3,元カレ
「もう大丈夫だと思う…」
小鳥遊が私からそっと離れるが、私の心臓はまだドキドキしたままだ。
「…小鳥遊、よく司のこと分かったね…けっこう高校生いたのに…」
「ああ、大会とか練習試合で見たことあるから。針生司だろ?まさかアイツが藤崎の元カレだとは思ってなかった」
司はいつも県大会でベスト8以上に入ってたからどちらかと言えば有名な方かもしれない…だから小鳥遊も知ってたんだ…
「じゃあ、気を付けて帰れよ」
「うん…ありがとう」
駅で小鳥遊と別れて帰った。
家に着いても、小鳥遊に抱き寄せられた感覚がずっと残っていた。
そして次の日の朝
「おはよう雅ちゃん、昨日どうだった?」
「おはよう麻衣ちゃん、どうだったって何が?数Aは少し理解できたよ」
麻衣ちゃんはニターっと笑って私と小鳥遊の顔を交互に見た。
「やだなあ、昨日小鳥遊と何かあったの?ってことだよ」
「「えっ」」
私と小鳥遊は昨日のことを思い出して一気に顔が赤くなった。
「やっぱり何かあったんでしょ!2人とも全然顔合わせてないから絶対何かあったと思ったんだよー」
鋭いなあ、麻衣ちゃん…。
でも昨日のことは絶対言えないって。
「な、何もなかったから!!ねぇ、小鳥遊」
小鳥遊もきっと黙ってるはず。
同意を求めるものの、小鳥遊は笑顔で言った。
「ああ、何もなかったぜ。帰り以外はな」
「ちょっ…!」
信じられない、「帰り以外」をすごく強調して言いやがった。
面白がってるのかな、こいつは。
「何々!?帰りに何があったの?」
麻衣ちゃん、お願いだから興味を持たないで…。
小鳥遊を睨んで足を蹴った。
「痛っ!…こ、こいつの…藤崎の元カレを見ただけだから!」
え、ここで元カレの話になるの!?
「元カレ見たの!?いーなー」
「日比野もよく知ってる人だよ」
「え、誰!?すごい気になる!」
麻衣ちゃんが目をキラキラさせて私の顔を見てきた。
これ言わなきゃダメかなあ…。
でも小鳥遊が知ってるのに麻衣ちゃんに言わないのは変かな。
「…針生司」
とうとう言ってしまった。
麻衣ちゃんは案の定目をぱちくりさせている。
「針生司って…ダブルスでベスト8だった人だよね!?超カッコいいじゃん!」
確かに司はカッコいい、それにバドも上手くて頭も良い。中学校では1番モテてたかも…。
だからこそ司が元カレだって言いたくない。みんな絶対「何で告られたの?」とか「どうして別れちゃったの?」って聞いてくるから。
でも麻衣ちゃんはそれ以上聞かないでいてくれた。
ありがとう麻衣ちゃん。
いつか絶対麻衣ちゃんに話すから、それまで待ってて―――
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