2,数学と放課後
第2話です!
だいぶ学校に慣れてきた4月下旬
さっそく数学でつまずいた。
「小鳥遊!この問題ってPとCどっち使うの!?」
「オレに聞くな!この前の小テスト何点だったか分かってんのか!?」
「20点満点中4点だったやつ?(笑)」
「あ、お前覗き見したな!藤崎だって5点だったろ!」
「ちょっと、大声で言わないでよ!」
ほぼ毎日こんなのが続く。クラスの人はクスクスと笑って私たちを眺める。
「…雅ちゃん、その問題はPもCも使わないよ(笑)」
麻衣ちゃんの鶴の一声で私たちは静まったかと思われたが、今度は麻衣ちゃんに質問攻め。
「何で!何でPもCも使わないの!?」
「その問題は階乗を使うんだよ…」
「はあ!?階乗って何だよ日比野」
5!×3!の計算に至るまでこんなに時間がかかる。
しかもこれは授業中…
「そんなに分からないなら藤崎と小鳥遊にはプリントをやってもらおう」
先生がそう言って私たちの机にプリントを置いた。
「明日の朝に出すように」
ああ、地獄だ。
小鳥遊とため息をついた。
「藤崎…部活の後に2人でやるか」
え、小鳥遊と2人で?
麻衣ちゃんに教えてもらおうよ。
「別に良いけど、麻衣ちゃんは?」
「ごめんね、私今日塾なんだ」
……今日中に終わるかな、これ。
部活が終わり、みんなが帰って行くなか私たち2人は校門の前に取り残される。
「じゃあ2人で仲良く頑張ってね♪」
ああ、同級生の言葉が突き刺さる。
「…で、学校はもう下校時間だから無理だよ。どこ行くの?」
ただいまの時刻は19時。
これじゃあ図書館も閉まっちゃってる。
「ん〜、候補は決まってる」
そう言われて連れて来られた場所は駅前のカフェ。初めて来る所だ。
「高そ」
「大丈夫、姉貴が働いてるから」
えっ、ちょっと、なにそれ。
私が躊躇するのを無視して小鳥遊は店の中へ入っていく。
「いらっしゃいませー…って樹じゃん、隣の子は彼女!?」
うわぁ、これまた背の高いキレイなお姉さん…。
「ちょっと席借りるね。それと、彼女じゃないから」
「あ、藤崎雅です」
「よろしくね雅ちゃん、小鳥遊瑞樹ですー」
瑞樹さんが案内してくれた席に座り、プリントと教科書を出す。
「小鳥遊って英語はできてるよね」
「藤崎も古典はできてんじゃん」
そんなことをブツブツと呟きながら早速問題に取りかかる。
「「問3ってC?」」
あ、ハモった。でもCで良いんだよね?
「オレだんだん分かってきたかも」
「遅いよ小鳥遊」
小鳥遊と2時間かけて数Aを理解することができた。
「もう21時過ぎてる…帰らなきゃ、お腹も空いたし」
「じゃあ送ってくから」
え、駅すぐそこなのに!?
5分もかからない距離なのに。必死に断ったが小鳥遊は駅まで送ってくれた。
「ここまでしか送れなくてごめん、気を付けて帰れよ」
「うん…あり…」
「ありがとう」と言おうとしたが、途中で声が止まった。
「つか…さ?」
私の元カレが駅にいた。
やだ…今は会いたくない……気付かれませんように…。
「…どーした?何だよつかさって…」
「…私の元カレ……えッ!?」
いきなり小鳥遊の胸に抱き寄せられた。
「たかな…」
「いーから黙ってろ、もう少しで見えなくなるから」
そう言って小鳥遊は私の頭を自分の胸に寄せた。
そっか…私のこと隠してくれてるんだ。逆に目立つような気もするけど…。
私も小鳥遊も、心臓が鳴りっぱなしだった。