6話 集合
やはり遊園地の最寄りだけあって人通りが激しい。
はぐれないように伊達君の後ろを追いかける。
駅を出ると、広い場所に出て、噴水が目に入る。そこの右手側から人の並みは綺麗に一ヶ所を目指している。
「こっちだな」
「うん」
私は頷き足を進め、ちょっとした登り坂、歩道は綺麗でさくさく登る。
上りきろうとしたあたりで看板に目が止まる。
遊園地の看板で、でかでかと書かれた文字と可愛らしいキャラクター"うーにゃん"と"みーにゃん"がいる。
このキャラクターのモチーフは語尾からわかるようにネコだ。
うーにゃんは黒ネコ、みーにゃんが白ネコと子供に大人気のマスコットキャラ。
ネコ好きの私にも堪らない。
漫画のふきだしのようにセリフが書かれて『どきどきにゃわくわくにゃ♪君を夢の世界に連れててあげるにゃ!入り口はもうすぐにゃ♪』うーにゃん、みーにゃんが言っている。
こっちが入り口大きく矢印とともに地図も載っていた。
歩けばすぐ着くようで皆が向かっている道だ。
なにを隠そう、今日の唯一の楽しみはうーにゃんとみーにゃんに会うこと。
アトラクションも楽しみだが、何よりも出会いたいキャラクター。
マウスランドのミッキリンも好きだが、可愛さはこっちだって負けていない。
群がる人を押しのけてでも写真を撮りたいくらいだから。
もちろんカメラは必須アイテムで、いつでも取り出せるように入れた位置を把握している。
「山野?」
「あっごめん」
自分の足が止まっていたことに気づき、伊達くんのところに駆け寄る。
看板だけでもちょっとだけテーションが上がった。
看板を横切り、入り口を急ぐ。
目的の遊園地『にゃんランド』に着いた。
入り口の門には、『wonderful word』と書かれていて、続々と人が入っていく。
その門の端に入園チケットの販売している。
たぶん入園してからは会うのは難しいから、入り口手前くらいに美穂ちゃんがいるだろう。
たぶんだけど……あの田辺が変なことさえしなければの話だが。
すでに昼近くとあって、チケット売り場はそんなに混んでいない。広いスペースで販売しているから効率がいいのだろう。とりあえず、チケットだけは買っておこうと並ぶ。
その間に連絡をぽちちっと打つ。がスルスル前が進みあっという間にチケットが買えた。
ちょうどよくちゃらららーっと携帯のメールが受信する。
「きたか?」
「うん、それっぽい。えっと……。やっぱり入園はしてるけど、入場口で待ってるって」
「じゃ急ぐか」
「うん」
頷いて、入り口に向かう。
門を潜ると、可愛らしい音楽が耳に入る。近くでパレードをやっているのだろうか。
目に入るのは綺麗に整備された花壇と植木。
そしてもう少しさきにはメリーゴーランドが楽しそうに回っている。
きゃーきゃーと騒ぐ子供たちの声も聞こえと、楽しい音楽。
遊園地はやっぱり楽しくいかなきゃっと改めて思った。
「あー!里美ちゃんこっち!」
「あっ美穂ちゃん!!」
呼ばれた方に振り向けば、なんとも可愛らしい格好の美穂ちゃん。
髪は団子に結ばれており、後ろからみたらうなじが綺麗そう。
あと軽く化粧をしているみたいでなんともときめくし、淡い緑色でレースを抑えたトップスにデニムのパンツだ。
……パンツ?って!ダッシュで駆け寄り美穂ちゃんの二度腕を掴んで、
「なんでパンツなの!?スカートじゃないの!?」
「えー。私はパンツがよかったからかな」
てへって笑う。美穂ちゃんは可愛いがそんな悠長に構っていられない。
だって私は言うとおりにしてきたんだから、美穂ちゃんもって思っていたのに。
「気分ですか!!気分でパンツですか!!!」
「うん。そうだよ。里美ちゃん可愛い合格!」
「マジかマジなのか!!だったら私もパンツがよかったよ!!今から着替えてk」
ぽんっと頭を叩かれた。何かと思って振り向くと、伊達くん。
「ちょっとは、落ち着け」
「あ……。ごめん」
パニックっていた感情がちょっと治まる。
