7話 ベンチ
書き方をちょっと変えてみたので、読みづらかったらごめんなさい。
「うぅ……きもちわるいぃ……」
こんな感じから始まるのってどうかと思うけど……。
とにかく、今は気持ちが悪い。
楽しい曲が流れている最中で私はベンチに背を預けてぐったりしている。
どうしてこうなったって?
それは私が絶叫系を嫌いだと思い出して欲しい。
一番最初に向かった場所こそ私がぐったりした原因。
言うも恐ろしい絶叫アトラクション。いわゆるジェットコースターである。
ここの遊園地の売りは、他の遊園地よりも乗車時間が長い事。
他には落ちる所が5箇所あり、きゃーと言う可愛らしいものではなく、ぎゃーと言う濁音混じりの叫び声が聞こえるという有名なジェットコースタなのだ。
私としては、もっとも近寄りたくない場所なのに、それを五回も乗らされれば、誰だって気分が気持ち悪くなっても仕方が無い。
なんたって胃とかいろいろな物がかき回されたような感じだ。
まったくもって耐えられたものじゃない。
「大丈夫か?」
声をした方に顔を向けると、紙コップを持った伊達くんがいた。
「まだ、ちょっと気分悪いや。あはは」
「そう」
相槌を打った伊達くんは私のとなりに座り、紙コップを私に差した出した。
なんだろうと思い、髪コップを見つみれば伊達くんが、
「ウーロン茶。水分取ったほうがいいと思って」
それから微動だにしないものだから私は仕方なく受け取る。
「あっありがとう。あっお金」
「いいよ。別に」
ぶっきら棒に言われてしまった。
そう言われてはなんだか渡しづらい。
「でも……こないだのジュース代もあるし、ちょっと待ってて!!」
鞄から財布を取り出そうとしたが手首を捕まれた。
「別にいいから……」
「でっでも」
「いいから、こないだのも返すなよ」
「でも悪いし……」と言い返そうかと思ったが、声が出せなかった。
なんか有無を言わせないように、見つめられたからだ。
仕方なく貰ったウーロン茶を飲む。
冷たくて美味しい。
「ありがとう」
「いや、俺が勝手にやったことなんだから気にすんな」
「……うん。でもありがとう」
ここは素直に気持ちを伝えておこうと、微笑んでお礼を述べた。
伊達くんも釣られたのか、表情が柔らかくなった気がした。
だいぶ気分も落ち着いた頃に、不意に違和感を覚える。元凶のアイツと美穂ちゃんがいない。
辺りを見回しても、家族連れやカップルなどが行き合っているだけで見当たらない。
もとはと言えばアイツ……、田辺が絶叫系に有無を言わせず乗らせられ、連れまわされたせいなのに。
事情を知ってそうな伊達くんに聞くのがいいだろう。
「あの……伊達くん。美穂ちゃん達は?」
「あぁ。皆、山野を心配してここに居たんだけど、俺見てるから行ってきなって言ったからたぶん、大和の事だから絶叫系でも乗ってるんじゃないか」
「へぇ、そう」
とりあえず頷いておく。
あんだけ乗っといてまだ乗る精神がすごいわっと関心した。
これで居ない理由も納得はしたが、でもなぜ伊達くんが私の世話役に買って出たんだろう。
疑問が浮かび怪訝したが、その視線に気が付いたのか伊達くんは笑って、
「絶叫系は普通だけどあんまり連続で乗るのは俺もキツイって伝えたから」
「でも伊達くん。わりと涼しい顔してなかった?」
「そんなことないよ。連続はきたな」
「そうかな?」
「そうだよ」
そのわりに私を介抱してくれる体力はあったってことよね。
うーん。羨ましいような気がする。
「あと大和から連れまわしてごめんだって、まぁ今本人居ないけど。渋々俺が行かせたからカンベンな」
「そうなの?あぁ、時間とかあるもんね。」
「あぁ……それもあるけど……」
急にそっぽ向く伊達くん。
何かあったんだろうか。
(もしかして、私と居たかっただけだったりして……ってそんなことあるわけないじゃん)
変な考えが頭に過ぎったが片手で追い払う。
伊達くんが感心した声で、
「あぁ見えて五嶋さんが絶叫系大丈夫なのは関心したけどなぁ」
「そうね。あれで強いのってびっくりするわよね」
うんうんと頷きあう二人だった。
ウーロン茶も飲み終わったし、気分もすっかり晴れた。
たぶん激しい乗り物意外なら大丈夫だろう。
「そろそろ行くか」
「うん。でもあの二人は?」
「しばらく絶叫乗るって言ってたからなぁ。乗り飽きたら山野にメールするって言ってたぞ」
「あれ?伊達くんのは?」
「二人とも知らん。特に大和は教えたくない」
「はぁそう」
伊達くんは変わらない表情で言われたが声のトーンが1つくらい下がっていたので、過去に何かあったのだろう。
なにかは触れないでおくとして……。
「行ってみたいところがあるんだけどいいか?」
「どこ?」
「ミラーハウス。でかくて面白いらしいから気になってて」
「ミラーハウスか……」
ちょっと考え込んだが乗り物ではないし、建物だからきっと平気だろう。
「いいよ。行こうか」
「あぁ」
嬉しかったのか、伊達くんの口元が綻んでいる。
まぁこんなのもいいかなって私も笑った。