、切っちゃったんだ」
司が私の髪を見て言った。
…髪のことは聞かないで欲しいな…まさか司への未練無くすために切ったなんて言えないし…。
「うん…気分転換…かな…?」
「ふーん…オレは長い方が好きだったけどなあ」
そんなこと聞きたくない。
やっぱり、好きだったのは長い髪だけ…
「……好きだったのは…私の髪だけ?私のことは好きじゃなかったの?」
どうしても聞いておきたかった。
本当のことを聞くのは怖いけど、知りたいんだ。
司の顔が一瞬強ばる。
私は涙目になって司を見つめた。
ゆっくりと司の口が動く。
「雅…オレはまだ雅のこと好きだよ」
次回もお楽しみに!