そしてくすくすっと笑う声が聞こえ、見ると美穂ちゃんが笑っている。
「そのままでいいじゃない可愛いよ里美ちゃん」
「でも……」
「似合うからこのままでいてよ。ね?」
「……わかった」
むすっと言ったが、やっぱり美穂ちゃんの笑顔には弱いから、頷いてしまう。
ちらっと伊達くんを見たら、なにやら固まっているようだ。
目線の先を追うと、どうやら彼が田辺君だろう。
髪を明るめに染めてそうなイメージでだったチャラ男さん。でもこうして姿を捉えるとイメージが違う。
暗めの茶髪で、気にして見なければ、黒に見える。意外にも短髪だ。しいて言うなら伊達くんよりは長いけど。
細めのフレームのメガネを付けていて、あんな自己中じゃなければ、けっこうイケメンな分類に入るかもしれない。
でもなぜか伊達くんは見つめ続けている。
そんな非常識な彼を、伊達くんはなぜここまで、気にするのか私は正直わからなかった。
ポーカーフェイスだから正直読めないけどね。
美穂ちゃんはそんな伊達くんに気づいたのか、はたまた気づいてないのか……。
固まっているにも関わらず声をかけた。
「初めまして伊達くん」
「あー……どうも。えっと五嶋さんだっけ」
「うん。本名は五嶋美穂。今日はありがとう来てくれて」
「いや、お礼言われるほどじゃないと思うが」
「いいの、いいの。嬉しいから、でっこっちが……」
美穂ちゃんが言い終わる前に、事の自体が起きた。
で隣いた田辺くんが伊達くんに抱きついてる。
突然の行為で、目を見張る。
「会いたかったぜ!真人」
「ちょっ離せ!!大和!!」
必死にもがいてるあたり、きついのだろうか。
遊園地まで来て、なぜこれを見せられなきゃいけないだろう……。
でもなんとなく、さっき伊達くんが固まっていたわけがわかった気がする。
こいつと知り合いだったわけか。
「田辺さん。伊達くん苦しそうですよ」
助け舟ってわけではないけど、ここままだと話が進まなそうだから、あえてつっこんでおこう。
「えっ本当さとみちゃん」
「さとみちゃん!?」
引きつりそうになりました。
まさか、まさかの田辺くんからそんな言葉を言われるなんてショック。
どんだけフレンドリーなんだ。あんたはっとイライラがまた募る。
「えっまぁそうです。だから伊達くんを放して下さい」
「うーん。わかった」
そう言う田辺くんはとすぐに伊達くんを開放した。
ぐったりした様子の伊達くん。まだ遊園地に着いたばかりなのに、この惨状。
やっぱり関わりたくない人物だと改めて認識して、
でも一様はメンバーだから、何者かだけは聞いておこう。
「で、田辺くんは伊達くんと知り合いなんですか?」
「えっ知り合いもなにも親友だけど」
「違うだろ!ただの腐れ縁だ。高校の時からの!!」
「それを人は友とよ「呼ばねぇよ!!」ぶ」
ものすごい切れ味で、つっこむ伊達くん。
そしてなぜどや顔してる田辺くん。
「えー親友だろ!こんなに好いてるのに」
「きもい、近づくな、帰れ」
「もうイ・ケ・ズ(ハート)」
どす黒いオーラで、叩ききってる。ここまで感情を引き出せることが出来るなんてすごいけど。
そんなことめげない田辺くんは可愛らしくぶりっ子ポーズまで決めている。
恐ろしいわこの子!!
こんな戯言している間に刻々と時間が過ぎていく。
「……そろそろ黙れ。大和くん」
「えっ」
今まで黙っていた美穂ちゃんが、今まで聞いたこと無い低い声で、田辺くんを暴走を止めた。
言うか、この場をいた誰もが耳を疑ったが、変わりない笑顔と可愛らしい声で、
「もう遊園地に来たんだから、乗り物乗らないと勿体無いじゃない」
「そっそうだね」
「たしかに」
「うん」
「じゃ自己紹介も済んだし、さっさと行きましょう」
軽やかに歩く彼女のステップ。
みんなさっきの声は……と躊躇するしかなかった。
遊園地については妄想です。
行き方についてもも、割合でたらめです。小田急の厚木から新宿まではあってますが……。
小説だから良いよね(おい!