Depressed -灰色の戦記- 第一章:悪魔と約束と
19世紀、イギリス。
'力'が人々を突き動かした激動の時代。
力を求めて戦う者。
防弾、剣の音に怯える者。
ただ、ひたすらに逃げて行く者。
そして、死んでいく者。
死体と血の色、爆風の音。防弾の光。
悲鳴と涙だけが渦巻いていた。
-革命時代-
イギリス国家は他国を制圧し、支配するため
機会工業発達に力を入れ、
人々を武器として使い捨てた。
国家の一人、バールを筆頭に進んでいく
この計画はイギリスを世界最強という
異名にまで導いたが人々は震え上がった。
「民衆機械化計画」
人間を機会に改造し、人造人間として
数多の軍隊を作り上げていた。
それから10年、とある子児院。
地下最深部に監禁された少年。
彼には名がなかった。
生まれた時には親が国家の餌食となり、
人造人間となった。
天涯孤独の彼は国家の警戒により
監禁されていた。
係員の中にも少年を恐れる者も少なくなかった。
「院長、あのガキですけど」
係員が声を震わせて言った。
「ハハッ、怖いのか?」
「いやマジ冗談じゃないですよ。」
院長は彼を面白がっていた。
「10年も担当してるくせして」
「だって、赤ん坊の時は親指みたいに可愛いかったのが、今じゃ無言で昼食の果物ナイフをボケ~っと見てるんっすよ。」
すると院長の顔付きが変わった。
二人はどんどん地下の階段を下りていく。
「もしかしたら、気づいてるかもな」
係員から冷や汗が流れた。
「どういうことですか?まさか機械化計画のこと」
「あぁ、いずれ自分達が国家の武器になることも、親が機械にされたことも」
係員の息は徐々に荒くなる。
冷や汗と共に天井の水滴が一粒落ちた。
「…それ、ちょっとまずくないすか?」
二人はドアの前で立ち止まる。
院長はため息をついた。
「本当にそうなら、厄介な事になる前に抹殺するしかないな。」
院長はドアを開けた。
二人の顔は少し凍り付いた。
生きているのか死んでいるのかわからない。
まるで生死の狭間をさまよっているかの
ような目をしたしような椅子に座った
少年が果物ナイフを右手に握りしめ
なにかブツブツと呟いている。
妙な雰囲気が部屋中に漂う。
「い、院長、後からでいいんじゃないですか?」
係員の言葉に耳もくれず院長は消費の方へ
歩みよる。
「ボク、昼ご飯だ。食べなさい。」
少年はただただ呟く。
「ここに置いておくからね。」
(カチャン)
院長が床に置くと少年の目は院長に向いた。
院長は少し後ずさる。
「ハ、ハハハッ、何を喋ってたのかな?」
少年は目線をナイフに戻し、口を割った。
「今ね、悪魔と喋ってたんだ。」
院長は息を飲んだ。
少年はそれに気付いたのか、院長を見た。
「何を喋ってたか教えてあげよう、か?」
「……何を喋ってたの?」
「約束したんだ~」
「約束?」
「うん、院長さんとね、ここにいる人達を殺すって………。」
院長の顔と心があべこべになった。
さっきまでナイフを見ていた少年の
目は院長の目を見つめていた。
その顔は少し笑っているようにも見えた。
「と、とにかく早く食べるんだよ。」
院長は足早に去った。
二人はドアを閉めると、
暗い廊下を歩きだした。
「院長、大丈夫ですか?」
「あぁ、あれは早めに手を打たないとな、あの方に言おう。」
「あの方?」
院長は余裕の表情を浮かべた。
だがその表情は恐怖しているようにも見えた。